The Energy World

リョウタ

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第二十八エナジー 「ファイナルゲーム」

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「認めぬ。」

いきなり審判である恐竜人間の分身「アルデランス」がそう言い放った。

「なんでだよ。俺の完璧な勝利じゃねーか。」

「それはいいんだが、おまえが全力を出していないことが気に食わん!!」

ギクッ。

「俺も隠していたわけじゃないけど、あのティラノサウルスの炎のレーザーを俺の体が勝手に吸収したんだもん。俺、悪くねーよ。そんなことより俺、勝ちでいいよな?早く地球に帰りたいんだ!!」

審判のアルデランスともめている竜牙。

そこに宇宙を粛清するもののさこが玉座から降りてきた。

「なあ竜牙。地球に帰りたいっていうが、それはさこ次第だろ?おまえの力じゃ帰れまい。おまえだけならアバターだから地球の竜牙が消えろと願えば消えるだろうが、愛や良太はそうはいかないだろう。」

「そうだよ。その通りだよ。俺の力だけだったら、愛や良太を地球に運べない。さこの力が必要だ。地球に戻ってくれないのか?さこ。」

「話は最後まで聞け。誰も地球に戻さないとは言っていない。今すぐにもお前たちを転送してやってもいい。だが、竜牙は大事なことに気づいていない。愛や良太の体の問題だ。」

「俺がやったのは応急処置。早く日本のお医者さんか回復系のエナジー能力持っている人に診てもらいたいんだ。」

「それが間違ってるんだ。今、一番死にかけているのは愛。体の重要器官である臓器がレーザーで焼き切られた。竜牙がエセ臓器を作ったが、体に馴染まないし、本来の役割を二割程度しかカバーできていない。その愛が死ねば、愛のシールドで体が守られている良太のシールドが切れて、今度は良太が死ぬ。日本に戻っても愛が手遅れなのは、愛は臓器をすぐ移植しなければ命に関わる。なのに臓器移植はすぐにはできない。これが理由だ。わかったか?」

「お医者さんは無理か。じゃあエナジーの、医術エナジーってやつなら大丈夫だろ?」

「エナジー部隊の高等部の先生か?これはもう治療じゃないんだ。臓器を創生する力が必要だ。愛の体のことを瞬時に理解できなければならない。つまり医術創造エナジーが必要になる。そんな高等なエナジープランが日本にいると思うのか?」

「いないのか!!じゃあどうやっても愛たちは死ぬのか!!クソ!!」

「だからさことアルデランスは考えたんだ。今から竜牙とアルデランスで最後の恐竜祭を行う。そこで竜牙が勝てば、アルデランスが愛と良太に医術創造エナジーをかけてやる。全ての傷が完全再生だ。どうだ?文句はあるまい。」

「そりゃ嬉しいけどよ~。今の俺がマクロの恐竜人間と戦って勝てるわけないじゃん。もー。」

「おまえはバカか?分身のアルデランスたちだ。ヤツらはマクロじゃない。とは言っても恐竜祭に出場していた他の恐竜とは比べものにならないほどの強さだが。」

「あっ。審判のアルデランスか。ちっこいやつらだな。よし!!いいぜ。ホントの最終戦だな。」

審判アルデランスは二人いる。

Aブロックの闘技場を担当していたアルデランスと、Bブロックの闘技場を担当していたアルデランス。

二人とも身長が100cmほどで竜牙よりも身長が低い。

見た目も遜色ない。

エナジー能力は…。

決勝戦を担当していたのは、Aブロック担当のアルデランス。

竜牙はいきなり仕掛けていった。

「この星で愛と良太を治してくれるんだったら、それに越したことはないぜ!!くらえっ!!」

竜牙は渾身の右ストレートをアルデランス(A)に食らわせた。

ガン!!

