電脳恋愛のすゝめ

コトシナミノル

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第1話 恋した相手はバスターブレイダー

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 僕は今死にかけている。
 目の前には翼竜の姿をした巨大なモンスター。
 一時的に僕が身動きできないことを知っているのか、最後の一撃を焦らしているようにも見える。
 しかし、現実はいつだって無情だ。
 翼竜が僕に突進してきた。
 あと少し時間があれば逃げる時間ぐらいはあったかもしれないが、このままではギリギリ間に合わない。

「あーあ、今回はこれで終わりか……」

 ま、僕にしては頑張った方だろう……と諦めかけていたその時だった。

「え……?」

 さっきまで僕をペシャンコにしそうな勢いで突進を初めていた翼竜が、突如として動きを止める。そして

「rrrrrrrrrr……Ahhhhhhhhhh!!!!!!」

 完全に僕を無視する形で翼竜は背を向け、そこにいたに唸り声をあげた。

「一体どうしたんだよ……」

 何が何だかわからないまま、翼竜の視線の先を見る。
 そこには1人の男が立っていた。
 僕よりもひとまわりは大きい、筋肉ムキムキの体型。
 髪色はくすんだグレーで長髪をオールバックにしている。
 金色の眼の片方と頬についた傷や、生やしている口髭からは歴戦の匂いがする。
 そして極め付けは背中に背負った一本の大剣。
 華美な装飾はなく、まさに鉄の塊と表現するしかないその一振りの刀からは威圧感に溢れている。
 間違いない、翼竜が反応したのはこの男だ。

 キィイイイイイイイン……!!

 あまりの衝撃でしばし呆けてしまったが、まだまだピンチは続いている。
 翼竜は再び動きを止めていたけれど、それはただ攻撃を止めているわけではなく、次の攻撃の準備中だからだ。
 突進に次ぐ翼竜の必殺技、すなわち竜の息吹ブレス
 鋼鉄をも溶かしてしまうその技を翼竜は放とうとしている。

「……」

 男はその場を動かない。そして

「GAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!」

 必殺の一撃が放たれた。
 周囲が爆炎に包まれ、一時的に何も見えなくなる。

「うわぁ……大丈夫かなあの人」

 完全に他人事である。
 だってヘイト完全に向こう向いてたしなぁ……などと思っていると。

「……ぉぉう」

 爆炎の後に残されたのは男の死体……などではなく、背中にあった剣を両手で構えている男の姿だった。あのブレスを防いで無傷とは……思わず感嘆の声が出てしまう。しかし、翼竜の攻撃はそれだけでは止まらない。
 僕が見た時には既に突進モーションが開始されていた。
 恐らく、ブレスの直後にはもう動き始めていたのだと思う。隙のない二段構えの攻撃はいやらしいなと思うけれど、合理的で徹底したそのやり口が強者たる所以なのだろう。

「……」

 男は翼竜の突進に対しても臆することはない。それどころか

「……攻撃の構え!?」

 男は上段に剣を振り上げ、そのまま動きを止める。
 そして

「AAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!」

 翼竜の突進が迫る。
 それに合わせ

「…………ッッッ!!!!!!」

 上段からの一閃。
 剣を伝って男の両手から放たれた衝撃は翼竜の頭をかち割った。

「ァ…………ァ…………?」

 何が起きたのか理解できない翼竜は断末魔をあげる間も無く、その巨体を地面に横たわらせた。

「す……すごい……」



 ー翌日ー

「ってことがあったんだよ」

「やべーなそいつ、廃人じゃん」

 ホームルームが始まる前の朝の時間、僕は昨夜の出来事を友人の久村くむらうしおに話していた。

「普通だったら回避したりカウンターするところを、相手の攻撃に合わせて通常攻撃で一撃の元に沈める……ロマンだよあれは……惚れたわ」

久遠くおんも火力バカだよなあ……その割に手数多い武器使ってる印象だけど。今何使ってんの?」

「弓かな。僕は他人の神プレイ見るのが好きだからいいんだよ」

「そういうもんかね。……で、そのおっさんとはどうなったのよ」

「ふっふーん♪」

「お、まさか」

「そのまさかです!!フレンド申請してみました!!」

「おー、やるやん」

「そして今度一緒に狩りに行く約束もしたのです!!」

「行動力の化身かおまえは」

「褒めて褒めて」

「褒めてねーよ……」

 久村は呆れつつ、目線を教室の入り口に向けた。

「おーい着席しろー……」

 担任の安藤あんどう先生が入ってきて朝のおしゃべりタイムは終わる。
生徒たちはそれぞれの席に戻り、自分の名前が呼ばれるのを待つ。

「篠澤ー……関口ー……高田ー……高田ユニ?……今日もいないか。次、田代ー……中嶋ー……」

 気怠い担任の声に答えたら、今日も僕たちの1日が幕を挙げる。



「……ぅ……っ……」

 暗闇の中で蠢く影がある。

「朝……か……」

 時刻は10時20分。人々はとっくに目覚め、それぞれの朝が始まっている。
 どんな者にも朝は平等に、そして無慈悲にやってくる。

「今日も……やるか……」

 それはこの引きこもり少女にも。
 まるで光に集まる虫のように、少女はモニターに吸い寄せられる。
 ゲーム機の電源を入れ、今日も仮想の世界へと少女は旅たつ。

「デイリー……こなして、素材集めの周回して……」

 先ほどの緩慢な動作が嘘のように、コントローラーを握る指先は忙しなく動く。それに合わせて画面内のアバターが縦横無尽の活躍を見せた。
 モンスターを討伐し、自慢の大剣を担ぐ男のアバターを見て少女は1人つぶやく。

「へへ……そうだ……フレンドが……できたんだった……」


 今日も少女の1日が幕を挙げる。


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