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4・茶道 探偵部(仮)と謎の図書室
4-9・ネコとカラスと探偵いやむしろ犯人
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入学してすぐ、異世界の住人だった3人はこの世界になじんでいた。
クルミは頭がよくて運動能力が高くて誰とでも普通に話せてかなり見た目がよいお嬢様で、そりゃ元の世界では王族だからそうだよね、うちの高校にはそういうタイプをいじめにかかるような、性格の悪い人間はいないことはないんだろうけど、クルミのまわりには近づいてこないのである。
口も手も、小学校高学年の女子ぐらいのハイスペックなので、小学校高学年の男子ぐらいのレベルではかなうわけがない。
ミドリはクールタイプのすっきり・しっかり系で、人づきあいには積極的ではないけれど、男子のすくない理科系の部に所属していて、クルミとはまた別の友人関係を築いているようだった。
ワタルは、動きが小動物っぽくて、ときどき寝ていて、小動物好きの男子・女子に声をかけられると、はっ、と気がつくわりに、無駄に集中力があって動きが細かく、愛されていた、というより愛玩されていた。
*
ワタルは近所の地域ネコとカラスを手なずけていた。
「カラスはコラとか怒ったり、餌付けしたりしていると、ちゃんと名前と顔を覚えるのだ」と、ワタルは説明した。
それに茶道部の近くから湧き出ている泉の水は、とてもカラスが気に入っているようなので、すこしだけ流れを止めて水浴びができるようにな場所も作ってみた、とのことである。
もっともネコは流れる水のほうが好きみたいなのでお互いの棲み分けはできてるし、スズメとか小さい鳥が来てもいじめないようにどちらにもよく言ってあるから、とのことである。
カラスの行動半径は、ネコとちがって意外と広い。
ワタルは駅周辺を含む近所の地図を大きく拡大して壁に貼り、カラスが集めた硬貨や紙幣その他の落とし物に関する日付と場所を地図に記録していた。
ある程度以上大きなものはひろってて持ってこないで、道の途中のちょっと高いところにさりげなく置いておくようにも、ワタルはカラスに言っておいた、とのことである。
手袋とか金貨がぎっしりつまった皮ざいふのように重たいものは、カラスは口では運べないからもっぱら硬貨と紙幣、それにきらきらしたものとか、複雑に印刷されていい匂いのする紙くずをを持ってきている。
ワタルは それらを小さなビニール袋に入れて、部室の片隅にある専用ダンボール箱で保管していた。
カラスは人の手が届かないところでも十分に潜りこめるので、自動販売機や車の下などでも探せるのである。
車の下はむしろネコの縄張りかな。
小銭でもかならず最寄りの警察に届けているんだけど、普通の財布ならともかく、落とし主が出てくることはまずないので、半年経ったらそれらは我々のものになるとは思う。
これを活動実績と言っていいのだろうか。
公安関係によるおれたちの高校に対しての信頼度はそれなりに高いのだった、と、設定的にややこしくなりそうなことは簡単に片付けておこう。
ある時は、カラスはとてもきれいなピンクダイヤモンドがついたネックレスを拾ってきた。
どうせおもちゃだろうということでおれたちが保管していたんだけれど、あとからちゃんとぷんぷんした落とし主がやってきた。
青い目と金色の髪をした、クルミの目の端をつり上げて、ボディのナイス度を下げたような感じの、高校生と思えるようなフランス人で、こんな目に会うのは3度目ですわ、と、ぶちぶち言いながらおれたちの部室に警察とともにあらわれた。
「これっていったいいくらぐらいするもんなの?」
うちらが毎年もらってる部費の100年ぶんぐらいだった。
1割落とし主から謝礼がもらえたら、10年はこの謎部も安定である。
「落としたんじゃなくって取られたんですけど!」と、その子は強く主張した。
おれはすこし考えた。
「じゃあちょっとそれを首にかけて」と、おれは言ってワタルに目で合図をした。
ワタルとその仲間は、おれの指示通りその子にちょっかいを出した。
髪の毛をカラスにつつかせると足元が不安定になる。
そして足にネコをとりつかせるとさらに不安定になる。
そこをさらに別のカラスが器用にネックレスの留め具を外すと、それは下に落ちる。
ウマの尻尾の毛を抜くぐらいの勢いで、数羽のカラスが頭をつっつき、下に落ちたネックレスは、数匹のネコが連携して、素早く持ち去る。
「あんた、隙がおおすぎるな!」と、おれは感心した。
*
「すいません、ワタルとこいつらにはよく叱っておきますから」と、おれは警察官に謝罪した。
「被害者も被害届とか出す気はないみたいなので、ここは穏便に」と、警察官は困った顔をしながら言った。
野生のカラスや地域ネコなどを犯人にするということは警察でも無理なうえ、別にワタルが窃盗の指示を出したわけでもないのである。
その子は涙目になりながら帰っていき、もちろん謝礼はもらえなかった。
とりあえず、落ちてるものを拾うとか、誰かが落とすのを待つのはいいんだけど、落とさせるのはダメ、と、ワタルもカラスに注意したのだった。
*
「図書室の謎を解く手伝いを、ネコは使えないことはわかったけど、カラスには頼めないかな」と、おれはワタルに聞いた。
「カラスの好きそうなものも用意できそうです」と、図書委員のミカンちゃんも言ってくれた。