顔面を殴っているのに、アルデランスの体は微動だしない。

「硬え!!」

「唯竜牙。おまえ言ってるそばから全力出しとらんだろ?太陽の力とやらも使ってないな。全部の力を使っても俺に勝てるかわからんのに。俺の拳をうけてみるか?」

威圧感を感じた竜牙はすぐに距離をとり、両腕ガードの構えをとった。

のに。

ドブッ。

ズバッ。

小さい体から繰り出されるアルデランスの拳一発。

シールドでガードしている竜牙の腕を弾き飛ばした。

弾き飛ばされた竜牙の腕は突然、肘から下が切り落とされた。

「なんで!?そういう能力か!!」

「唯竜牙。両腕を切り落としてやったのに、おかしな体だな。血が出ないとは。俺のエナジー能力『カターネ・キリヤ』(斬撃付与)で全て切り落とすぜ。」

ヴオン。

切り落とされた竜牙の腕が瞬時に再生した。

「これくらいの傷だったら実はすぐに治るんだよ。俺の場合。ごめん。」

「貴様!!ミクロのくせにオート再生能力!!しかも医術創造エナジークラス!!許せん!!おい。もう一人の俺、やれ。」

気づけば、闘技場にもう一人のアルデランス(B)もやってきていた。

アルデランス(B)は闘技場の舞台に手を触れている。

「闘技場の舞台よ。命を与えてやる。唯竜牙をやれ。『ジンダッケ』(生命創造)!!」

ピカッ。

石のような硬い物質でできている舞台が、瓦くらいの大きさに分かれ始めた。

ギョロ。

一枚一枚に目玉がついた。

「唯竜牙コロス。」

ざっと数えて1000枚ほどの石の塊が、竜牙目掛けて突進してきた。

「うえっ。数が多いな。よし。ティラノサウルスに見せようとしていた技、やるか!!『リハーエ』(解放)!!」

ドバッ。

その瞬間、竜牙のエナジーが跳ね上がった。

太陽の光を浴びて強くなるラビよりも。

前回、ティラノサウルスのパビューダの炎を吸収して強くなったエナジーよりも。

「石は邪魔だ。『エナジーショット』!!」

竜牙は襲ってくる闘技場の舞台に特大のエナジーショットを放った。

ズドン!!

この闘技場と観客席の半分が吹っ飛んだ。

「ふぅ~。私の遠隔シールドがなんとか間に合いました。ホント唯竜牙はめちゃくちゃしますね。さこ様。」

「フン。バカだからな。」

観客席の恐竜たちは、マクロであるアルデランスが、一体一体の恐竜たちに自身の強固なシールドを遠隔で貸し与えたことによって、竜牙のエナジーショットから身を守ることができた。

「それにしても唯竜牙のエナジーの跳ね上がり方には驚きました。さこ様、唯竜牙はどんなマジックを使ったのでしょう?」

「あいつはやっと気づいたようだ。自身のアバターが特殊であることを。アバターが太陽光を浴びると、浴びた分だけエナジーに変換され、ラビ(太陽光を吸収したエナジー)の力が使える。それを応用し、自分のエナジーを一晩中、アバターの体の中に溜め続けたようだ。竜牙は自分のエナジーが充電できることがわかり、リハーエ(解放)して莫大なエナジーを高められたというわけだ。ってアルデランスもマクロだからそれくらい気づけ!!」

「なんと、そんな特殊な力を持っているミクロがいるなんて。私の分身二人も危ういかもしれません。」

闘技場、観客席ともに、竜牙が放った特大のエナジーショットの衝撃で、巻き上がった煙が立ち込め辺りが見えない。

「くそ。アルデランスどもがどこにいるかわからねえ。流石に2体と倒したとは思わねーけど。」

「当たり前だ。」

カターネ・キリヤ(斬撃付与)ができるアルデランスAが、竜牙の背後にまで来ていた。

ガキンッ。

アルデランスは竜牙に手刀を繰り出す。

「斬れない!?シールドの防御力が上がり過ぎている!!」
エナジーパワーが上がってしまった竜牙には、カターネ・キリヤが効かなくなっていた。

「接近戦なら望むところだぜ!!おりゃ。」

ドブッ。

竜牙は蹴りでアルデランスAのボディを蹴り飛ばした。

「うぐっ。」

「たぶんおまえはエナジーパワーのが得意なタイプなんだろ?だったらこれをくれてやる。『アギャ』!!」

竜牙は手から火炎放射のように炎を、追い討ちのようにアルデランスAに放った。

ボオオオオオオ。

「うおおお。俺のエナジーマジックでは防ぎきれない!!」

竜牙のアギャはアルデランスのシールドを炎でじわじわ溶かし始める。

ジリジリ。

「『ジンダッケ』(生命創造)!!」

もう一体のアルデランスが地面の土に生命を与え、土がロープのように伸び、竜牙の体に巻きついた。

グルグル。

「わっ。蛇かと思ったら土かよ。」

竜牙は土のロープで体がぐるぐるに巻かれ、身動きが取れなくなった。

「今だ!!やれ!!もう一人の俺!!」

「わかった。あれだな。一撃で決める。」

アルデランスBが竜牙に接近した。

「ん?なんだ?お前は接近戦タイプじゃないんだろ?」

アルデランスBが竜牙の頭を掴んだ。

「わっ。なんの攻撃だ?」

「かかったな。『ジンダッケ』!!」

ピカッ!!

