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二巡目(二〇二三)
第16(140)匙 昭和六十年、信楽焼の食器:マンダラ(A06)
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小学館から刊行されている『美味しんぼ』は〈料理・グルメ〉漫画の代表と言ってよい作品なのだが、九話から成るその二十四巻は、一巻まるまるがカレーを題材とした話になっている。
そして、その二十四巻の表紙には、カレーやナン、そしてスパイスの写真が載っているのだが、表表紙を捲ってみると、また別の写真があって、その下には、使われた料理に関する詳細が次のように記されている。
「■マトンカレー、ベジタブルカレー、ダールカレー等、カレー各種。裏表紙は、インド産の香辛料各種。中央がガラムマサラ。調理/インドレストラン『マンダラ』」
すなわち、カレーを題材にした『美味しんぼ』の二十四巻を飾るカレーに携わっているのは、神保町に在るインド料理店「マンダラ」なのである。
今(二〇二三年)から四十年前の一九八三年に『ビックコミックスピリッツ』において連載が開始された(第一巻の初版発行は一九八五年一月一日付)『美味しんぼ』の第二十四巻の刊行は一九九〇年なので、当然、マンダラの開業もそれ以前となる。
エスビーが提供している『噂の名店』というサイト内の「マンダラ」の特集ページには、この店のオーナーの「外ノ池祐太」氏のインタビューがあって、氏の言によると、マンダラの開業は〈一九八五〉年であるそうだ。
そのマンダラの母体である『西インド会社』の前身は「西遊旅行」という旅行会社で、「インドの秘境ツアー」などを企画していたらしい。そして、ツアーから帰ってきた参加者達の交流の場として作られたインド料理店こそが「マンダラ」の始まりとの事である。
そしてさらに、インド帰りのツアー参加者だけではなく、「当時の日本人がまだ知らないインド」の提供というのも、この店のテーマであったそうだ。
たしかに、マンダラは、日本人のオーナーが経営している日本のインド料理店なのだが、先に述べた「当時の日本人がまだ知らないインド」というコンセプトの下、本場の味や雰囲気を醸し出すために、料理人も、そしてスタッフまでもがインド人で、いつものガイドブックによると、料理人にいたっては、四半世紀以上ものキャリアを誇っているらしい。
そのマンダラの代表メニューが「チキンバターマサラ」で、これは、大量の二種類のトマトが使われているカレーで、味は強烈な酸味、色味は「鮮やかなオレンジ色」と、八〇年代当時においては、かなり珍しい特徴を誇っていたそうだ。
二〇二三年現在、普通に北インド系のカレー店に行ける我々には驚きの事実なのだが、昭和六十年代当時においては、ナンは未だ珍しかったらしい。
だから、未知なる食べ物に対する日本人客の心理的ハードルを下げるために、食器は、ステンレスやアルミではなく、陶器を採用した、との事であった。
この日の書き手は、ライスは、いつもの「ピラオ」を、そして、カレーに関しては、メカジキの「フィッシュカレー」を注文したのだが、その米もカレーも、たしかに陶器で提供された。
思い出してみると。これまで何度か「マンダラ」を訪問した時にも、たしかに料理は常に陶器で出されていた。
調べてみたところ、マンダラの器は〈信楽焼(しがらきやき)〉であるそうだ。
信楽焼は、中世から現在まで生産が続いている、越前、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前という〈日本六古窯〉のひとつで、滋賀県甲賀市信楽を中心に作られており、一般に〈信楽焼〉といえば、狸の置物で有名であろう。
そういえば、「マンダラ」が表紙を飾った『美味しんぼ』の作中人物、「海原雄山」氏は美食家であるだけではなく、陶芸を中心にした大芸術家という設定である。
もし仮に、『美味しんぼ』の中で、どこかのカレー店が、例えば、「マンダラ」をモデルにしたような店が、海原氏から贈られた食器を使っているというエピソードがあったら面白かろう、と書き手はふいに発想してしまった。
だが、しばし待て。
たしか、『美味しんぼ』の中には、海原雄山作の皿に何百万円という値がついていたエピソードがあったはずなので、さすがに、そんな高額の器に盛られたカレーを食べる事になったら、その事実を知った客は過緊張で、きっと味など感じられない事であろう。
〈訪問データ〉
インドレストラン マンダラ:神保町エリア
A06
八月十六日・水・十九時四十五分
フィッシュ(メカジキ)カレー・辛さ3Hot)一二〇〇)ピラオ(五〇〇)カルピスラッシー(五八〇):二二八〇円(クレカ)
『北斗の拳』カード:No.06「サウザー」〈三枚目〉
〈参考資料〉
「インドレストラン マンダラ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、三十三ページ。
『美味しんぼ』(原作・雁屋哲、作画:花咲アキラ)第二十四巻、東京:小学館、一九九〇年五月一日初版発行。
〈WEB〉
「マンダラ」、『西インド会社』、二〇二三年八月二十四日閲覧。
「マンダラ」、『食通が認める噂の名店』、S&B、二〇二三年八月二十四日閲覧。
