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第二章:自由と束縛と
第97話:シルバー冒険者アリシア 6
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「おいおい、泣くほどのことじゃないだろう」
「泣くほどのことだよ! だって、こんな話、信じてもらえるだなんて、普通は思わないもの」
否定しようとしたネイドだが、アリシアの言っていることはもっともなのでどう説明するべきか悩んでしまう。
しかし、結局は二人の関係性が一番の信頼につながるのだと結論付けた。
「……まあ、俺はアリシアのことを信じているからな。それだけでいいんじゃないか?」
「……本当にありがとう、ネイド兄」
「それはもういいって。それで、今後はどうするつもりなんだ?」
話を次に進めようとネイドがそう口にすると、アリシアは一度涙を拭ってから表情を引き締め直した。
「そうだよね。……ひとまずは、どうしてスタンピードが起きたのかを調査したいと思っているんだ」
「俺たちの結論としては、スタンピードが起こらなければそれに越したことはない、だからな」
「なので、今日までは遠方からの依頼も積極的に引き受けていたんです」
アリシアの言葉に続いて、ゼーアとケイナが説明していく。
「なるほどな。だからあの村の依頼もアリシアたちが受けていたのか」
「そうなの。ねえ、ネイド兄。魔獣を討伐していて、何か気になることとかなかった?」
「……いや、特に気になることはなかったな。いつも通りの魔獣討伐だったよ」
「そっか。なら、スタンピードとは関係なさそうだね」
アリシアが腕組みしながら考え込んでいると、ネイドがジーっと見つめていることに気がつき首を傾げた。
「ネイド兄、どうしたの?」
「……お前、ホールトンって奴のことを恨んでないのか?」
話の流れでアリシアはホールトンにはめられたことも伝えてある。
話の腰を折るわけにはいかないと口にしていなかったネイドだが、ここに至りようやく聞くことができた。
「恨んでいないわけじゃないけど、今はあっちにかまけている場合じゃないからね。まずはスタンピードを阻止して、ラクドウィズを守り抜かなきゃ」
「そうか。……俺だったら叩き斬るか、半殺しにしてやるんだがなぁ」
「え? 何か言った、ネイド兄?」
「ん? いや、なんでもないよ」
ボソリと呟かれた言葉をアリシアは聞き逃していたが、ゼーアとケイナははっきりと聞いてしまっていた。
「……俺たちも逆らわないでおこうな」
「……そ、そうですね」
苦笑いしながら二人がそう口にすると、ネイドの視線がそちらへ向いたのでドキリとする。
「そういえば、ゼーアさんとケイナさんだっけ? 俺は二人のことをなんて呼べばいいんだ?」
「な、なんて呼んでも構わんぞ?」
「そ、そうですね! なんでも構いません!」
「そうか? なら、敬語とか苦手なんだ、普通にゼーアとケイナって呼ばせてもらうよ。俺のことはネイドでいいからさ」
「……分かった。なら、ネイドと呼ばせてもらうさ」
「わ、私はネイドさんで!」
パーティとして同行するのだからとネイドがそう提案すると、最初はやや緊張していた二人も、最終的には肩の力が抜けていた。
「うんうん、パーティらしくなってきたよねー」
「それともう一つ。……アリシア、マジで聖女になったのか?」
「聖女候補だよ、ネイド兄。でも、そうだよね。直接見てみないことには信じられないよね」
「あ、いや、信じていないわけじゃない。ただ、聖女ってのにはあまりいい記憶がなくてなぁ」
そう口にしたネイドは頭をガシガシと掻く。
何があったのか気になったものの、まずは聖女の力を見てもらおうと簡単な魔法を使ってみた。
「それじゃあ――ヒール」
アリシアがネイドに両手を向けてそう唱えると、彼の周囲に白く美しい光が浮かび上がった。
「……なるほど、マジみたいだな」
「前世の記憶もあるから、上位の聖魔法も使えるんだ」
「……こりゃ、ホールトンって奴は大失態を犯したってことになりそうだな」
「あはは、大げさだって」
