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まだまだ相方募集中! ~大人な恋の始まり~
不快な空間
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東京で生活しているから仕方がないとは思うものの、毎日のこの満員電車にはウンザリとする。
冬は誰もがモコモコと着膨れている。その分電車内は余計に込み合いこのミッシリした世界が何とも苦しい。しかも近くの女の子がこんなに混んでいるのにやたら身動ぎコチラに移動してきてそれがウザったい。
近くの男性がずっとスマフォで、ゲームをしていてその音が小さく響いて気に障る。またこんな狭いのに参考書を必至で読んでいるやつもいて邪魔で堪らない。俺は百六十センチチョットという身長の為、顔の所に本を突きつけられる事が嫌なのだ。小さく生まれて小さく育った自分が恨めしく、人にスッポリ埋没してしまう自分も哀しい。酸素の少ない水槽にいる金魚のように上を向いて口をパクパク開けてしまいそうになる。
上をみると『君に想いの分だけキスしてあげる』文字が目に入る。それは最近売り出された二つのコンビニスィーツの車内吊り広告。
コチラは以前初恋の思い出を世間に晒すというド恥ずかしい目にあったあれと同じお菓子。『初恋ショコラ』のバレンタインバージョンだ。
『君想いショコラ』というネーミングとなっている。過去の恥ずかしい体験を思い出しさらに気分はブルーになり視線を下げる。
相変わらずコチラに身体を寄せてくる女の子に少しムカつく。睨もうとその顔を見るとその子は唇を噛みしめ泣きそうな顔をしていた。年は二十代半ばくらい?
ロングヘアーで大人しそうな雰囲気の女性。その子は顔を赤くして耐えるように震えている。大人と言って良い年齢の人間が、こんな公衆の面前でそんな表情をしているなんて普通ではない。そして俺と目があった瞬間にすがるような表情をしてきた。
その子の後ろで、ヘラヘラというかニヤニヤと何とも気持ち悪い笑顔で女性を見ている中年男性。その瞬間に何が起こっているのか把握した。
「おい! オッサン! 何してんだよ!」
女性を引き寄せ、後ろの中年男性の胸倉を掴み叫んでいた。電車がホームに着いたので、回りの白い目を浴びながらも言い訳する男性を胸倉掴んだまま引きずり降ろす。
被害者と共に男を駅員に突き出した。女性は怖かった事と、ホッとしたのだろう。泣いて状況をうまく説明出来ない。だから代わりに俺が駅員に痴漢行為があった事を説明する。
中年の男は『誤解だ!』『こんな事困る』といった事を必死で言っていた。警察官がやってきたらさらに慌て『俺には家族がいる! 子供もいるんだ! 助けてくれ!』と被害者に訴え始める始末。
「誤解でも、誤認でもないよな! 家族がいながらアンタは最低な事をしでかしたんだよ!
彼女を引き離したとき、誰でもないアンタの手がこの子のスカートから出てきていた。ちゃんと見たんだぞ!」
頭に血が登りながらも、そこは確認した。間違えた奴を突き出す事はしたくない。それに男の両脇にいた一人は受験生なのかずっと片手は吊り輪で、片手は参考書を読んでいた。もう一人はずっとスマフォでゲームをして両手がふさがっていたので彼らがしたことは有り得ない。
被害者だけでなく目撃者も揃っているという事で男の容疑は確実のモノとなったようだ。
『こんな筈は……』と呟きながら項垂れ震える男。そんな男を無視して警察から求められた書類に連絡先を記入して俺の役割は終わる。そして警察に男は連行されていった。ふと気が付くと時間がヤバい事になっている。会社に電話で連絡入れてから、その女性と駅員に挨拶だけして会社へと急ぐことにした。
冬は誰もがモコモコと着膨れている。その分電車内は余計に込み合いこのミッシリした世界が何とも苦しい。しかも近くの女の子がこんなに混んでいるのにやたら身動ぎコチラに移動してきてそれがウザったい。
近くの男性がずっとスマフォで、ゲームをしていてその音が小さく響いて気に障る。またこんな狭いのに参考書を必至で読んでいるやつもいて邪魔で堪らない。俺は百六十センチチョットという身長の為、顔の所に本を突きつけられる事が嫌なのだ。小さく生まれて小さく育った自分が恨めしく、人にスッポリ埋没してしまう自分も哀しい。酸素の少ない水槽にいる金魚のように上を向いて口をパクパク開けてしまいそうになる。
上をみると『君に想いの分だけキスしてあげる』文字が目に入る。それは最近売り出された二つのコンビニスィーツの車内吊り広告。
コチラは以前初恋の思い出を世間に晒すというド恥ずかしい目にあったあれと同じお菓子。『初恋ショコラ』のバレンタインバージョンだ。
『君想いショコラ』というネーミングとなっている。過去の恥ずかしい体験を思い出しさらに気分はブルーになり視線を下げる。
相変わらずコチラに身体を寄せてくる女の子に少しムカつく。睨もうとその顔を見るとその子は唇を噛みしめ泣きそうな顔をしていた。年は二十代半ばくらい?
ロングヘアーで大人しそうな雰囲気の女性。その子は顔を赤くして耐えるように震えている。大人と言って良い年齢の人間が、こんな公衆の面前でそんな表情をしているなんて普通ではない。そして俺と目があった瞬間にすがるような表情をしてきた。
その子の後ろで、ヘラヘラというかニヤニヤと何とも気持ち悪い笑顔で女性を見ている中年男性。その瞬間に何が起こっているのか把握した。
「おい! オッサン! 何してんだよ!」
女性を引き寄せ、後ろの中年男性の胸倉を掴み叫んでいた。電車がホームに着いたので、回りの白い目を浴びながらも言い訳する男性を胸倉掴んだまま引きずり降ろす。
被害者と共に男を駅員に突き出した。女性は怖かった事と、ホッとしたのだろう。泣いて状況をうまく説明出来ない。だから代わりに俺が駅員に痴漢行為があった事を説明する。
中年の男は『誤解だ!』『こんな事困る』といった事を必死で言っていた。警察官がやってきたらさらに慌て『俺には家族がいる! 子供もいるんだ! 助けてくれ!』と被害者に訴え始める始末。
「誤解でも、誤認でもないよな! 家族がいながらアンタは最低な事をしでかしたんだよ!
彼女を引き離したとき、誰でもないアンタの手がこの子のスカートから出てきていた。ちゃんと見たんだぞ!」
頭に血が登りながらも、そこは確認した。間違えた奴を突き出す事はしたくない。それに男の両脇にいた一人は受験生なのかずっと片手は吊り輪で、片手は参考書を読んでいた。もう一人はずっとスマフォでゲームをして両手がふさがっていたので彼らがしたことは有り得ない。
被害者だけでなく目撃者も揃っているという事で男の容疑は確実のモノとなったようだ。
『こんな筈は……』と呟きながら項垂れ震える男。そんな男を無視して警察から求められた書類に連絡先を記入して俺の役割は終わる。そして警察に男は連行されていった。ふと気が付くと時間がヤバい事になっている。会社に電話で連絡入れてから、その女性と駅員に挨拶だけして会社へと急ぐことにした。
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