ヤンデレなストーカー♂が異世界まで追いかけてきやがった!?

あさきりゆうた

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死ねば問題解決さ

 ここ数日、エルの襲撃が完全にない。理由は俺の策が功を奏したからだ。
 エルに童貞を奪われて以来、俺はこの世から消えたい気持ちになっていた。そこで思いついた、本当に消えてしまえば良いと。といっても本当に消えるわけではない。俺が死んだと嘘の情報を流せばエルの襲撃がなくなると考えたのだ。
 俺は街内のクエスト受付所にて、密かに俺が死んだ情報を流してくれるように依頼した。依頼人は素性を明かさなかったが、大人から子供まで噂を広めてくれた。
 現在俺は死亡中の立場であり変装している。目立つ行動は避けようと人の多い場所を避けていたが、少し気を抜いても大丈夫だろうと思い、、街の酒場で飲んでいた。

がらん

 店内に客が一人入ってきた。既に別の店で飲んできたのか足下がおぼつかない状態である。この手の酔っ払いが絡んでくるとやっかいだ。俺は極力店内で空気になるように心がけた。

「適当な蒸留酒をノーチェイサー」

 酔っ払いの声を聞いてもしやと思った。エルだったのだ。あいつがこの酒場に飲みに来るなんて思いもしなかった。もしや既に俺のことに気付いているのだろうか?

「お客さん、大分酔っていますね。何かあったんですか?」

 酒場のマスターが優しそうな表情でエルに声をかけた。

「私の大好きなタツヤさんが死んだですよ! 飲まずにはいられません!」

 おおっ、あいつは俺が死んだものと思っているのか。よしっ、上手くあいつを騙せているな。すぐにでもこの酒場を出て行きたいところだが、出て行くタイミングで俺に気付くとも考えられる。ここはしばらく空気の雰囲気で???んでいよう。

「分かりました。でもこの一杯だけにしてくださいね」

 マスターがそういって注文のお酒をエルに渡した。エルはそれをすぐに飲み干した。

「もう一杯! お金はたくさんあります!」

「申し訳ありませんが、お客様の体調が心配です。そろそろおやめになったほうが……」

 マスターも大変そうだな。助け船を出したい気分だが俺がここで出ると正体がばれそうだしなぁ……。

「ちょいとお兄さん、あっしらはタツヤという人の行方を知っているんですよ」

 え? なんかいかにも怪しそうな三人組がエルに声をかけているぞ。つうか俺の行方を知っているだってっ!? ばかっ! 俺がここにいるなんて絶対ばらすんじゃねえぞ! せっかく平穏な日々を取り戻せたというのに水の泡になるじゃねえか!!

「本当ですか! 生きているんですか!!」

「えぇ、ちょっとあっしらについてきて貰えませんか?」

 おや? あの三人組とエルは店の外へ行くようだな。ていうか、ついてこい? あいつら俺がここで???んでいると知って教えるってわけじゃないのか……分かった! エルがさっき金を持っているなんていったからきっとだましにきたんだな!! このまま放っておいてもいいかな……待てよ、エルが俺が生きていると騙されたらどう思うか……烈火の如く怒り狂い、あの怪しい三人組が命を落とすと考えられるな。あいつらが騙そうとしているから自業自得ではあるが……。

「マスター、お勘定頼みます」

「ありがとうございます。またのお越しを」

 遠目で様子だけ見よう。もし緊急事態になったら人を呼べば良い。俺は自給自足スキルの一部、モンスターにこっそり近づく時のテクニックを使いながら後をつけることにした。



 見失った。人気のない路地裏にあいつらが行ったのは分かったが、途中からどこへ行ったか分からなくなってしまった。探しても時間を無駄に浪費しそうだし、諦めて帰るとするかな。

ゴッ ゴッ

 どこからか鈍い音がする。これはもしかして打撃音か、何か生き物が叩かれているような音。嫌な予感がする。とりあえず音のする方へ行ってみるか。段々と鈍い音が大きくなり、人のしゃべり声も聞こえてきた。もう近くのようだな。

