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第二十三話エナジー 「加賀美麻里の17年間」
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加賀美麻里。
17歳の高校二年生。
エナジー部隊高等部に所属しながら、都内の公立高校に通っている。
神奈川県の川崎市に加賀美は住んでいる。
生まれも育ちも川崎市。
5人兄弟。
加賀美は一番上の長女。
両親は母親のみ。
父親は浮気をして出て行った。
子どもが5人もいるにも関わらず、他の女を作って出ていった父親を当然加賀美は許さない。
殺してもいいと思っているほど、憎んでいる。
だから思った。
私は絶対に恋愛しない。
いや、男を信用しない。
母さんのようになりたくない。
男なんか恋愛してたまるか。
母親一人で5人の子どもたちを養っていくのは、経済的に困難だ。
運が良かったという点は、長女の加賀美だけがエナジープラン(エナジーの使い手)だということ。
エナジー部隊の初等部に入った頃から、仕事を引き受け、報酬を得ていた。
その報酬で家族の生活費にあてたり、自身の通う学校の給食費、学費などを払っていた。
エナジー部隊の初等部の学費は、全て税金でまかなわれている。
防衛省管轄のためである。
加賀美が医術エナジーに目覚めたのは、小学三年生の頃。
加賀美が公園で弟や妹たちの面倒を見ていたとき。
弟の一人が、ボールを取りに公園から飛び出した。
ちょうど車が来ていて、小さい加賀美の弟にまるで気がつかなかった。
ドン。
加賀美の弟はブレーキもかかっていない車にはねられた。
とっさに加賀美はエナジーパワーを使い、吹っ飛んだ弟が地面に落下する前に抱きかかえた。
抱きかかえた弟に無意識にエナジーを送っていた。
そのエナジーこそが「イラージ」(自己治癒力強化)だった。
高等部の医術エナジーの授業を受けているわけでもなく、突然目覚めたのだ。
弟を救いたい。
その一心で生まれた能力である。
小学校、中学校はエナジーの力を隠したまま、何事もなく卒業。
加賀美の心を悩ませる原因は長谷だ。
長谷は加賀美より一つ上の高校三年生。
加賀美と違い、特殊なエナジー能力が使えることで、初等部の頃から優秀なエナジープランとして扱いを受けてきた。
そんな長谷に対して、尊敬する気持ちと嫉妬する気持ちが同時に存在した。
中学生まではそれだけだった。
なのに、高校生になってから、別の感情が生まれていたことに気づいた。
長谷のする行動の一つ、一つが気になって仕方がない。
長谷が今、どこで何をしているのか、エナジー部隊にいるとき以外でも気になってしまう。
こんな恥ずかしい悩み、同じ高等部の仲間には言えない。
だって、私は宣言しているだもの。
「男なんていらない。」
って。
大事なものは生活するためのお金だけ。
男は女を苦しめる存在。
私の母のように。
私の家族のように。
だからいらない。
でも苦しいの。
心が。
なぜなの?
私は認めたくない。
長谷に対する気持ちがこ…。
ダメダメ。
絶対に言えない。
ってさっきから私は何、自分語りしてるの?
さっさと戦いに戻りましょ。
「二回戦。地球人『加賀美麻里』対プレシオサウルス(首長竜)の『メルポポ』はじめ!!」
プレシオサウルス。
ネッシーと騒がれた恐竜がこのプレシオサウルスだ。
正確には恐竜ではない。
ヘビやトカゲなどの爬虫類の分類になる。
白亜紀に生息していたとされる。
体長は4m~12m。
海の恐竜とも呼ばれていた。
「えっ。首長竜?なんで陸なんか上がってるのよ。さっさと海に戻りなさい。」
「うるさい女だ。ウガンドロン(シールド高速移動術)できるなら、陸も空も海中も関係なく移動できるだろうが。」
「どうでもいいわ。それより、アンタなんかに私の制服を傷つけさせない。この制服いくらだったかアンタわかる?」
「知らん。『ジャル・ミサイル』(水属性のミサイル)!!」
プレシオサウルスのメルポポは、口の周りの水の塊を発生させた。
ポニョポニョ。
その水の塊は徐々にミサイルのように尖った形に変貌していった。
バキューン!!
