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バレンタインチョコ詰め合わせ
チョコレートの香りは……
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清酒正秀二十五歳。
年上キャリアウーマン灰野初芽さんと付き合い初めてウキウキしている男性の物語です。
※ ※ ※
バレンタインで浮き足立つなんて子供くらい。そう口では言っているものの、大人にとっても嬉しいモノである。
特に彼女と迎える初めてのバレンタインだと尚更。そんなに互いに暇でもないのにわざわざ待ち合わせ。イタリアンバルでデートして、有名ショコラティエ作のチョコレートもらい相手の部屋に行く。
いつもとは違うノリで恋人同士のワクワクとドキドキが楽しめる。
恋人の初芽の部屋の玄関で俺を見て睨みつけてくるクソ生意気な灰色の猫の存在も今日は気にならない。
俺達の仲良い感じに付け入る隙間を感じられなかったのか、サッサと部屋の奥に行ってしまった。
その事に馬鹿らしくも優越感を感じ入り部屋に違和感を覚え、俺は部屋を見渡す。いつもと部屋の感じは全く変わってないが、香りがどこか甘い。
女性の部屋特有の甘さでなく、文字どおり甘い香りがするのだ。
「チョコの香り?」
俺が呟くと、初芽はビクリと身体を動かす。そして俺をコソッと見上げてくる。
「もしかして、チョコとか作ってくれたの」
するといつになく初芽は慌てて顔を赤くする。俺の期待に満ちた視線に耐え切れずに目を逸らす。
クールで大人なイメージが強いだけに、こう慌てる様子も珍しいし、その姿がなんか可愛い。
「ちょっと失敗したの……。
簡単に出来るキットだというからやってみたの。
やはり味もそれなりで……だからそっちは気にしないで!
それより珈琲いれてよ!」
チョコレートなんて溶かして固めるだけ。手作りなんて言うのが烏滸がましい。
そう偉そうに言う男はいるが、チョコレートはテンパリングとかもあって以外とコツもいり面倒くさい。
姉のバレンタインデーのプレゼント作りを昔散々手伝わされたから知っている。
女性はチョコを必死になって、大騒ぎで作っているものなんだ。それに買う方が安いという事もある。
バレンタインデーに弟を巻き込んで必死なって作っている姉をみていた。その舞台裏の騒動を知っているだけに、俺は手作りチョコを恋人から貰うのは嫌いじゃない。それが不格好なものであっても嬉しいと思う。
「折角初芽が作ってくれたのに、そっちも食べたいな」
そう言うと初芽は唇尖らせ剥くれる。これ以上言うと完全に拗ねてしまいそうだから止める。
そしてケトルに水を入れ火をかけ、珈琲豆を出すために冷蔵庫開けるとそこにあった。タッパーに入ったトリュフチョコらしきものが。その事に気が付いた初芽が慌てて近付いてくる。
タッパーに入ったトリュフチョコらきものを取り出し隠そうとしてきたので、先に取り抱え込む。
「チョット、ダメ! 見ないで! それ失敗作だから! 本当に不格好だから」
背後から抱きつくように俺からタッパーを奪おうとする初芽に、それをさせまいと死守する俺。
「美味しそうじゃん、一緒に楽しもうよ」
そんなじゃれ合いを、冷蔵庫の警告音が邪魔をする。
「トリュフチョコと珈琲は、一緒食うと美味いよ。折角だから食べようよ」
ニッコリそう笑うと初芽はハァと息を吐き諦めてくれたようだ。
「見て笑わないでよ」
「笑うわけない! 嬉しくてニヤニヤするかもしれないけど」
そう言うと叩かれた。
トリュフチョコは不揃いではあるものの言う程不格好でもなかった。二人で暴れたから片方に寄って固まっているのは仕方がない。
「頂きます」
そう言って摘むと、初芽は恥ずかしそうに『どうぞ』と小さい声で答える。
ココアパウダーの苦味も程よく美味かった。
