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6・茶道 探偵部(仮)と謎の美少女

6-18・そこそこの代償

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「こら、ウルフ、いつまで寝てんの。もう起きんと遅刻するけんね」

「うーん、今日は休みじゃなかったっけ……」

「まーったくもう、そんだから……また夜ふかし、こっそりしてたんに決まっとるよ。あんだけゲームはやりすぎてちゃ駄目って言ってんのに。ほら、さっさとしないと異世界に遅れるって」

 ……異世界?

 おれは、がば、と布団から起きると、いつも見慣れているかあちゃんが、布団を叩く棒みたいなものを持って立っていた。

 アイロンパーマにふっくらとした、おれよりすこしちいさいけど、女性にしてはでかい体、おしゃれではなくて脱ぎ着が楽そうな服。

 昔は美人だったかもしれないけど、今はただの、どのスーパーにでもいて、ネギなどを買っているおばさんである。

「あんた、うちのかあちゃんだよね」

「なに寝ぼけたこと言ってんだい、あたしゃ転生の女神に決まってるだろ。さっさとジョブと特殊ステイタス決めないと、あたしも一緒に異世界転生しちゃうよ」

 そういって、かあちゃんはおれの頭を布団叩きでこつ、と叩いたとおもったら、おれはベッドの角に頭をぶつけていた。

 これは「転生の女神がおかんだったら」という悪夢だった。

 枕の寝ている面を見ると、「偽」と赤字で書いてある。

 確認のため裏返しにしてみると、黒字で「真」と書いてあって、この面をおもて面にしておくと安眠できるのよね、と、ミドリにもらったものだけど、きのうはいろいろ疲れていたため逆にしていたらしい。

 時刻はまだ朝はやく、学校があったとしても全然遅刻するような時間ではない。

 しかし、静かにひたひた、という音がする外を見るため窓を開けてみると、静かに春の雨が玄関に植えてある草木や、近所の屋根を濡らしていた。

 これでは真・河原のゴミ拾い大会も中止だろうな。

 どんどんひどくなりつつある雨に、おれはワーテルローの戦の前に大雨で目覚めたナポレオンのような気分になった。

 雨さえ降らなければ、あるいは長引かなければナポレオンは勝っていたはずなのだ。

 おれが起きて冷蔵庫をがさがさと、朝食になりそうなものを探していると、ミナセが降りてきて、目玉焼きとトーストでも食べようか、と言ってくれた。

 ひとり分もふたり分も、作る手間は同じだから助かる。

 後の後かたづけはまかせる、という意味でもある。

 興味が持てそうなニュースとかネコ動画を検索していると、部長からの通知と添付画像があるのに気がついた。

『河原のゴミ拾い大会の関係者へ・ゴミは前日に、いちばんたまってそうなところは片づけた』

 そして「モリワキ団」という署名。

 さらに、清掃後のおれたちの、顔と手にモザイクのかかっている画像。

 これが全世界に公開されてる!

 おれはさっそくミロクと連絡をとって、これはどういう意味なのか、と聞いた。

 まだ寝ぼけているみたいなミロクは、うー、あー、なんだっけ、画像? 加工してあっただろ、これでうちらがしたことはモリワキ団のせいになるんじゃないかな、と、答えた。

 うちの活動実績にはならなかったけど、犯罪実績にもならないだろうから、そんなに気にしなくてもいいよ。

 あ、雨、降ってるねー、これからどんどんひどくなるだろうけど、夕方までには止むから。

「最初からこんな天気になると知ってたんですか?」

「知ってないよ。ミドリはあれからみんなが帰ったあと河原で、落としたコインをちゃんと魔法で拾って、付き添いだった私と一緒に古銭商に行って売り飛ばした。確かにいい値段で買い取ってくれたよ、とはいえ部の儲けにはならないんだけどね」

「えーと……雨とはどういう関係が?」

「ミドリが天気を買ってくれたんだ、安くなかったけど、魔法の値段設定って謎なんだよなあ」
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