クルミは頭がよくて運動能力が高くて誰とでも普通に話せてかなり見た目がよいお嬢様で、そりゃ元の世界では王族だからそうだよね、うちの高校にはそういうタイプをいじめにかかるような、性格の悪い人間はいないことはないんだろうけど、クルミのまわりには近づいてこないのである。
口も手も、小学校高学年の女子ぐらいのハイスペックなので、小学校高学年の男子ぐらいのレベルではかなうわけがない。
ミドリはクールタイプのすっきり・しっかり系で、人づきあいには積極的ではないけれど、男子のすくない理科系の部に所属していて、クルミとはまた別の友人関係を築いているようだった。
ワタルは、動きが小動物っぽくて、ときどき寝ていて、小動物好きの男子・女子に声をかけられると、はっ、と気がつくわりに、無駄に集中力があって動きが細かく、愛されていた、というより愛玩されていた。
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ワタルは近所の地域ネコとカラスを手なずけていた。
「カラスはコラとか怒ったり、餌付けしたりしていると、ちゃんと名前と顔を覚えるのだ」と、ワタルは説明した。
それに茶道部の近くから湧き出ている泉の水は、とてもカラスが気に入っているようなので、すこしだけ流れを止めて水浴びができるようにな場所も作ってみた、とのことである。
もっともネコは流れる水のほうが好きみたいなのでお互いの棲み分けはできてるし、スズメとか小さい鳥が来てもいじめないようにどちらにもよく言ってあるから、とのことである。
カラスの行動半径は、ネコとちがって意外と広い。
ワタルは駅周辺を含む近所の地図を大きく拡大して壁に貼り、カラスが集めた硬貨や紙幣その他の落とし物に関する日付と場所を地図に記録していた。
ある程度以上大きなものはひろってて持ってこないで、道の途中のちょっと高いところにさりげなく置いておくようにも、ワタルはカラスに言っておいた、とのことである。
手袋とか金貨がぎっしりつまった皮ざいふのように重たいものは、カラスは口では運べないからもっぱら硬貨と紙幣、それにきらきらしたものとか、複雑に印刷されていい匂いのする紙くずをを持ってきている。
ワタルは それらを小さなビニール袋に入れて、部室の片隅にある専用ダンボール箱で保管していた。
カラスは人の手が届かないところでも十分に潜りこめるので、自動販売機や車の下などでも探せるのである。
車の下はむしろネコの縄張りかな。
小銭でもかならず最寄りの警察に届けているんだけど、普通の財布ならともかく、落とし主が出てくることはまずないので、半年経ったらそれらは我々のものになるとは思う。
これを活動実績と言っていいのだろうか。
公安関係によるおれたちの高校に対しての信頼度はそれなりに高いのだった、と、設定的にややこしくなりそうなことは簡単に片付けておこう。
ある時は、カラスはとてもきれいなピンクダイヤモンドがついたネックレスを拾ってきた。
どうせおもちゃだろうということでおれたちが保管していたんだけれど、あとからちゃんとぷんぷんした落とし主がやってきた。
青い目と金色の髪をした、クルミの目の端をつり上げて、ボディのナイス度を下げたような感じの、高校生と思えるようなフランス人で、こんな目に会うのは3度目ですわ、と、ぶちぶち言いながらおれたちの部室に警察とともにあらわれた。
「これっていったいいくらぐらいするもんなの?」
うちらが毎年もらってる部費の100年ぶんぐらいだった。
1割落とし主から謝礼がもらえたら、10年はこの謎部も安定である。
「落としたんじゃなくって取られたんですけど!」と、その子は強く主張した。
おれはすこし考えた。
「じゃあちょっとそれを首にかけて」と、おれは言ってワタルに目で合図をした。
ワタルとその仲間は、おれの指示通りその子にちょっかいを出した。
髪の毛をカラスにつつかせると足元が不安定になる。
そして足にネコをとりつかせるとさらに不安定になる。
そこをさらに別のカラスが器用にネックレスの留め具を外すと、それは下に落ちる。
ウマの尻尾の毛を抜くぐらいの勢いで、数羽のカラスが頭をつっつき、下に落ちたネックレスは、数匹のネコが連携して、素早く持ち去る。
「あんた、隙がおおすぎるな!」と、おれは感心した。
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「すいません、ワタルとこいつらにはよく叱っておきますから」と、おれは警察官に謝罪した。
「被害者も被害届とか出す気はないみたいなので、ここは穏便に」と、警察官は困った顔をしながら言った。
野生のカラスや地域ネコなどを犯人にするということは警察でも無理なうえ、別にワタルが窃盗の指示を出したわけでもないのである。
その子は涙目になりながら帰っていき、もちろん謝礼はもらえなかった。
とりあえず、落ちてるものを拾うとか、誰かが落とすのを待つのはいいんだけど、落とさせるのはダメ、と、ワタルもカラスに注意したのだった。
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「図書室の謎を解く手伝いを、ネコは使えないことはわかったけど、カラスには頼めないかな」と、おれはワタルに聞いた。
「カラスの好きそうなものも用意できそうです」と、図書委員のミカンちゃんも言ってくれた。
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