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合同合宿会 14
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この時僕は、如月さんは人使いが荒いと、心の中では呟いていた。
「何か変な気を感じました。中田さん何かしました?」
如月さんは本当に怖い。
もしかすると僕が顔に出ているかもしれないけど。それでも怖い。
「いや何も……幽霊でもいたのかな……」
「そうかもしれないですね。と言えばいいのですか? そんなわけないじゃないですか。幽霊なんてこの世に存在しませんよ」
「だよねー」
僕は、切り分けられた野菜が大盛りになっている皿を如月さんから受け取り、早足で岡澤君と中村君がいる外に出た。
次如月さんに呼ばれた時は、二人のどちらかを行かせようと心に決めて。
そのタイミングは思っていたよりも早くやって来てしまった。
「男子の皆さん。食材の運搬をお願いします」
如月さんに呼ばれたのだ。
僕は岡沢君か中村君のどちらかを行かせるつもりだったが、まさか全員呼ばれるとは。行きたくなかったが、呼ばれたからには仕方ない。
僕は二人に隠れるように最後尾に並んでコテージに戻った。
「重たいので気をつけてください」
「任せとき。男子やけんいけるで!」
「頼もしいですね」
先頭の岡澤君は肉が大量に盛られた皿を受け取り、外に出た。中村君が如月さんから皿を受け取る前に、如月さんを除く三人がそれぞれ肉か野菜の皿を持ち外に出た。
この流れはまずい。二人きりになってしまう。如月さんは最初からこれを狙っていたのか。岡澤君が帰ってこないのは如月さんが何か策をうったから。
僕は完全い嵌められていた。
「重いですが大丈夫ですか?」
「だ、だい、大丈夫だよ……」
中村君も肉のお皿を受け取り外に出た。
ついにこのコテージには僕と如月さんの二人だけになっていた。
「中田さん少し話が」
「さ、さっきのこと?」
「さっきの? 違いますよ。碧ちゃんと距離を縮めるべく作戦です」
「ああ、なんだそっちか……」
「誰かに聞かれたらまずいので一言で終わらせます。夕食の後の勉強会は数学の宿題をしてください。碧ちゃんの方は私がなんとかして数学をさせますので」
「わかった。わかったけど、なんで数学?」
「中田さんは知らないと思いますが、碧ちゃんの一番の得意分野は数学なのですよ」
「そ、そうだったんだ……知らなかった」
「自分の数学が終われば、和気藹々と教えてくれると思いますよ」
「そんなに都合よくいくの?」
「大丈夫ですよ。そこをどうにかするのが私ですから。任せてください!」
不安しかないけど、如月さんが自信があるというのなら、如月さんに任せよう。
なんにせよ、僕が特に何もしなくていいのならなんだっていい。
僕は如月さんから食器を受け取り、如月さんと共にコテージの外に出た。
みんなのところに向かう前に如月さんは立ち止まった。そのタイミングで僕は一つの疑問を如月さんにぶつけた。
「なんで何も持ってないの」
如月さんは僕に食器を全て渡すと、自分は何も持たずに来ていた。
「それは私が女子だからです」
「女子ねー」
ついついそう呟いてしまっていた。
「何か言いましたか?」
「いや何も……」
「怪しいですね。なんで目を合わせないのですか?」
目なんか合わせられるわけがない。
別にやましい意味じゃなくて、人と目を合わせるのが、コミュ障だから苦手なだけだ。たとえ相手が如月さんだとしても、合わせたくないものは合わせたくないんだ。
「まあ、いいでしょう。それよりも、これから忙しくなるので覚悟しておいてください」
「何か知らないけど、わかったよ」
「反論しないのですか?」
「したところでねじ伏せるだけでしょ」
「それは中田さんが弱いだけです」
「如月さんが強すぎるんだよ」
二つの意味で。
「勉強して知識を蓄えれば、自然と言葉にできますよ」
「それは遠慮しとく。如月さんについていける自信なんてないよ。僕は全てそこそこでいいと思っているから」
「つまらない人生になる予感しかしないですけど、それでいいのですか?」
「いいよ。ベンチャー企業の社長よりも、会社員で毎月給料もらう方が僕には合ってると思うから」
「そうですね。中田さんにはそちらが似合ってますよ」
自分で言うからにはいいが、人に言われるとなんでこんなにイライラするんだろう。
「高望みなんてしないからそこそこ勉強して、そこら辺の企業に就職できればそれでいいんだよ」
「ですが、会社選びは大切ですよ。ブラック企業なんてそこら中にありますから」
「だから勉強をしろってことか?」
「私のセリフを取るとは、中田さんもなかなかやりますね」
「もうかれこれ三ヶ月もいるからな。そろそろ慣れてきたよ」
如月さんは急に俯いて何も言わなくなった。
僕は何かまずいことでも言ってしまったのだろうか。至って普通のことしか言ってないと思う。
どうするべきか、一応声だけは掛けてみよう。
「如月さんどうしたの?」
声をかけると、ようやく反応が見られた。
「あ、いえ。なんでもないです。ああ、それと、今の言葉気持ちが悪いので聞かなかったことにしますね」