その発射されたミサイルは、加賀美の予想を遥かに超えていた。
加賀美が気づいたときには、お腹に大きな穴が空いていた。
「グハァ。」
吐血する加賀美。
あまりの激痛に混乱する加賀美。
止血しなきゃ。
いや、そもそも臓器をどれだけやられた?
体の重要器官どこまで破壊された。
修復できる?
無理に決まっている。
失われたものは血液以外作る術はない。
ってことは。
死。
死を覚悟する時間さえメルポポは与えなかった。
ガブ。
加賀美の頭から食いついた。
ムシャムシャ。
「おえ。マズ。地球の人間って体になんか薬品でも塗ってんのか?マズっ。」
加賀美の頭は食われ、体は四肢と腹に穴が空いた胴体だけが残った。
ズシャ。
息絶えた加賀美の肉体は倒れ込んだ。
メルポポは加賀美の頭を食ってしまったので、仕方なく加賀美の肉体の右腕を噛みちぎった。
ブチッ。
そのまま空高く加賀美の右腕を掲げた。
「おおおおおおおおおおお~!!!!!!!」
闘技場の観客席で歓声が上がった。
「二回戦、地球人『加賀美麻里』対プレシオサウルスの『メルポポ』。メルポポの勝利!!」
「弱っちい女。接近戦さえしなければ、簡単に勝てる相手だ。」
メルポポは勝利の余韻に浸っていた。
「『10セケネット・ラケットエナジー』。(10秒間強制無効エナジー)」
光のサークルがメルポポを覆った。
「これは!?エナジーが出ない!!一回戦の地球人の!!」
突如、現れた長谷は、メルポポの首を無理矢理引きちぎった。
ブチッ。
ブシュー。
巨大なメルポポの体。
体にある血液の量も相当なもの。
闘技場の舞台中はメルポポの血で染められ、赤い舞台に染まった。
「よくも加賀美をやりやがったな。もう恐竜祭なんかどうでもいい。おまえたち恐竜を一匹残らず、殺してやる。」
長谷の怒りのエナジーがたぎっていた。
つづく。
17歳の高校二年生。
エナジー部隊高等部に所属しながら、都内の公立高校に通っている。
神奈川県の川崎市に加賀美は住んでいる。
生まれも育ちも川崎市。
5人兄弟。
加賀美は一番上の長女。
両親は母親のみ。
父親は浮気をして出て行った。
子どもが5人もいるにも関わらず、他の女を作って出ていった父親を当然加賀美は許さない。
殺してもいいと思っているほど、憎んでいる。
だから思った。
私は絶対に恋愛しない。
いや、男を信用しない。
母さんのようになりたくない。
男なんか恋愛してたまるか。
母親一人で5人の子どもたちを養っていくのは、経済的に困難だ。
運が良かったという点は、長女の加賀美だけがエナジープラン(エナジーの使い手)だということ。
エナジー部隊の初等部に入った頃から、仕事を引き受け、報酬を得ていた。
その報酬で家族の生活費にあてたり、自身の通う学校の給食費、学費などを払っていた。
エナジー部隊の初等部の学費は、全て税金でまかなわれている。
防衛省管轄のためである。
加賀美が医術エナジーに目覚めたのは、小学三年生の頃。
加賀美が公園で弟や妹たちの面倒を見ていたとき。
弟の一人が、ボールを取りに公園から飛び出した。
ちょうど車が来ていて、小さい加賀美の弟にまるで気がつかなかった。
ドン。
加賀美の弟はブレーキもかかっていない車にはねられた。
とっさに加賀美はエナジーパワーを使い、吹っ飛んだ弟が地面に落下する前に抱きかかえた。
抱きかかえた弟に無意識にエナジーを送っていた。
そのエナジーこそが「イラージ」(自己治癒力強化)だった。
高等部の医術エナジーの授業を受けているわけでもなく、突然目覚めたのだ。
弟を救いたい。
その一心で生まれた能力である。
小学校、中学校はエナジーの力を隠したまま、何事もなく卒業。
加賀美の心を悩ませる原因は長谷だ。
長谷は加賀美より一つ上の高校三年生。
加賀美と違い、特殊なエナジー能力が使えることで、初等部の頃から優秀なエナジープランとして扱いを受けてきた。
そんな長谷に対して、尊敬する気持ちと嫉妬する気持ちが同時に存在した。
中学生まではそれだけだった。
なのに、高校生になってから、別の感情が生まれていたことに気づいた。
長谷のする行動の一つ、一つが気になって仕方がない。
長谷が今、どこで何をしているのか、エナジー部隊にいるとき以外でも気になってしまう。
こんな恥ずかしい悩み、同じ高等部の仲間には言えない。
だって、私は宣言しているだもの。
「男なんていらない。」
って。
大事なものは生活するためのお金だけ。
男は女を苦しめる存在。
私の母のように。
私の家族のように。
だからいらない。
でも苦しいの。
心が。
なぜなの?
