真夜中の黒猫

白い黒猫

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ボードゲーム

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 この話をすると良くない事が起こるというので、今日まで人前で語るのを避けきたけどそれを今日話そうと思う。
 俺が小学校五年生の時の夏休み、田舎の祖母の家に遊びに行った。
  その時集まったのは兄と従兄弟のコウちゃんとシンちゃんの四人。
 毎日森にカブトムシを取りにいったり海で一日中泳いで遊んだりと、夏を満喫していた。
 そんなある日の夕方、知らないオジサンが俺達を呼び止めてきた。
 オジサンは『このゲーム、君達にあげる』と手にもっていた箱を手渡してくる。
 無表情で抑揚のない話し方をするそのオジサンの様子が少し気持ち悪かった。
 しかも見知らぬ人から突然そんな事を言われ、どうしたらよいか分からず四人と顔を見合せ困っているうちにオジサンはどこかに消えていなくなっていた。
 そして手元に箱だけが残った。
 それは本当に古いボードゲームのようで箱も色あせている。
 元々なのか褪せたせいだからなのか顔色の悪い人がズラー並んでいるイラストに赤黒い【臨死体験】という文字のあるパッケージで何とも気持ち悪い。

 気味が悪かったけど、ただ古ぼけたボードゲームを貰っただけという状況なので、そこまで深刻に思う事もしなかった。
 祖母の家でそれがどういうゲームなのか箱を開けてみてみる。そのゲームは古い町並みの中、探索しながらお寺を目指すという双六。
 途中にある赤いマスに止まるとカードを引く。そのカードは【死者カード】という名前で、その場所で誰がどういう死に方をしたかを死者自身の証言という形で書かれている。
 引いた人は感情を込めてその言葉を読みあげなければならない。
 さらにそのカードにはその人物がどれくらい苦しんで死んだかという苦痛が数値で示されている。
 ゴールにつくまでその数値の合計が四十二以上になったらその人は【死に】という事で死んでしまう。そのままゲームを続けられなくなるというモノ。
 苦痛を溜め込まないでゴールであるお寺に誰かが辿りついたら俺達の勝ち、誰か一人でも死なせてしまったら俺達の負け。
 そんな単純なルールだった。

 意外と面白そうに思えた。雰囲気を出して楽しむ為に夜中まで待って、【臨死体験】というゲームをスタートさせた。
 最初に赤いマスに止まったのはシンちゃんで、病気でだんだん衰弱して亡くなってしまった少女の証言を読み上げていた。
 笑いをこらえているからなのか声が変に震える。それも面白くて皆でクスクス笑ってしまう。
 シンちゃんが読み上げた後、少し首を傾げていたのも俺は気にしないでサイコロ振った。
 そのあとコウちゃんが赤いマスに止まり、酔った父親の暴力によって死んでいった男の子の証言を読みあげた。
 あまりにも雰囲気出しすぎて演技しながら読み上げたせいかコウちゃんは読み終わりゲホゲホと咳き込み、それがまた皆の笑いを誘い……そんな感じで楽しく遊んでいた。
 そして俺も赤いマスに止まり、梁にロープをかけ首つり自殺をした女の証言を読み上げることになった。
 その時なんか妙な感覚を覚える。カードを手にとり読み上げていると耳元で女の人の声がする。
 その声は俺が今読んでいるカードの内容とまったく同じ言葉を囁やいてくる。
 読み進めるにつれ首に何かが巻き付いているかのように苦しくなった。
 読み終わったらその声も聞こえなくなり、息苦しさもなくなったので、気のせいかと思いそのまま遊び続けた。

 サイコロを振り遊んでいるうちに、コウちゃんは八枚、シンちゃんは五枚、兄は六枚、俺は四枚と手元の死者カードが増えていく。

 コウちゃんが赤いマスに止まり死者カードを引く事になる。
 もうコウちゃんの苦痛の合計は四十一。コレで確実に脱落するという状況。
 コウちゃんは溜息をつきながらカードを引き、野犬に身体中噛まれ死んだ男の証言を読みあげる。
 そのカードを読み終わった途端にコウちゃんは呻き声をあげ倒れ、苦しそうに転げ回る。いきなりの事態に動揺してコウちゃんに泣きながら名前を呼んで抱き付くシンちゃん。
 俺は祖母に助けを求めようと慌てて襖の方へ走りだしたが、何かにぶつかり跳ね返される。