どうやら僕は進むべき道を間違えていたようだ。
「何か変な気を感じました。中田さん何かしました?」
如月さんは本当に怖い。
もしかすると僕が顔に出ているかもしれないけど。それでも怖い。
「いや何も……幽霊でもいたのかな……」
「そうかもしれないですね。と言えばいいのですか? そんなわけないじゃないですか。幽霊なんてこの世に存在しませんよ」
「だよねー」
僕は、切り分けられた野菜が大盛りになっている皿を如月さんから受け取り、早足で岡澤君と中村君がいる外に出た。
次如月さんに呼ばれた時は、二人のどちらかを行かせようと心に決めて。
そのタイミングは思っていたよりも早くやって来てしまった。
「男子の皆さん。食材の運搬をお願いします」
如月さんに呼ばれたのだ。
僕は岡沢君か中村君のどちらかを行かせるつもりだったが、まさか全員呼ばれるとは。行きたくなかったが、呼ばれたからには仕方ない。
僕は二人に隠れるように最後尾に並んでコテージに戻った。
「重たいので気をつけてください」
「任せとき。男子やけんいけるで!」
「頼もしいですね」
先頭の岡澤君は肉が大量に盛られた皿を受け取り、外に出た。中村君が如月さんから皿を受け取る前に、如月さんを除く三人がそれぞれ肉か野菜の皿を持ち外に出た。
この流れはまずい。二人きりになってしまう。如月さんは最初からこれを狙っていたのか。岡澤君が帰ってこないのは如月さんが何か策をうったから。
僕は完全い嵌められていた。
「重いですが大丈夫ですか?」
「だ、だい、大丈夫だよ……」
中村君も肉のお皿を受け取り外に出た。
ついにこのコテージには僕と如月さんの二人だけになっていた。
「中田さん少し話が」
「さ、さっきのこと?」
「さっきの? 違いますよ。碧ちゃんと距離を縮めるべく作戦です」
「ああ、なんだそっちか……」
「誰かに聞かれたらまずいので一言で終わらせます。夕食の後の勉強会は数学の宿題をしてください。碧ちゃんの方は私がなんとかして数学をさせますので」
「わかった。わかったけど、なんで数学?」
「中田さんは知らないと思いますが、碧ちゃんの一番の得意分野は数学なのですよ」
「そ、そうだったんだ……知らなかった」
「自分の数学が終われば、和気藹々と教えてくれると思いますよ」
「そんなに都合よくいくの?」
「大丈夫ですよ。そこをどうにかするのが私ですから。任せてください!」
不安しかないけど、如月さんが自信があるというのなら、如月さんに任せよう。
なんにせよ、僕が特に何もしなくていいのならなんだっていい。
僕は如月さんから食器を受け取り、如月さんと共にコテージの外に出た。
みんなのところに向かう前に如月さんは立ち止まった。そのタイミングで僕は一つの疑問を如月さんにぶつけた。
「なんで何も持ってないの」
如月さんは僕に食器を全て渡すと、自分は何も持たずに来ていた。
「それは私が女子だからです」
「女子ねー」
ついついそう呟いてしまっていた。
「何か言いましたか?」
「いや何も……」
「怪しいですね。なんで目を合わせないのですか?」
目なんか合わせられるわけがない。
別にやましい意味じゃなくて、人と目を合わせるのが、コミュ障だから苦手なだけだ。たとえ相手が如月さんだとしても、合わせたくないものは合わせたくないんだ。
「まあ、いいでしょう。それよりも、これから忙しくなるので覚悟しておいてください」
「何か知らないけど、わかったよ」
「反論しないのですか?」
「したところでねじ伏せるだけでしょ」
「それは中田さんが弱いだけです」
「如月さんが強すぎるんだよ」
二つの意味で。
「勉強して知識を蓄えれば、自然と言葉にできますよ」
「それは遠慮しとく。如月さんについていける自信なんてないよ。僕は全てそこそこでいいと思っているから」
「つまらない人生になる予感しかしないですけど、それでいいのですか?」
「いいよ。ベンチャー企業の社長よりも、会社員で毎月給料もらう方が僕には合ってると思うから」
「そうですね。中田さんにはそちらが似合ってますよ」
自分で言うからにはいいが、人に言われるとなんでこんなにイライラするんだろう。
「高望みなんてしないからそこそこ勉強して、そこら辺の企業に就職できればそれでいいんだよ」
「ですが、会社選びは大切ですよ。ブラック企業なんてそこら中にありますから」
「だから勉強をしろってことか?」
「私のセリフを取るとは、中田さんもなかなかやりますね」
「もうかれこれ三ヶ月もいるからな。そろそろ慣れてきたよ」
如月さんは急に俯いて何も言わなくなった。
僕は何かまずいことでも言ってしまったのだろうか。至って普通のことしか言ってないと思う。
どうするべきか、一応声だけは掛けてみよう。
「如月さんどうしたの?」
声をかけると、ようやく反応が見られた。
「あ、いえ。なんでもないです。ああ、それと、今の言葉気持ちが悪いので聞かなかったことにしますね」
どうやら僕は進むべき道を間違えていたようだ。
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