「へへっ、こいつはいいサンドバッグだ!」

「死ねばタツヤとかに会えるだろうよ!」

 予想外の光景があった。エルが亀状態で地面にはいつくばりながら蹴られているのだ。俺はてっきり全く真逆の事が起きているんじゃないかと思っていたんだが……。まぁいい。エルがあのリンチでこの世からいなくなればそれはそれで良い……いや、あいつが酷く酔っているにしてもそんじょそこいらのチンピラに負けるとは思えないな。もしかしてブラフ? わざとやられているふりをしているのか? 俺がこの場に来ると予想してこんな手の込んだ迫真の芝居をしているんじゃ……考えすぎかとも思うがエルならやりかねないし迷うところだ……。

「金を渡せばこれ以上はなんもしねえよ。素直にその金を渡しな!」


「駄目……少し心が荒れて無駄遣いしちゃったけど……タツヤさんのお墓を建てるために……とっておかなきゃいけないから……」

「だから! 死んだ奴のために金を使うより、生きている俺らに金を恵んだ方がよっぽど有効利用できるってもんだろうが!!」

がぁぁん

 重い蹴りがエルの頭に入り、失神した。
 なんだかよく分からない気持ちだが、俺は愛用の斧を持って飛び出していた。

ずがぁん

 斧の峰の方で俺はちんぴらの一人の頭を叩いた。すぐに地面にはいつくばり頭を両手でおさえる。

「ぐわぁ! 頭が!」

 間髪を入れずにもう二人のちんぴらにも、死なない程度に一撃を加えた。生命の危機を感じたのか、すぐにちんぴらは逃げ出した。

「タツヤさん?」

「人違いだ」

「相変わらず嘘が下手ですね……でも今回の嘘は少し上手かったですよ」
 
 ばれちゃったか……。つうかなんで俺はあの場面でエルを助けるような事をしたんだ!? まぁ俺は正義感はどちらかというと強い方だし、流石にこいつ相手でも傷ついた姿を見せられたら助けずにはいられない気持ちになっちゃったけど……あぁ自分の気持ちが分からねぇ!!

「ただの気紛れで助けに来ただけだ。お前なんか死んだ方が良いと心の底から思っている」

「動けないので……背負って貰えません?」

「自分で歩け、お前なら……」

 どうしよう、こいつを見捨てようかと思ったが、道ばたに捨てられた子犬の目で俺を見てくる。あぁもう! こういうのすげえ俺は弱いんだよな……。

「少し鍛えたくなった。お前の体重をトレーニングに使ってやる」

 俺はエルを背負った。普段のこいつなら俺にセクハラもしかねないが、今はその気力はないみたいだ。

「温かい……タツヤさんの匂いも良い……」

 エルは俺の背中でしばらくの間ぐっすりと眠った。俺はとりあえず近場の病院まで連れて行き、エルをベッドの上におろした。エルもこのタイミングで起きてきた。

「気になるんだが、お前はチート級の強さを散々俺に見せ付けてきたな。なんであんなチンピラごときにボコボコにされたんだ? 酔っているにしても、俺が死んだと信じて精神が病んでいたにしても、お前ならもう少し対応できただろう?」

「そういえば話していなかったですね……私の転生時の特典はですね……『タツヤさんのためなら何でもあり』という能力です」

「はっ?」

 こいつの言っていることがよく分からなかった。いや、多分言葉の通りなんだろうが、言葉の通りだと理解したくない自分がいる。

「あなたを守りたい……あなたに愛されたい……そういう思いを持っている時はいわゆるチート級の強さになります……今回はそんな気が一切起きない状況でしたから……」

 なるほど、これで今まで疑問に思っていた謎が解けた。俺がどんな手を使ってもこいつに襲われる理由はそういう転生特典を持っていたからか……つうことは俺はどうあがいてもこいつから逃げるのは無理じゃねえかっ!? 今回は俺が死んだと思い込ませるフェイントが効いたからしばらく逃げられただろうけど、こいつがその気になれば俺はどうあがいても絶望しかないんじゃ……。

「あなたがどんなことを思っているか容易に想像できますよ。私が回復したらまた襲いますから覚悟して下さいね」

「その時はまた今回みたいに対策するまでさ」

 俺はそう言って病院を後にした。
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