カレイなる日々

隠井迅

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一巡目(二〇二二)

第92匙 メーヤウ、激辛カレーの血脈:カレー屋ばんび(E16)

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 この週の書き手は、木曜の夜まで神保町で仕事をする予定になっていたので、結果として、昼も夜も、神保町エリアの未訪店のカレー提供店を訪れる事ができる。
 缶詰になっている地が神保町だとは、スタンプラリー参加中の書き手には、なんと、うってつけの状況なのであろう。
 とまれ、夜、身柄が解放されるのが二十一時なので、必然、夜に行くべき店は、神保町界隈で夜に営業している所から選ぶ、という方針になる。
 そういった観点から、この日の夜に書き手が選んだのが、神保町・お茶の水エリアの、例のデルタゾーンに位置している「カレー屋ばんび」であった。
 
 「ばんび」が、このデルタゾーンに来たのは、二〇二〇年の三月で、それ以前には〈神田猿楽町〉に在った。そして、移転の後、「ばんび」は居酒屋という一面も持つようになった。なるほど確かに、書き手が訪れたのは夜の時間帯だったのだが、もちろん、この日の書き手の目的はカレーである。
 基本、書き手は独りでカレー店を巡っているのだが、飲み会の時にこの店を選んで、仲間には酒を飲ませて、自分はカレーを食すのもアリかと思った。

 さて、ガイドブックでは、「ポークカレー」が〈おさ〉れており、そこには、具材の豚肉は「とろとろになるまで煮込んだ角煮」で、じゃがいもは「甘味を感じる」もので、「一度茹でてから揚げることで、じゃがいも本来の旨味」が引き立てられている、という記述があったので、注文のポイントは、豚肉と馬鈴薯であるように、書き手には思えた。
 そうした前情報を持って来店したのだが、最終的に書き手が選んだのは、「豚の三枚肉がトロトロ」の「ポークカレー」に比して、肉の量が三倍の「鬼盛りカレー」であった。
 そしてさらに、書き手は、具の豚肉の量を三倍にした事に伴い、ライスの量は、普通(二〇〇グラム)の二倍の、約四〇〇グラムの「特盛り」にした。ちなみに、ライスの量の増減に値段の変動はないので、お財布を心配せずに済むのはありがたい。

 そして結論から先に述べてしまうと、かくの如くライスの量を増やしたのは、書き手にとっては大正解であった。
 もちろん、辛いカレーや具沢山のカレーにはライスを少な目にする、という考え方もあろうが、書き手の場合、口内の辛みの緩和を、水ではなく米でする事にしているので、辛いカレーには大量のライスが必要なのである。
 つまり、ライスとカレーが別皿で提供された「鬼盛り」、そのカレーを銀の匙で掬って口に運んだ瞬間、書き手の脳天をガツンとした辛さが貫いたのだ。

 キクっ!
 でも、この辛さどこかで……。
 書き手は、妙な懐かしさを覚えたのであった。

 実は、この「ばんび」、二〇二〇年にデルタゾーンに移転する前は、同じ神保町エリアの神田猿楽町にあった。
 「ばんび」が、店名を、小鹿を想起させる可愛らしい「ばんび」に改名したのは二〇一三年らしいのだが、二〇〇〇年代半ばに、猿楽町二丁目で開業した時には、店名は「メーヤウ神保町店」であったそうだ。
 
 メーヤウ!

 メーヤウは、書き手が学生時代に足を運んでいた店で、だから、「辛いカレーと言えばメーヤウ」というイメージが舌に染み込んでいるのだ。

 なんでも、「ばんび」の店主の福富さんは、かつて早稲田にあった「メーヤウ」で働いていたそうだ。
 そのメーヤウは、最初は早稲田大学の本部キャンパス近く、その後、戸山キャンパスの隣に移ったのだが、二〇一七年に閉店し、その後、二〇二〇年の夏に西早稲田で「早稲田メーヤウ早稲田店」として復活した、という経緯があるのだが、この神保町のデルタゾーンにも、メーヤウの辛さの血脈が継承されていた事に、書き手は感動を覚えたのであった。

〈訪問データ〉
 カレー屋ばんび;神保町・お茶の水
 E16
 十一月二十一日・月・二十一時半
 鬼盛りカレー・ライス特盛り:一五〇〇円(QR)

〈参考資料〉
 「カレー屋ばんび」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十七ページ。
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