『застежка-молния。』

日向理

文字の大きさ
上 下
58 / 69

Episode.58

しおりを挟む


               「…はい、麦茶です」

「ありがとぅ」

   「・・・」


  「なんだかとてもお辛そうに見えるので」

     「また日を改めて、でも」

   「いや」

   「たぶん、これ」


   「今日話さないと…


    私の方が


    駄目になっちゃいそう
    なので」

       「そう、なの?」

  「なにかお辛い事を思い出したり、とか」

   「いや」

   「えっと」

   「思い出した、んではなくって

    …
  
    さっき、

    あって」


         「?」


       「『さっき』?」

   「えっと…」


   「金山さんを苦しめているもの、

    さっき、私

    判っちゃって」



                     「え?」


   「金山さんの苦しみを、

    私が無くせるってのも

「え」


    …

    さっき、知って」


           「?」

   「・・・」

   ごくごくっ!


   「…ふぅ」


   「私、

    お付き合いしてると、


    さっきまで…


    思ってた人がいて」





   「今私、

    一人暮らしをしてるんですけど」


   「その人、

    よくウチに泊まりにきたりもして」



   「でも最近、

    彼の本音を知る機会があって」



   「どうやら彼、

    他にもそういう人がいるってのが


    わかっ、


    ちゃって…」



   「でも私、


    その先を知るのが怖くなっちゃって…


    その先からずっと逃げてたん、ですが」




   「・・・」





   「さっき金山さんのお宅で、

    お話を伺おうと思ったときに


    見えちゃったんです」



   「玄関先に飾ってあった写真に、


    彼が写ってるのを」



          え!?×3
しおりを挟む

処理中です...