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第05話 親の公認
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「ただいまー」
「あ、お兄ちゃんおかえりー! ね、ね、ステータスどうだった!? スキル何百個あった!?」
今日ステータスを獲得できることは家族も知ってるため、帰ってくるなり茜が犬のように飛びつきながら結果を聞いてくる。
「何百個って……。そんなにあったら今頃IDOに連行されてモルモットだ。茜、親父と母さんは──」
「父はいるぞー」
「私もいるわよー」
二人の声がダイニングの方から聞こえる。どうやら二人とも仕事を終えて帰ってきていたようだ。ちなみに我が家は共働き。親父は役所勤めで母さんは看護師。
「丁度良いな。みんなに話がある」
俺は腰に巻き付いた妹をそのまま引きずりながらダイニングに入り、真剣な表情でそう言う。
「あぁ、分かってる、分かってる。皆まで言うな。お前のステータスがぶっ飛んでてチートスキルが山程あって、どこかエリートが集まる場所へ移されるんだろ? 流石俺の息子だ」
「あら、そうなの? タツミ良かったじゃない。でもそれならご馳走を用意しなきゃ……って、あら、ビックリ。偶然にもご馳走を山のように作ったんだった。ホホホホ」
親父はいつものことだが、母さんまで変な小芝居を入れてはしゃいでいる。テーブルに視線を向ければ、確かに母さんの言葉通り隙間が見えない位にご馳走が用意されていた。
「冷静に聞いてくれ。学校を退学することにした」
教官は気を遣って卒業なんて言葉にしてくれたが、結局は自主退学だ。
「ハハハ、そうなのか、それは災難な人もいたもんだ。で、誰が辞めるんだ? 仲が良かった奴か?」
「あら、お友達がやめちゃったの?」
「え、お兄ちゃん退学しちゃったの?」
現実を受け止められたのは五十二の洋でもなく、四十七の美佐子でもなく、腰に巻き付いている十二の茜だった。
「あぁ、そうだ。今日、俺は学校を退学してきた」
「「…………」」
両親はポカーンと口を開け、フリーズしたままだ。理解が追い付かないのだろう。
「えぇー、なんで? お兄ちゃんすっごい強いし、頑張ってきたし、成績も良かったんでしょー?」
「まぁ、俺なりに頑張ってきたし、成績も悪くはなかった。とにかくその原因を説明するから、まずはこれを見てくれ。ステータスオープン」
そして俺はレベル3になっても何も変わっていない最底辺のステータスを家族に見せる。
「「……え?」」
「お兄ちゃん、弱い……?」
「あぁ、そうだ。激弱だな。レベル3になっても何一つステータスが成長しない。スキルポイントも貰えない。バグみたいな状態だ。しかも厄介なことに俺はパーティを組むと経験値が貰えない。親父と母さんもこれで理解できた?」
コクコク。いまだ言葉の出ない両親は目を見開き、やはり口を開けたまま頷くだけだ。
「えぇと、つまりお兄ちゃんはレベルアップするにはソロでダンジョンに潜らなきゃいけないのに、レベルアップしても強くなれないし、スキルも覚えられないってこと?」
「スゴイな、茜。まさにその通りだ」
「えへへへ~」
状況を完璧に理解している茜の頭を撫でる。両親の方をチラリと見れば──。
「あ、いや、まぁそういうことならしょうがないじゃないか、気にするな! うんうん、父さんは最初からモーラーになるのは反対だったんだ! 世の中安全な仕事は沢山ある! 世界中がモーラーしかいなかったら弁当一つ食えなくなってしまうからなっ!」
「そうね、まぁまだ十八なんだからいくらでもやりたいことは見つかるわよ」
あからさまに気遣われた。まぁ息子の挫折なのだからそんな空気にもなるだろう。だが、両親は少しだけ勘違いしている。
「いや、話しには続きがある。実は俺はこのステータスボードには表示されない、いわば裏スキルみたいなものを持ってたんだ」
「えぇ、お兄ちゃんスゴイっ! どんなの、どんなの?」
茜の素直な反応に苦笑してしまう。
「と言っても、その真価は今のところ分からない。レベル100になってみないと分からないんだ」
「レベル100ってお前……。レベルキャップがあるだろ? 確か……ほれ、その、あれだ」
「E1ダンジョンボスのパーティ撃破かE3ダンジョンボスのソロ撃破な」
「それ、それ。いやお父さんだってここまで出かけていたんだぞ?」
なぜ、この親父は息子と張り合おうとするのだ……。
