合同会社再生屋

倉木元貴

文字の大きさ
上 下
17 / 20

護りたいもの 7話

しおりを挟む
 突然事故に巻き込まれて、突然人生をやり直せると言われても頭は全く追いつくことができていなかった。
 
「何? 何ですか? 私は死んだのですよね? ここはどこなのですか? 再生プログラム? 変なこと言わずに私がどうなったのか教えてもらっても良いですか?」
 
 苛立ちのあまり頭に浮かんだ言葉を全て口にしていた。それなのに、この男は表情一つ変えることなく相変わらずの奇妙な半笑いを浮かべていた。
 
「あなたの思っている通りあなたは死んでしまいましたよ。それでこの場所についてですね。正直に申しますと、私自身この場所がどういう所なのか存じ上げていないのです。社長に命令されて、皆さんをこの場所に案内しているだけです。質問は以上ですか?」
 
 余裕そうな顔を浮かべているのが余計に腹立たしさを増幅させるが、ここで感情に飲まれては相手の思う壺だ。少しでも多く情報を聞き出してどうするかを決めよう。
 
「過去に戻るってどういうこと? 人間は今の技術では過去に戻ることはできないし、未来は変えることができないのでは?」
 
 この男は少し困った顔を浮かべていた。
 
「う~ん。技術的なことを訊かれましても、開発者じゃないので私には分かりません」
 
「じゃあ、質問を変える。私を過去に戻らせて何をして欲しいの? 過去の宝くじでも買えばいいの? それとも何、これも慈善活動だというの?」
 
 男はいつも通りの少しニヤけた顔を浮かべた。この瞬間、訊くことを間違えたと後悔をした。
 
「勿論ですとも。私たちが行う行為に関しましてお客様に代金を請求することはありません。但し、違反行為が認められた場合は、財産及び命の全てを没収いたします。それでは、誠に勝手ながら違反公に説明を行います。簡単い説明いたしますと、我々のことを過去に戻ったとしても話さないこと、私どものことを一切探らないこと、この条件を守れない場合はさっきも言いましたが、命を奪いに行きますのでお気をつけください。以上が今回の説明になります。何か分からないことはありましたか?」
 
 分からないこと、そう訊かれてもそもそも何も分からない。どうしてこうなってしまったのかそれだけは何となく分かる。でもそれ以上は、何も分からない。情報を集めようとか意気込んでいたけど、結局何も集まらないままだ。
 
「詮索って、どこまでがそうなの? 例えば、ネットを使ってその、再生屋だっけ? 会社のことを調べるのは大丈夫なの?」
 
「できればやめて欲しいですけど、一人で調べる分には違反とはなりません。我が社のことを他人に喋ることは違反に当たりますので、ご注意ください」
 
 くだらない質問だけど、それ以外に何を訊けばいいのか、頭では整理できなかった。
しおりを挟む

処理中です...