竜牙の頭がアルデランスBの能力で光り輝いた。

「ククク。これで詰んだな。やつも終わりだ。」

「どうやらさこ様、この勝負私の分身の勝ちのようです。」

「ん?なんでだ?竜牙やられてないぜ?」

「私のエナジー能力『ジンダッケ』は、命を生み出す力。無機質なものに、命を与えることができます。また、生命あるものに『ジンダッケ』を使用すると、もう一つの精神が生まれます。ジンダッケの対象者は、私の思い通りになります。心が二つになり、私が付与した新しい心が元々の心を侵食し、精神の主導権を握ります。だから、唯竜牙は終わりなのです。」

「ええ。アルデランス。おまえ、ホントにマクロなのかよ。」

「えっ。」

ボコッ。

竜牙はそのままアルデランスBを激しく殴り飛ばした。

「グハァ。」

「なんだよ。俺の体、なんともないぜ?つまんねー攻撃だな~。」

「なぜだ!!なぜ効かん!!おまえ、ミクロじゃないのか!!この能力が効かないものは限られている。おまえは、他のエナジー能力によって操られているとしか考えられぬ。」

「いちいちうるさい!!俺だって自分のアバターのことよく知らないの!!うるさいからこっちから行くぜ!!おりゃ!!」

「ひっ。やられる!!」

竜牙はアルデランスAを追い込む。

竜牙はアルデランスの全身を激しく殴打する。

バキバキドンドン!!!

「オラオラ~!!」

竜牙はこのパンチとキックの連打で、アルデランスを仕留めるつもりだ。

ドブッ。

とどめの右ボディブローを渾身の力を込めて殴った。

「やったか。」

「…。唯竜牙。おまえここにきてふざけているのか?」

アルデランスには全く効いていない。

「えっ。なんで俺、全力で殴ったのに!!」

ドン!!

逆にアルデランスにボディを下から殴られ、竜牙は上空に吹っ飛んだ。

「うわぁ~!!」

「唯竜牙。わかったぞ。お前、ためていた力が無くなったようだな。あの脆弱な攻撃、太陽の力もないようだな。素のお前の力は地球人の中で最も最弱じゃないのか。」

「そうだったんだ。俺のラビもリハーエも短時間しか使えないんだ。俺も知らなかった。これは、まずい。あれは実験中だから使いたくなかったのに。」

ズバッ。

アルデランスはカターネ・キリヤ(斬撃付与)を竜牙に使っていた。

ボディにダメージを受けた竜牙。

竜牙の上半身と下半身が真っ二つに分かれた。

アバターの竜牙なので、当然血も臓物もない。

「ヤベッ。」

竜牙の下半身が落下していく。

ピュー。

「チッ。この状態でも生きてやがるのか。おい。アルデランスB唯竜牙の下半身が落ちてくるぞ。破壊しろ。」

ちょうど、アルデランスBの下に落下していた。

「邪魔だな。」

アルデランスBが手にエナジーをため、エナジーショットで竜牙の下半身を迎撃しようとした。

「今だ!!バンビスポート(爆撃)!!」

ドカン!!

竜牙は自身の下半身を爆発させた。

「なに!!」

竜牙は下半身を再生する間もなく、地面に降り立った。

爆発によって、アルデランスBは跡形もなく消え去っていた。

「なんて破壊力!!今の爆撃はざっとエナジーパワー50000以上!!アレで攻撃されたら、俺の防御力では到底防げない。どうやったら唯竜牙を殺せる…。首か。頭か。両方か!!」

ドン!!

アルデランスAは竜牙の頭を狙って、突進してきた。

ラビもリハーエも失った竜牙自身のエナジーパワーは3000程度。

アルデランスAのスピードを目で追うことができない。

だからすぐにやった。

バンビスポート(爆撃)。

竜牙が夏休み中に覚えた技だ。

良太との修行の後に編み出した技だ。

自分の体が実体じゃなく、エナジーできていることがわかり始めた竜牙。

エナジーでできている体だったら武器にすることも、攻撃に転化することも可能。

竜牙は威力がある攻撃が爆発だと思った。

だから、自身の体の一部をエナジーで集中させ、爆発させることに成功した。

それがちょうど三日前のことだった。

本番で使うことを悩んでいた。

しかし、ラビもリハーエも失った竜牙はそれを使うしかなかった。

目で追えないアルデランスに対して、竜牙の体全身でバンビスポートを行うしかなかった。

それを行うと自分の体がどうなるかわからない。

だが、やるしかない!!

ドカガン!!!

先程の爆発以上の爆発が起こり、闘技場は爆撃で全て吹き飛んだ。

つづく。
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