私は認めたくない。
長谷に対する気持ちがこ…。
ダメダメ。
絶対に言えない。
ってさっきから私は何、自分語りしてるの?
さっさと戦いに戻りましょ。
「二回戦。地球人『加賀美麻里』対プレシオサウルス(首長竜)の『メルポポ』はじめ!!」
プレシオサウルス。
ネッシーと騒がれた恐竜がこのプレシオサウルスだ。
正確には恐竜ではない。
ヘビやトカゲなどの爬虫類の分類になる。
白亜紀に生息していたとされる。
体長は4m~12m。
海の恐竜とも呼ばれていた。
「えっ。首長竜?なんで陸なんか上がってるのよ。さっさと海に戻りなさい。」
「うるさい女だ。ウガンドロン(シールド高速移動術)できるなら、陸も空も海中も関係なく移動できるだろうが。」
「どうでもいいわ。それより、アンタなんかに私の制服を傷つけさせない。この制服いくらだったかアンタわかる?」
「知らん。『ジャル・ミサイル』(水属性のミサイル)!!」
プレシオサウルスのメルポポは、口の周りの水の塊を発生させた。
ポニョポニョ。
その水の塊は徐々にミサイルのように尖った形に変貌していった。
バキューン!!
その発射されたミサイルは、加賀美の予想を遥かに超えていた。
加賀美が気づいたときには、お腹に大きな穴が空いていた。
「グハァ。」
吐血する加賀美。
あまりの激痛に混乱する加賀美。
止血しなきゃ。
いや、そもそも臓器をどれだけやられた?
体の重要器官どこまで破壊された。
修復できる?
無理に決まっている。
失われたものは血液以外作る術はない。
ってことは。
死。
死を覚悟する時間さえメルポポは与えなかった。
ガブ。
加賀美の頭から食いついた。
ムシャムシャ。
「おえ。マズ。地球の人間って体になんか薬品でも塗ってんのか?マズっ。」
加賀美の頭は食われ、体は四肢と腹に穴が空いた胴体だけが残った。
ズシャ。
息絶えた加賀美の肉体は倒れ込んだ。
メルポポは加賀美の頭を食ってしまったので、仕方なく加賀美の肉体の右腕を噛みちぎった。
ブチッ。
そのまま空高く加賀美の右腕を掲げた。
「おおおおおおおおおおお~!!!!!!!」
闘技場の観客席で歓声が上がった。
「二回戦、地球人『加賀美麻里』対プレシオサウルスの『メルポポ』。メルポポの勝利!!」
「弱っちい女。接近戦さえしなければ、簡単に勝てる相手だ。」
メルポポは勝利の余韻に浸っていた。
「『10セケネット・ラケットエナジー』。(10秒間強制無効エナジー)」
光のサークルがメルポポを覆った。
「これは!?エナジーが出ない!!一回戦の地球人の!!」
突如、現れた長谷は、メルポポの首を無理矢理引きちぎった。
ブチッ。
ブシュー。
巨大なメルポポの体。
体にある血液の量も相当なもの。
闘技場の舞台中はメルポポの血で染められ、赤い舞台に染まった。
「よくも加賀美をやりやがったな。もう恐竜祭なんかどうでもいい。おまえたち恐竜を一匹残らず、殺してやる。」
長谷の怒りのエナジーがたぎっていた。
つづく。
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