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3・茶道 探偵部(仮)と謎のキジネコ

3-8・まずひとつの鍵が見つかる

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 ワタルが見つけたいいものは、以下の4つだった。

 寝室から、枕カバー。

 お手洗いから、ハンドタオル。

 シューズボックスから、冬用の靴とスリッパ。

「鍵を見つけるには、普通の探偵はどこで落としたかとか、覚えていそうにないことを聞くのだが、われわれは手がかりとなるようなものがあればいいのだ」と、ワタルは4つの持ち物の匂いを、自分と協力者であるクロネコで確認した。

「くっさーっ! やっぱ靴はあかんわ!」と、ワタルは言い、クロネコも同意するようにうなずいた。

「足で家の鍵開けるってこともないだろうから、タオルをあげよう」と、ワタルはクロネコの首に軽く巻きつけると、クロネコは、にゃん、と片手を挙げて敬礼をして出ていった。

 ここまでの行為は、すべて家主のアカネの許可は出ていない。

「心配せんでも、自分らにまかせれば5分ぐらいで見つかると思うんよ」とミドリは言って、勝手に持っていた携帯端末を広げて学校の勉強をはじめた。

 そして、そこにおれたちがお邪魔した、という次第である。

     *

 アカネのマンションは、独身女性にしてはやや広めではあったけれども、高校生4人と探偵2人の来客は多すぎたかもしれない。

 探偵の一人、無口なクロサは勝手に冷蔵庫を開け、中のものをクロキに見せながら相談をしている。

 どうやら賞味期限・消費期限切れのものの分類をしているらしい。

 クロキは、クロサが手にしたものを、首を縦横に振って確認し、ビニール袋に入れていった。

 これらは証拠物件です、と、クロキは言うけれど、この調子だと、アカネの下着ケースまで調査されかねない。

 困った顔してるだけではなくて、家主からちゃんと講義しろよ、と、おれは思った。

 別に、事件の容疑者じゃないんだから。

 それからしばらくして、ワタルが帰ってきた。

 どういうわけか知らないけど、髪の毛がぼさぼさで、ところどころ血のようなものが流れたあとがある。

 だ、大丈夫か、とおれは心配したけれど、異世界人のふたりはそんなに驚いてはいなかった。

 こういうことはモンスター狩りではよくあることなのね、とミドリは言って、一番安い治癒魔法をワタルに使ったら、やや小汚いところは残ったけど、手足や頭の傷は治った。

 ほら、と、ワタルが放り投げた、銀色に光る小さな金属製の物体を、ミドリは片手で受け取って、アカネに渡した。

 なんか、カラスが昼間、お宝だと思って自分の巣のところに持っていったとのことだ、と、ワタルは説明した。

「ぴかぴかの500円硬貨と替えてもらったんで、その分補填して」と、ワタルは言い、アカネはそれほどピカピカでない500円硬貨を渡した。

「顔なじみのカラスでよかった。あと、予備の鍵を家の近くに隠しておくなら、伏せた植木鉢の中にでも入れておいて、カラスに見つからないようにするといい」

「よーし、ご苦労さまなのね。しかし、あとひとつの鍵も探さないといけないけど、それは自分の能力でやってみるのね」と、ミドリは言った。

 ……あとひとつの鍵?
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