「味は微妙じゃない? 手作りキットはお手軽さが最優先みたいで……」
「旨いよ!」
俺がニヤニヤ笑いながら言うと、また叩かれる。俺はトリュフチョコを摘んで初芽の口に放り込み『旨いだろ?』と聞く。
「ウソ! 安っぽい味じゃない。こんなの食べるなら、さっき貴方にあげたチョコを食べれば良いのに。あっちは間違いなく美味しいから」
フフと笑ってしまう。
「世界的ショコラティエのチョコを比較に出すと殆どのチョコは負けるよ。まさかアレを越すモノを作るつもりだったの?」
そう言うと、フーと息を吐き唇を尖らせる。
「それに、このチョコも旨いよ、だって初芽の愛が篭ってるから」
初芽は猫のような目を細める。
「正秀って、そう言う恥ずかしい事、なぜサラリと平然と言えるの!?」
俺はもう一粒食べる。
「あれ? 違った? 初芽が俺の為に作ってくれたのかと。だから嬉しくて堪らなかったんだけど」
初芽は顔を赤らめて眼を逸らす。
「そうだけど、改めてそう言われると恥ずかしいでしょ!」
「恥ずかしいも何も俺は感じたままを、素直に言っただけ」
何か言おうとしている初芽の口にトリュフチョコを放り込む。そして指についたココアパウダーを舐めた。その様子を初芽はジッと見つめている。
「貴方の唇にもついてるわよ」
そう言って指先で俺の唇を撫でてくる。
俺はその手首を手に取りその指先にキスして舐める。初芽は一緒ピクリと身体を震わせるが俺から目を逸らさない。
顔を近付けて軽くキスをしてから俺の唇を猫のようにペロリと舐める。そんなことされて平然といれるわけもない。
俺は初芽を抱き寄せキスをする。絡めた舌はいつもより甘く熱かった。
そういえばチョコには媚薬効果があり、口にしたらキスの四倍の興奮を人に与えると聞いた事がある。
だったらチョコを食べてキスしている今の二人の興奮はいつものキスの何倍増なのだろうか? と馬鹿な事を考える。
俺がいつも以上に興奮しているのは初芽から仕掛けてきたキスの所為か? チョコレート味のキスの所為? 部屋に漂う甘いアロマに酔ってのことか?
いや、相手が初芽だからだ。知的でセクシーな魅力的な恋人の所為。
俺のネクタイが抜き取られるのを感じながら、俺も初芽の洋服を脱がしていく。そしてそのままリビングで甘い夜を楽しんだ。
※ ※ ※
『スモークキャットは懐かない?』の少し前の時間の物語です
この時が一番二人が楽しかった時代かもしれません。
年上キャリアウーマン灰野初芽さんと付き合い初めてウキウキしている男性の物語です。
※ ※ ※
バレンタインで浮き足立つなんて子供くらい。そう口では言っているものの、大人にとっても嬉しいモノである。
特に彼女と迎える初めてのバレンタインだと尚更。そんなに互いに暇でもないのにわざわざ待ち合わせ。イタリアンバルでデートして、有名ショコラティエ作のチョコレートもらい相手の部屋に行く。
いつもとは違うノリで恋人同士のワクワクとドキドキが楽しめる。
恋人の初芽の部屋の玄関で俺を見て睨みつけてくるクソ生意気な灰色の猫の存在も今日は気にならない。
俺達の仲良い感じに付け入る隙間を感じられなかったのか、サッサと部屋の奥に行ってしまった。
その事に馬鹿らしくも優越感を感じ入り部屋に違和感を覚え、俺は部屋を見渡す。いつもと部屋の感じは全く変わってないが、香りがどこか甘い。
女性の部屋特有の甘さでなく、文字どおり甘い香りがするのだ。
「チョコの香り?」
俺が呟くと、初芽はビクリと身体を動かす。そして俺をコソッと見上げてくる。
「もしかして、チョコとか作ってくれたの」
するといつになく初芽は慌てて顔を赤くする。俺の期待に満ちた視線に耐え切れずに目を逸らす。
クールで大人なイメージが強いだけに、こう慌てる様子も珍しいし、その姿がなんか可愛い。
「ちょっと失敗したの……。
簡単に出来るキットだというからやってみたの。
やはり味もそれなりで……だからそっちは気にしないで!
