超ショートストーリー または、随筆など

うらめしや

　ある一本道に、おばけが出るという噂がたった。ある時、ある旅人が、その一本道を夜に通ろうとした。
　それに気がついた、一本道の近くにある村の村人が、旅人に注意した。
「その一本道は、おばけが出るらしいですよ。迂回するか、朝か昼に通るかにした方がいいですよ」
　それを聞いた旅人は、こう言った。
「迂回したら、時間がかかるし、明日の朝まで待てません。そもそも、私はおばけが怖くないので問題ありませんよ」
　そして、旅人は夜中なのに、おばけが出る一本道の方へ進んでいってしまった。

　さて、旅人が一本道を通ると、すぐさまおばけが出てきた。
「うらめしや」
　その言葉を聞いた旅人は、すぐさまこうおばけに言った。
「おもては？」
　おばけは、少しだけ考えこんだあと、こう答えた。
「ふくや」

　旅人が、一本道を通りすぎると、大きな町が見えてきた。表通りには、服屋がたくさんならんでいた。そして、裏通りには、たしかに飯屋がならんでいたのだった。