「茜分かるよー。お兄ちゃんはソロでやるつもりでしょー」
「正解。足手まといで寄生してレベルキャップ解放なんかゴメンだからな。このステータスでソロ撃破すれば俺はその先も自信を持てる気がするんだ」
E3ダンジョンのボスはパーティー推奨レベルで50。ソロでの推奨レベルは85だ。それもまともな初期ステータスと、まともな成長率、更にまともなスキルポイントがあっての話。
「つまり話しってのは、そういうこと。親父と母さんに相談もせず学校を辞めちゃったことは本当にごめん。明日からはフリーのダンジョンモーラーになりたい。もちろん無茶なのは百も承知だ。だけどできるところまでは挑戦したい。この裏スキルのせいでこんなステータスになってしまって、それで諦めるってのは後悔すると思うんだ。それこそモンスターに家族を傷つけられたりなんかしたらな」
学校に入れてもらっておいて、勝手に辞めて、さらに自分勝手なことを言ってる自覚はある。両親が少しでも反対するならこの話は忘れるつもりだった。
「なるほどね。いいじゃない。私は賛成よ。ここまできたならタツミのやりたいようにやりなさい。それにきっとタツミは特別なのよ」
「茜もさんせー! お兄ちゃん応援団の団長やる!」
「なにぃ? 茜、その応援団にパパも入れてくれ。副団長を──」
「あら、残念、タツミ応援団の副団長は私ですー。アナタは雑用係よ。さっ、飲み物を出してちょうだい」
「うぅー、シクシク。たっくぅん、ママがいじめるよぅ。あ、もちろんパパもたっくんの意思を尊重するよ?」
俺のわがままを家族は応援してくれた。本当にかけがえのない家族だ。俺はこの家族をこの世界で守っていきたい。改めてそう思った。
「みんなありがとう……。あと親父が飲み物用意しないなら俺がやるよ──」
「バッ、バカ野郎!! 父さんの仕事を取るんじゃない!! 辰巳は座っていろ!! 我が家の雑用係はこの俺だ!!」
こんなめんどくさい父親だけど、守ろう、茜と母さんの次に。そして結局親父は、嬉しそうに用意を始めた。
「ぃよーし、では、ちと早くなったが辰巳のフリーダンジョンモーラー就職祝いに乾杯っ!」
「「かんぱーい!」」
「親父、母さん、茜……ありがとう」
こうして俺は無事家族公認のもと、フリーのダンジョンモーラーとなった。
「あ、お兄ちゃんおかえりー! ね、ね、ステータスどうだった!? スキル何百個あった!?」
今日ステータスを獲得できることは家族も知ってるため、帰ってくるなり茜が犬のように飛びつきながら結果を聞いてくる。
「何百個って……。そんなにあったら今頃IDOに連行されてモルモットだ。茜、親父と母さんは──」
「父はいるぞー」
「私もいるわよー」
二人の声がダイニングの方から聞こえる。どうやら二人とも仕事を終えて帰ってきていたようだ。ちなみに我が家は共働き。親父は役所勤めで母さんは看護師。
「丁度良いな。みんなに話がある」
俺は腰に巻き付いた妹をそのまま引きずりながらダイニングに入り、真剣な表情でそう言う。
「あぁ、分かってる、分かってる。皆まで言うな。お前のステータスがぶっ飛んでてチートスキルが山程あって、どこかエリートが集まる場所へ移されるんだろ? 流石俺の息子だ」
「あら、そうなの? タツミ良かったじゃない。でもそれならご馳走を用意しなきゃ……って、あら、ビックリ。偶然にもご馳走を山のように作ったんだった。ホホホホ」
親父はいつものことだが、母さんまで変な小芝居を入れてはしゃいでいる。テーブルに視線を向ければ、確かに母さんの言葉通り隙間が見えない位にご馳走が用意されていた。
「冷静に聞いてくれ。学校を退学することにした」
教官は気を遣って卒業なんて言葉にしてくれたが、結局は自主退学だ。
「ハハハ、そうなのか、それは災難な人もいたもんだ。で、誰が辞めるんだ? 仲が良かった奴か?」
「あら、お友達がやめちゃったの?」
「え、お兄ちゃん退学しちゃったの?」
現実を受け止められたのは五十二の洋でもなく、四十七の美佐子でもなく、腰に巻き付いている十二の茜だった。
「あぁ、そうだ。今日、俺は学校を退学してきた」
「「…………」」
両親はポカーンと口を開け、フリーズしたままだ。理解が追い付かないのだろう。
「えぇー、なんで? お兄ちゃんすっごい強いし、頑張ってきたし、成績も良かったんでしょー?」
「まぁ、俺なりに頑張ってきたし、成績も悪くはなかった。とにかくその原因を説明するから、まずはこれを見てくれ。ステータスオープン」
