フェイタリズム

倉木元貴

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出会いの形は最悪だ 3

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 楽しい会話も鳴り響くチャイムが終わりを告げ、クラスのほぼ全員が自分の席へと座った。全員の視線が黒板に向いている最中、扉が開き教師でも入ってくるのかと思いきや、真っ赤なリュックサックを背負った小さく可憐な少女が入って来た。その少女は教室に入るなり廊下にも響くような大きな声で挨拶をした。
 
「おっはようございまーす! みなさんこれからよろしくお願いします!」
 
 クラスの反応は想像つくだろうけど、まあみんな静まり返っていた。その空気を感じて本人も気付いたようで、自分の席を確認し静かに席に座った。少し離れた僕の席からでも落ち込んでいる様子がよく分かった。知っている人間なら、「すべっていたね」なんて揶揄うことをできるけど、見ず知らずの人間にそれはできない。
 そんな静まり返った空気を、見事笑いに変えた人物が救世主のごとく現れた。
 
「ふふっ。君ってすごく面白いね」
 
 そう言って席から立ち上がり、すべった少女の隣まで歩いていた。彼女が笑ったことによって、みんな笑っていいんだというような空気になり、静かな空気は次第に笑いに包まれていた。すべった少女の周りにも二人三人と人が集まり賑やかになっていた。
 
「私、堺真咲って言います。取り敢えず一年間よろしくね」
 
 女子の中では少し背の高い、黒髪ロングの清楚可憐な救世主の彼女はそう名乗った。
 
「き、如月歌恋と言います。こちらこそよろしくお願いします。それと、助けてくれてありがとうございます」
 
 対してすべった少女は如月と名乗った。二人は軽く握手を交わして和気藹々と話を続けていた。時間が過ぎるにつれ集まった人たちはだんだんとはけていき、本鈴がなる直前になると全員が自分の席に座っていた。楽しい会話をしていたはずなのに、すべった少女の背中は変わらず落ち込んでいる様子だった。二回目のチャイムと共に、体育が専門ですよと服装で物語っている筋肉質で強面な教師が入ってきた。
 
「うちのクラスは初めましてなのに賑やかだなあ。そんなことよりも、ホームルームを始めるぞ。て言っても、この後すぐ対面式だから簡単にしかしないからな。分からないことがあったら何でも聞いてくれ」
 
 その後は、入学式でもらった栞に書いてある通り黒板に今日は何をするかを書いて終わり。程なくしてチャイムが鳴り響き、教師の指示で廊下に並んだ。僕らのクラスは四組だから前に三組の人たちが並んでいて、その後ろに続くように二列で並んだ。
 並び始めて五分くらい経ったが、三組は動く気配はない。原因は大抵想像つく。どうせ、体育館の用意が整っていない、そんなところだろう。
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