そう口にしたアリシアは笑っていたが、残る三人は本気でそう思っているからか苦笑いを浮かべるだけだった。
「泣くほどのことだよ! だって、こんな話、信じてもらえるだなんて、普通は思わないもの」
否定しようとしたネイドだが、アリシアの言っていることはもっともなのでどう説明するべきか悩んでしまう。
しかし、結局は二人の関係性が一番の信頼につながるのだと結論付けた。
「……まあ、俺はアリシアのことを信じているからな。それだけでいいんじゃないか?」
「……本当にありがとう、ネイド兄」
「それはもういいって。それで、今後はどうするつもりなんだ?」
話を次に進めようとネイドがそう口にすると、アリシアは一度涙を拭ってから表情を引き締め直した。
「そうだよね。……ひとまずは、どうしてスタンピードが起きたのかを調査したいと思っているんだ」
「俺たちの結論としては、スタンピードが起こらなければそれに越したことはない、だからな」
「なので、今日までは遠方からの依頼も積極的に引き受けていたんです」
アリシアの言葉に続いて、ゼーアとケイナが説明していく。
「なるほどな。だからあの村の依頼もアリシアたちが受けていたのか」
「そうなの。ねえ、ネイド兄。魔獣を討伐していて、何か気になることとかなかった?」
「……いや、特に気になることはなかったな。いつも通りの魔獣討伐だったよ」
「そっか。なら、スタンピードとは関係なさそうだね」
アリシアが腕組みしながら考え込んでいると、ネイドがジーっと見つめていることに気がつき首を傾げた。
「ネイド兄、どうしたの?」
「……お前、ホールトンって奴のことを恨んでないのか?」
話の流れでアリシアはホールトンにはめられたことも伝えてある。
話の腰を折るわけにはいかないと口にしていなかったネイドだが、ここに至りようやく聞くことができた。
「恨んでいないわけじゃないけど、今はあっちにかまけている場合じゃないからね。まずはスタンピードを阻止して、ラクドウィズを守り抜かなきゃ」
「そうか。……俺だったら叩き斬るか、半殺しにしてやるんだがなぁ」
「え? 何か言った、ネイド兄?」
「ん? いや、なんでもないよ」
ボソリと呟かれた言葉をアリシアは聞き逃していたが、ゼーアとケイナははっきりと聞いてしまっていた。
「……俺たちも逆らわないでおこうな」
「……そ、そうですね」
苦笑いしながら二人がそう口にすると、ネイドの視線がそちらへ向いたのでドキリとする。
「そういえば、ゼーアさんとケイナさんだっけ? 俺は二人のことをなんて呼べばいいんだ?」
「な、なんて呼んでも構わんぞ?」
「そ、そうですね! なんでも構いません!」
「そうか? なら、敬語とか苦手なんだ、普通にゼーアとケイナって呼ばせてもらうよ。俺のことはネイドでいいからさ」
「……分かった。なら、ネイドと呼ばせてもらうさ」
「わ、私はネイドさんで!」
パーティとして同行するのだからとネイドがそう提案すると、最初はやや緊張していた二人も、最終的には肩の力が抜けていた。
「うんうん、パーティらしくなってきたよねー」
「それともう一つ。……アリシア、マジで聖女になったのか?」
「聖女候補だよ、ネイド兄。でも、そうだよね。直接見てみないことには信じられないよね」
「あ、いや、信じていないわけじゃない。ただ、聖女ってのにはあまりいい記憶がなくてなぁ」
そう口にしたネイドは頭をガシガシと掻く。
何があったのか気になったものの、まずは聖女の力を見てもらおうと簡単な魔法を使ってみた。
「それじゃあ――ヒール」
アリシアがネイドに両手を向けてそう唱えると、彼の周囲に白く美しい光が浮かび上がった。
「……なるほど、マジみたいだな」
「前世の記憶もあるから、上位の聖魔法も使えるんだ」
「……こりゃ、ホールトンって奴は大失態を犯したってことになりそうだな」
「あはは、大げさだって」
そう口にしたアリシアは笑っていたが、残る三人は本気でそう思っているからか苦笑いを浮かべるだけだった。
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