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4.別れ

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「マスクしたらチューできなくなるね。」

彼がキスしようと顔を近づけてきた。

(はあ?どの面下げてキスしようとしてくんねん!厚かましい!)

「あ、マスクしなきゃ。」

さちこは慌ててマスクをする。
彼はぐでんぐでんに酔った勢いでさちこの体を触ってくる。

「ちょっと胸揉むのやめてくれる?」
「ごめんごめん。触っちゃった?俺嫌がることはしないポリシーだから。」

人気のない道端に誘い込んでキスしようとしてくるのをかわしながら
やっと駅に着いた。

「今度渋谷の時は全部奢りますんで安心してください。」
(当たり前やろ!ってかもう会うつもりないけど。)

「そうなん?なんで?」
「初回はそれで人を見るって決めてるんで。」
「へー。」
(こっちは見させてもらったわ。ますます人間の器の小ささがわかるね。)

「なんか僕に言っておくことない?」
(その質問さっきもあったなあ。笑
まあもう会うつもりないからわざわざ言うことないね。)

「ない。」
「ふーん。ならいいけど。」
(なんか意味深!笑)

彼の家は反対方向であったが、ホームで見送ると言ってついてきた。
電車を待っていたら、また抱きついてキスしようと迫ってきた。

「こういう公の場でそういうのしたくないから。」
「誰も見てないって。」
「見てるって。
自分はええけど、私はこれからここで並んでる人と電車でずっと一緒やねんで。
恥ずかしいやろ?いい大人が。」
「そう?ほらあそこでもやってるよ。」
「あれは恋人同士でしょ?私たちは違うから。
そういう酔った勢いでで何とかしてやろう感がすごくて嫌。そういう人嫌。」
「わかったわかった。俺は嫌がる人に無理やりすることはしないから。」
「じゃあやめて。」

彼のしつこさにうんざりしたが、さちこもかなり酔っていたので
彼を殴ってホームに突き落とす元気はなかった。

しかしキスひとつ許そうとしなかったのは我ながら感心した。
この体の拒否反応は今のパートナーへの気持ちからか、
自分軸強化の成果なのかはわからないが、
自分の欲求に敏感になってきている証拠かもしれない。

先に来るはずの電車がなかなか来なくて、
ホームの反対側の後発列車がすでに出発していることに気づき、
次の列車が来たのでそっちに飛び乗って別れた。

家に着いても彼から今日はありがとう的なラインはなかった。
無論こちらから連絡する気は毛頭ない。
さちこにとっては2番手にもしたいと思わない男であった。
ラインをブロックし、もらった名刺は破り捨てて寝た。


今回の気づき
①プロフに<初デートの費用:男が多めに払う>と設定している男に対しては、
どれくらい多めに払うかというのは個人の裁量であり要注意。

②「いろんなお店を知っている」という誘い文句は当てにならない。
店選びの段階の優柔不断さで気づくべし。

これからは<初デート費用:男が全て払う>に設定している男とのみ
会うことに決めた。


この体験と気づきに感謝します。

槇原似君、貴重な学びをありがとう!

彼に幸あれ☆

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