「カレーの聖地・神保町の名店『インドレストラン マンダラ』。秘伝のガラムマサラを使ったカレーに魅了される」、『さんたつ by 散歩の達人』、二〇二三年八月二十四日閲覧。
『六古窯』、二〇二三年八月二十四日閲覧。
そして、その二十四巻の表紙には、カレーやナン、そしてスパイスの写真が載っているのだが、表表紙を捲ってみると、また別の写真があって、その下には、使われた料理に関する詳細が次のように記されている。
「■マトンカレー、ベジタブルカレー、ダールカレー等、カレー各種。裏表紙は、インド産の香辛料各種。中央がガラムマサラ。調理/インドレストラン『マンダラ』」
すなわち、カレーを題材にした『美味しんぼ』の二十四巻を飾るカレーに携わっているのは、神保町に在るインド料理店「マンダラ」なのである。
今(二〇二三年)から四十年前の一九八三年に『ビックコミックスピリッツ』において連載が開始された(第一巻の初版発行は一九八五年一月一日付)『美味しんぼ』の第二十四巻の刊行は一九九〇年なので、当然、マンダラの開業もそれ以前となる。
エスビーが提供している『噂の名店』というサイト内の「マンダラ」の特集ページには、この店のオーナーの「外ノ池祐太」氏のインタビューがあって、氏の言によると、マンダラの開業は〈一九八五〉年であるそうだ。
そのマンダラの母体である『西インド会社』の前身は「西遊旅行」という旅行会社で、「インドの秘境ツアー」などを企画していたらしい。そして、ツアーから帰ってきた参加者達の交流の場として作られたインド料理店こそが「マンダラ」の始まりとの事である。
そしてさらに、インド帰りのツアー参加者だけではなく、「当時の日本人がまだ知らないインド」の提供というのも、この店のテーマであったそうだ。
たしかに、マンダラは、日本人のオーナーが経営している日本のインド料理店なのだが、先に述べた「当時の日本人がまだ知らないインド」というコンセプトの下、本場の味や雰囲気を醸し出すために、料理人も、そしてスタッフまでもがインド人で、いつものガイドブックによると、料理人にいたっては、四半世紀以上ものキャリアを誇っているらしい。
そのマンダラの代表メニューが「チキンバターマサラ」で、これは、大量の二種類のトマトが使われているカレーで、味は強烈な酸味、色味は「鮮やかなオレンジ色」と、八〇年代当時においては、かなり珍しい特徴を誇っていたそうだ。
二〇二三年現在、普通に北インド系のカレー店に行ける我々には驚きの事実なのだが、昭和六十年代当時においては、ナンは未だ珍しかったらしい。
だから、未知なる食べ物に対する日本人客の心理的ハードルを下げるために、食器は、ステンレスやアルミではなく、陶器を採用した、との事であった。
この日の書き手は、ライスは、いつもの「ピラオ」を、そして、カレーに関しては、メカジキの「フィッシュカレー」を注文したのだが、その米もカレーも、たしかに陶器で提供された。
思い出してみると。これまで何度か「マンダラ」を訪問した時にも、たしかに料理は常に陶器で出されていた。
調べてみたところ、マンダラの器は〈信楽焼(しがらきやき)〉であるそうだ。
信楽焼は、中世から現在まで生産が続いている、越前、瀬戸、常滑、信楽、丹波、備前という〈日本六古窯〉のひとつで、滋賀県甲賀市信楽を中心に作られており、一般に〈信楽焼〉といえば、狸の置物で有名であろう。
そういえば、「マンダラ」が表紙を飾った『美味しんぼ』の作中人物、「海原雄山」氏は美食家であるだけではなく、陶芸を中心にした大芸術家という設定である。
もし仮に、『美味しんぼ』の中で、どこかのカレー店が、例えば、「マンダラ」をモデルにしたような店が、海原氏から贈られた食器を使っているというエピソードがあったら面白かろう、と書き手はふいに発想してしまった。
だが、しばし待て。
たしか、『美味しんぼ』の中には、海原雄山作の皿に何百万円という値がついていたエピソードがあったはずなので、さすがに、そんな高額の器に盛られたカレーを食べる事になったら、その事実を知った客は過緊張で、きっと味など感じられない事であろう。
〈訪問データ〉
インドレストラン マンダラ:神保町エリア
A06
八月十六日・水・十九時四十五分
フィッシュ(メカジキ)カレー・辛さ3Hot)一二〇〇)ピラオ(五〇〇)カルピスラッシー(五八〇):二二八〇円(クレカ)
『北斗の拳』カード:No.06「サウザー」〈三枚目〉
〈参考資料〉
「インドレストラン マンダラ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、三十三ページ。
『美味しんぼ』(原作・雁屋哲、作画:花咲アキラ)第二十四巻、東京:小学館、一九九〇年五月一日初版発行。
〈WEB〉
「マンダラ」、『西インド会社』、二〇二三年八月二十四日閲覧。
「マンダラ」、『食通が認める噂の名店』、S&B、二〇二三年八月二十四日閲覧。
「カレーの聖地・神保町の名店『インドレストラン マンダラ』。秘伝のガラムマサラを使ったカレーに魅了される」、『さんたつ by 散歩の達人』、二〇二三年八月二十四日閲覧。
『六古窯』、二〇二三年八月二十四日閲覧。
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