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2章
懐かしい
しおりを挟む準備をしてウトくんに渡された地図を見ながら、目的の場所へ向かった。……バスで行けるんだ……と驚いた事は、まぁよしとして住宅地を抜けて山の方へ。
バス停を降りて再び地図を見つめてただひたすら歩く。動物出没注意の看板なんて久しぶりに見た……。無事にあんなお屋敷みたいな家にたどり着けるのか心配になってきたよ……
段々道が無くなって獣道になった頃は不安との戦い。周りは木ばっかりだし、どちらが右か左かわからなくなってきた。
「どうしよう……」
キョロキョロと辺りを見回すけれど、どこか薄気味悪い。まだお昼過ぎだというのに。
こうなりゃヤケクソだと歩き続け木々を抜けたら、突然大きなお屋敷のようなものが現れた。
え……と一瞬固まってしまったじゃないか。だってここだけ国が違うみたい。黒い大きな門、薄暗い庭、日本だという事を忘れてしまいそう。
「マリアさん!!」
どうしたらいいのかと固まっていたら、そんな声がして現れたウトくんがゆっくりと門を開いてくれた。
「あ、う、ウトくん。 ありがとう」
「いえ、ご無事で何よりです。 ご主人様はご飯も食べずにボーッとしていて……きっと驚きます。」
まるでそれが自分の喜びと言わんばかりに素敵な笑顔をくれた彼は
ついてきてください
と広い庭を歩き出した。
敷地が広すぎる……こんなところに2人で住んでるのかな……
物珍し過ぎてついつい食い入るように見てしまう。扉の前に着くと、ウトくんが再び力一杯開けてくれて、私の目にはどこか見覚えのある部屋が映し出された。
『……カルマ……貴方踊れるの?』
自分がそう言ったという記憶のようなものが頭の中に浮かび上がり
「……彼と踊った場所だ……」
ポツリとそう呟く。
「覚えているんですか?」
ウトくんがパァアアと明るい顔をした事で、私はハッと自分に戻った。
「あ、ち、違うの……いまのは無意識で……」
「無意識でも少しずつ思い出してる証拠ではないですか」
「……いや、あ、あの……」
いいのか悪いのかわからない。おかしな夢をみるとは思っていたけれど、起きてるこの今も何か浮かび上がるのか。
ここに来るのは初めてなはずなのに、やはり懐かしいと感じてる自分。
「カルマ様の部屋へ案内しますね」
小さな彼が私を見上げてそう言えば、どこがカルマの部屋なのか知っているような動きをする私の足
あ……ここだ。
そう思った場所はやはり彼の部屋だったらしく、ウトくんが足を止めてノックをした。
「カルマ様……よろしいですか?」
『ウト……飯ならくわねぇ』
「いえ、その、とりあえず開けます」
サプライズがしたかったのか、私がいるという事を口にしなかった彼はドアノブを回してドアを押す。カルマは出窓の所に腰を下ろしていて、とても悲しそうな顔で外を見ていた。
「……カルマ様……そのお客様です」
「今日は誰にも会う気はない」
「いえ、もういらしてます……」
「……お前は勝手に……帰らせ」
”ろ” その最後の文字が出る前に私の姿を映し出した彼の瞳。ぽかんと口を開けて、甘えるような声で呟いた
「真理亜…………」
「……は、はい」
”マリア”ではなく”真理亜”と。
聞き間違いではない。
それが嬉しいと思ったのは一体どうしてなのだろうか。
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