カオスシンガース

あさきりゆうた

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無謀なる挑戦状!!

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  岸或斗の発言に注目が集まる。

「無料の出張コンサートを行いましょう!」

 無料と聞いて、少し気持ちが楽になった。お金を取るコンサートであれば、お金をとるだけの歌でなければいけないというプレッシャーがあると思う。今のカオスシンガースなら無料からコンサートを開始しても良いかと思った。

「コンサートだしよ、金とった方がいいんじゃねえか?」

 左京がもっともな意見を出した。或斗はいかなる意見を返すのだろうか?

「今回のコンサートのメインの目的はお金の収集ではない。我がカオスシンガースの宣伝のためよ!」

 宣伝とはちょっと予想していなかった言葉が出てきた。

「……どうして宣伝で……無料コンサートなんだ?」

 馬上がメンバーの誰しもが思った疑問を言う。

「そうね、皆、カオスシンガースを宣伝する方法を適当に言ってみてよ」

 そう言われて、皆数秒ほど考えて答えを出していく。先に自分が発言した。

「やっぱ、まずはTVかな? 宣伝の力は一番でかいと思う」

「セーム君、TVとかで宣伝すると何十万とお金がかかるの。学生にはとても払えない金額、非現実的だわ」

 適当に発言しなきゃ良かったと後悔した。

「……SNSはどうだ……ほぼ無料で宣伝できる……」

 馬上から出た意見は良いと思った。或斗も良しというのでは?

「無料なのは悪くない。でも無名の合唱団の情報をSNSで見たがる人なんて見たがる人なんていると思う? 私なら見ないわね」

「……確かに」

 馬上も意見も駄目か。

「じゃあ動画もUPしようよ! 最近YOU TUBERなんてのも流行っているからいけるよ! 私顔に自信あるからいけるよ!」

 次に発言したのは聖だった。これは彼女らしい意見である。

「YOU TUBER見る人が合唱を聴くと思う? ネットが好きな層にもいるかもしれないけど、全体から見ればわずかな比率。私達がよほどの知名人じゃない限り、注目させるのは無理と思うわ」

 聖はここまで言われてしょんぼりとした。

「それならビラくばりだ! 配って配って配りまくる!」

 左京らしい体力任せの案が出てきた。

「ビラくばりは、印刷代も安くはないし、時間もかなり要する。あとビラくばっても、曲を聴きに来ると思う? 皆がこの曲良いな、聴きたいなと思う時って、TVやラジオで曲を実際に聴いた時でしょ?」

 左京も納得し、言葉がなくなった。
 ここまで皆の宣伝案が或斗によって、正論でことごとく却下された。宣伝とは難しいものだとメンバー一同が改めて思った事だろう。

「つまり、或斗としては無料の出張コンサートが宣伝方法として良いと言いたいんだな?」

「察しが良いわねセーム君、それがどうしてか分かる?」

「う~ん、やっぱりタダだと聴いてもいいかな~って気持ちになるかな」

「それよ! まず聴いて貰うというハードルを越えるのが大事なのよ! 歌の良さは実際に聴かなければ分からない!」

「……試食と同じことか……」

「そうよ馬上君、試食も食べて貰って良さを分かって貰ってから買わせる手法。誰かに美味しい美味しいと言わせるよりも説得力のある方法でしょ」

 ここまで説明したら誰もが無料こそが宣伝の良い方法だと納得してしまった。

「ちょっと待った或斗! 無料でもよ、あたしらみてえな無名の合唱団のコンサートに来たがる輩はいねえと思うぞ! 実績がないのが痛すぎるんだ! それにしょば代もかかる! 下手したら赤字になるだけで終わるかもしれねえぞ!」

「恋奈ちゃんの言う通りよ。でもその問題点を全て解決できるのが張のコンサートなのよ。そうね、試しに合唱祭を行ったアトリオの料金表を調べてみて、ネットで見れたはずよ」

 皆がスマホでアトリオの料金表のページを見た。時間帯によって使用料がいくらになるか書かれているが、数万円単位の価格である。これは学生には高い。

「そう、会場を抑えるにしても高いのよ! だから私達が客の元まで行けば、相手が場所を用意してくれるし、場所代もタダになる。もちろん出張ということで一定人数の人が聴く事は保証されている!」