それより珈琲いれてよ!」
チョコレートなんて溶かして固めるだけ。手作りなんて言うのが烏滸がましい。
そう偉そうに言う男はいるが、チョコレートはテンパリングとかもあって以外とコツもいり面倒くさい。
姉のバレンタインデーのプレゼント作りを昔散々手伝わされたから知っている。
女性はチョコを必死になって、大騒ぎで作っているものなんだ。それに買う方が安いという事もある。
バレンタインデーに弟を巻き込んで必死なって作っている姉をみていた。その舞台裏の騒動を知っているだけに、俺は手作りチョコを恋人から貰うのは嫌いじゃない。それが不格好なものであっても嬉しいと思う。
「折角初芽が作ってくれたのに、そっちも食べたいな」
そう言うと初芽は唇尖らせ剥くれる。これ以上言うと完全に拗ねてしまいそうだから止める。
そしてケトルに水を入れ火をかけ、珈琲豆を出すために冷蔵庫開けるとそこにあった。タッパーに入ったトリュフチョコらしきものが。その事に気が付いた初芽が慌てて近付いてくる。
タッパーに入ったトリュフチョコらきものを取り出し隠そうとしてきたので、先に取り抱え込む。
「チョット、ダメ! 見ないで! それ失敗作だから! 本当に不格好だから」
背後から抱きつくように俺からタッパーを奪おうとする初芽に、それをさせまいと死守する俺。
「美味しそうじゃん、一緒に楽しもうよ」
そんなじゃれ合いを、冷蔵庫の警告音が邪魔をする。
「トリュフチョコと珈琲は、一緒食うと美味いよ。折角だから食べようよ」
ニッコリそう笑うと初芽はハァと息を吐き諦めてくれたようだ。
「見て笑わないでよ」
「笑うわけない! 嬉しくてニヤニヤするかもしれないけど」
そう言うと叩かれた。
トリュフチョコは不揃いではあるものの言う程不格好でもなかった。二人で暴れたから片方に寄って固まっているのは仕方がない。
「頂きます」
そう言って摘むと、初芽は恥ずかしそうに『どうぞ』と小さい声で答える。
ココアパウダーの苦味も程よく美味かった。
「味は微妙じゃない? 手作りキットはお手軽さが最優先みたいで……」
「旨いよ!」
俺がニヤニヤ笑いながら言うと、また叩かれる。俺はトリュフチョコを摘んで初芽の口に放り込み『旨いだろ?』と聞く。
「ウソ! 安っぽい味じゃない。こんなの食べるなら、さっき貴方にあげたチョコを食べれば良いのに。あっちは間違いなく美味しいから」
フフと笑ってしまう。
「世界的ショコラティエのチョコを比較に出すと殆どのチョコは負けるよ。まさかアレを越すモノを作るつもりだったの?」
そう言うと、フーと息を吐き唇を尖らせる。
「それに、このチョコも旨いよ、だって初芽の愛が篭ってるから」
初芽は猫のような目を細める。
「正秀って、そう言う恥ずかしい事、なぜサラリと平然と言えるの!?」
俺はもう一粒食べる。
「あれ? 違った? 初芽が俺の為に作ってくれたのかと。だから嬉しくて堪らなかったんだけど」
初芽は顔を赤らめて眼を逸らす。
「そうだけど、改めてそう言われると恥ずかしいでしょ!」
「恥ずかしいも何も俺は感じたままを、素直に言っただけ」
何か言おうとしている初芽の口にトリュフチョコを放り込む。そして指についたココアパウダーを舐めた。その様子を初芽はジッと見つめている。
「貴方の唇にもついてるわよ」
そう言って指先で俺の唇を撫でてくる。
俺はその手首を手に取りその指先にキスして舐める。初芽は一緒ピクリと身体を震わせるが俺から目を逸らさない。
顔を近付けて軽くキスをしてから俺の唇を猫のようにペロリと舐める。そんなことされて平然といれるわけもない。
俺は初芽を抱き寄せキスをする。絡めた舌はいつもより甘く熱かった。
そういえばチョコには媚薬効果があり、口にしたらキスの四倍の興奮を人に与えると聞いた事がある。
だったらチョコを食べてキスしている今の二人の興奮はいつものキスの何倍増なのだろうか? と馬鹿な事を考える。
俺がいつも以上に興奮しているのは初芽から仕掛けてきたキスの所為か? チョコレート味のキスの所為? 部屋に漂う甘いアロマに酔ってのことか?
いや、相手が初芽だからだ。知的でセクシーな魅力的な恋人の所為。
俺のネクタイが抜き取られるのを感じながら、俺も初芽の洋服を脱がしていく。そしてそのままリビングで甘い夜を楽しんだ。
※ ※ ※
『スモークキャットは懐かない?』の少し前の時間の物語です
この時が一番二人が楽しかった時代かもしれません。
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