 背後から兄の悲鳴を聞きながら俺はぶつかったモノを見上げギョっとした。
 知らない人がそこに立っていたから。しかもその男はむやみに背が高くて天井に頭がつかえそうなくらい馬鹿でかい。
 その顔には表情がない。ぶつかった俺の事なんて気にもしていないようでジーと苦しんでいるコウちゃんをただ見つめているだけ。

 悲鳴を上げ続けている兄とは逆に、俺は逆に恐怖で声も出ずにその男を見続けるしかなかった。男が突然ニヤリと笑う。それまで感情というものがなかった顔が、途端に禍々しいものになる。
 すると部屋というか空間がいきなり黒く染まる。そのまま俺達は気を失ってしまった。

 次の日の朝眩しい太陽の光と鳥の声で目を覚ます。

 皆同じ記憶があるので夢ではないし、昨日遊んだままの状態でボードゲームは部屋にある。
 でもどこまでが夢でどこまでが現実か分からない。昨日部屋にいた男は何者だったのか分からないけれど、コウちゃんも元気に戻ったので気にしないことにした。
 単なる気のせいで庭の木の影が襖に映り人のように見えただけだろうと無理矢理結論をつけて、ゲームをした夜の事はもう話す事は止めることにした。

 夏休みも終わり、俺達はそれぞれの家に帰り退屈な日々を過ごす。
 新学期が始まり少し経ったとき、コウちゃんが亡くなったという連絡がきた。
 理由は分からない。ただごとでない状態で亡くなったとかで棺も閉じられたままでコウちゃんの顔を見る事も出来なかったし、兄弟だから知っている筈のシンちゃんも何も教えてくれなかったから。
 どういう死に方だったか未だに謎。コウちゃんが亡くなったのは、ゲームで遊んでから四十二日後だったので、ああそう言う事なのだろうと何となく思った。


 次の夏休み、コウちゃんを除く三人で再び祖母の家を訪れた。押し入れにしまっておいたあのボードゲームを処分する為に。
 夜こっそりと三人で海に行き焚火を囲みあの箱を取り出す。
 まず一番上にあったボードを燃やし次にカードをくべていく。
 すると死者カード一枚一枚からおびただしい数の人魂が宙を舞い空へと登っていった。俺達は何も言葉を交わさず、ただ空へ登っていくぼんやりとしたその光を静かに見つめつづけた。

 ん? なんでその話を今日皆に話をする事にしたのかって?
 実はこの話には少し続きがあって、コウちゃんの死から四十二週後、またあのオジサンがやってきた。シンちゃんの所に。

 『今日から四十二日以内あのボードゲームをやらないと三人共死んじゃうよ。だからまたこのゲーム持ってきてあげた』
 男はそう言ってきたらしい。

 だから俺達は三人で集まって再びこのゲームで遊んだ。そしてその四十二日後に兄が死んだ。
 さらに次の年にも二人で遊んで、シンちゃんが死んでしまった。
 で、今年……このボードゲームは一人じゃ遊ぶことできないだろ?

 だから今日ここに皆と遊ぶ為に持ってきたんだ。

 えっ遊びたくないって? でもねこのゲームの事、纏わる話を聞いた時からもう遊びはスタートしていたんだ。
 つまり君たちはもう参加している。遊ばないと死んじゃうよ。だからやるしかない!
 そんな怯えないでよ、苦痛ポイントを四十二貯めなければ死なないし、誰かがゴールしたらそれで終わり! 簡単なゲームだよ。

 さあ、遊ぼう。


 ※   ※   ※

 コチラの作品、【∞怪談】というカードゲームで遊んでいる時に作った怪談を膨らませて書いています。

 私がひいた怪談カードから

【この話をするとよくないことが起きるというので、今日まで人前で語るのを避けてきました】

【知らないおじさん】

【臨死体験】

【ボードゲーム】

【むやみに背が高くて、天井に頭がつかえそうなくらいだ】

【おびただしい数の人魂】

 という言葉を選んで作り上げたモノです。コチラで掲載する旨はゲームの作者の方から許可を頂いております。
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