「ってことは、人の多い施設を狙うのがいいよね、小学校とか中学校とかがいいんじゃないかな?」

「アデルちゃんの言う通り。でも、子供だと後々カオスシンガースにお金を落としてくれるとは考えにくい。だから私が狙うのは老人ホームよ!」

「……合唱はお年寄りがやるイメージが強い」

「そうなのよ馬上君、県内だと高齢者で合唱をやっている人が多い。受けは良いはずよ。それにお年寄り達はお話好きが多い。口コミでカオスシンガースの良さを知らせてくれる可能性も高い」

「或斗、こんなのはどうだ? ボランティアコンサートと称して開催すれば、カオスシンガースのイメージアップにもつながっぞ!」

「ナイスアイディアよ恋奈ちゃん!」

「うちのじいちゃんのゼネコンってさ、イメージが悪いからよ、近隣のゴミ拾いとかでイメージ良くする努力してんだよ」

「そう、イメージを良くするっていうのもお客を増やす要因になるものよ! その逆もしかりよ!」

「ちなみに或斗、どこの老人ホームへ行くかとかは決めているか?」

「もちろん決めているわ。この前の音楽講座の時に世間話ついでにカオスシンガースの宣伝をおじさま、おばさまにしていたのよ。セームくんの歌のおかげもあって、コンサートあったら聴いてみたいという事に」

 或斗の奴、音楽講座を自分のトラウマ解消のためだけでなく、宣伝の事まで考えていたとは……なんだか利用された感じだな。しかし、そこまで計算していたとは、経営者として優秀だ。或斗は将来カリスマ社長にでもなるんじゃないかな。

「……お年寄りが好みそうな曲を……練習する必要があるかと思う」

「そうなのよ、今のとこ使えそうなのはセーム君が歌った『母』のソロぐらいなのよね」

「そういえば自分にソロをやれって話出てたな。でも流石に自分の歌一曲だけでコンサートは無茶だわな」

「というわけで今日より、高齢者向けの歌を練習していくわ! まずはこれかしら!」

 といって或斗が曲を次々と提案していった。他のメンバーもこんな曲はどうだろうかと提案し、後で楽譜を探す事になった。この間、自分も考えていたことがあり、提案らしい提案を一切していなかった。

「セーム君、さっきから喋ってないわね」

「ああ、すまん」

「もしかして、何か言いたいことがあるけど、言いづらいとか、そんなところかな?」

 どうやら自分の気持ちを隠しきるのは無理のようだ。だが、これは経験上分かっていたことではある。

「遠慮無く言ってみてよ」

「その、遠慮した方がいい事なんだか……」

「そう言われると気になるじゃない。怒らないから言いなさい」

 言いづらいことではある。だけど、勇気を出して言った。

「お前にも……ソロをやって欲しいんだ……もちろん自分もやるさ」

 いつもテンポ良く会話する或斗が少しためてから話し始めた。

「セーム君……それがどういう事を意味するか分かっているのかしら?」

「あぁ、分かっている」

 自分は今本当にとんでもない事を言っている。そのせいで場の空気が重くなった。

「どうしたの二人とも?」

「……聖、いい加減な気持ちで二人の会話に入らない方が良い……」

「セーム、あたしはお前のことを初めて見直したぜ」

 どうやら左京が自分が何を言いたいのか理解したようだ。彼女のようなタイプはこの手のことは好きそうだからな。

「お前が或斗とソロで勝負したいって気持ちは分かった! あたしも或斗とやりあいたいと思っているが、今回はお前の熱さに免じてタイマンでやりあえや!」

「えっ、セーム君がアルちゃんにソロをやって欲しいって、そういう意味だったの!?」

「確認するわよ。この勝負でソロの失敗以上のトラウマを作りかねない。そういう覚悟も持って私に勝負を挑んでいるのよね」

 ソロのトラウマを思いだし一瞬躊躇した。しかし、ここで引くのは自分のプライドが許せないと思った。

「宣戦布告だ! 老人ホームへの出張コンサート、或斗とソロで勝負だ!!」
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