そして俺はレベル3になっても何も変わっていない最底辺のステータスを家族に見せる。
「「……え?」」
「お兄ちゃん、弱い……?」
「あぁ、そうだ。激弱だな。レベル3になっても何一つステータスが成長しない。スキルポイントも貰えない。バグみたいな状態だ。しかも厄介なことに俺はパーティを組むと経験値が貰えない。親父と母さんもこれで理解できた?」
コクコク。いまだ言葉の出ない両親は目を見開き、やはり口を開けたまま頷くだけだ。
「えぇと、つまりお兄ちゃんはレベルアップするにはソロでダンジョンに潜らなきゃいけないのに、レベルアップしても強くなれないし、スキルも覚えられないってこと?」
「スゴイな、茜。まさにその通りだ」
「えへへへ~」
状況を完璧に理解している茜の頭を撫でる。両親の方をチラリと見れば──。
「あ、いや、まぁそういうことならしょうがないじゃないか、気にするな! うんうん、父さんは最初からモーラーになるのは反対だったんだ! 世の中安全な仕事は沢山ある! 世界中がモーラーしかいなかったら弁当一つ食えなくなってしまうからなっ!」
「そうね、まぁまだ十八なんだからいくらでもやりたいことは見つかるわよ」
あからさまに気遣われた。まぁ息子の挫折なのだからそんな空気にもなるだろう。だが、両親は少しだけ勘違いしている。
「いや、話しには続きがある。実は俺はこのステータスボードには表示されない、いわば裏スキルみたいなものを持ってたんだ」
「えぇ、お兄ちゃんスゴイっ! どんなの、どんなの?」
茜の素直な反応に苦笑してしまう。
「と言っても、その真価は今のところ分からない。レベル100になってみないと分からないんだ」
「レベル100ってお前……。レベルキャップがあるだろ? 確か……ほれ、その、あれだ」
「E1ダンジョンボスのパーティ撃破かE3ダンジョンボスのソロ撃破な」
「それ、それ。いやお父さんだってここまで出かけていたんだぞ?」
なぜ、この親父は息子と張り合おうとするのだ……。
「茜分かるよー。お兄ちゃんはソロでやるつもりでしょー」
「正解。足手まといで寄生してレベルキャップ解放なんかゴメンだからな。このステータスでソロ撃破すれば俺はその先も自信を持てる気がするんだ」
E3ダンジョンのボスはパーティー推奨レベルで50。ソロでの推奨レベルは85だ。それもまともな初期ステータスと、まともな成長率、更にまともなスキルポイントがあっての話。
「つまり話しってのは、そういうこと。親父と母さんに相談もせず学校を辞めちゃったことは本当にごめん。明日からはフリーのダンジョンモーラーになりたい。もちろん無茶なのは百も承知だ。だけどできるところまでは挑戦したい。この裏スキルのせいでこんなステータスになってしまって、それで諦めるってのは後悔すると思うんだ。それこそモンスターに家族を傷つけられたりなんかしたらな」
学校に入れてもらっておいて、勝手に辞めて、さらに自分勝手なことを言ってる自覚はある。両親が少しでも反対するならこの話は忘れるつもりだった。
「なるほどね。いいじゃない。私は賛成よ。ここまできたならタツミのやりたいようにやりなさい。それにきっとタツミは特別なのよ」
「茜もさんせー! お兄ちゃん応援団の団長やる!」
「なにぃ? 茜、その応援団にパパも入れてくれ。副団長を──」
「あら、残念、タツミ応援団の副団長は私ですー。アナタは雑用係よ。さっ、飲み物を出してちょうだい」
「うぅー、シクシク。たっくぅん、ママがいじめるよぅ。あ、もちろんパパもたっくんの意思を尊重するよ?」
俺のわがままを家族は応援してくれた。本当にかけがえのない家族だ。俺はこの家族をこの世界で守っていきたい。改めてそう思った。
「みんなありがとう……。あと親父が飲み物用意しないなら俺がやるよ──」
「バッ、バカ野郎!! 父さんの仕事を取るんじゃない!! 辰巳は座っていろ!! 我が家の雑用係はこの俺だ!!」
こんなめんどくさい父親だけど、守ろう、茜と母さんの次に。そして結局親父は、嬉しそうに用意を始めた。
「ぃよーし、では、ちと早くなったが辰巳のフリーダンジョンモーラー就職祝いに乾杯っ!」
「「かんぱーい!」」
「親父、母さん、茜……ありがとう」
こうして俺は無事家族公認のもと、フリーのダンジョンモーラーとなった。
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