逆行聖女は剣を取る

渡琉兎

文字の大きさ
99 / 99
第二章:自由と束縛と

第99話:シルバー冒険者アリシア 8

しおりを挟む
 ――アリシアたちが南の森は向かったのと同時刻。
 魔導師ギルドの一室では、ギルドマスターのウェルズが執務机を指でトントンと叩きながら、今か今かと一つの報告を待っていた。

 ――コンコン。

「入れ!」

 そこへ扉をノックする音が聞こえると、間髪入れずにウェルズは声をあげた。

「……し、失礼いたします、ウェルズ様」
「どうだ、誰が受けたのだ!」
「そ、それが……」

 ウェルズの言葉に入ってきた壮年の男性は視線を泳がしながら言いよどむ。

「えぇい、どうしたのだ! さっさと答えんか!」
「は、はい! 実は、誰も依頼を受けておりません!」
「……な、なんだと? 精霊樹の森だぞ! 本来であれば我々魔導師しか足を踏み入れることが許されていない、あの精霊樹の森へ入ることができる依頼だぞ!」
「……はい」

 恐縮しきっている男性を前にして、勢い余って立ち上がっていたウェルズは愕然としたまま椅子に腰掛ける。

「……おい、あのミスリル冒険者の小僧はどうした!」
「そ、それが、別の依頼を受けて都市を離れたようでして……」
「なんだと!」
「さ、最初は依頼書を手に取ったんですが、一緒にいた女の冒険者が何やら言ったあと、依頼書を戻したんです!」
「くっ! なんなのだ、あの女は! ガルアたちもあの女のせいで使い物にならなくなったのだぞ!」

 ドンッ! と執務机を叩きながらウェルズは怒りを露わにする。
 アリシアたちに突っかかっていったガルアたちは、その後に厳しい処分が下されていた。
 冒険者ランクの降格、さらに一年の冒険者活動禁止を言い渡されており、すでにラクドウィズから立ち去っている。
 彼らはウェルズの手駒であり、冒険者ギルドの情報を漏らしていたスパイでもあったのだ。

「……決めたぞ」
「……な、何をでしょうか、ウェルズ様?」
「手段は問わない。必ずやあの女を殺すのだ」
「…………こ、殺しはダメでございます、ウェルズ様! それに精霊樹の森の問題もまだ解決できていない――」
「黙れ! 貴様は私の指示に従って動けばいいのだ! なんのために貴様をサブギルドマスターに就かせていると思っている!」

 もう一度執務机が強く叩かれ、ウェルズが男性を睨みつけると、彼は悲鳴にも似た声を漏らしながら何度も頭を縦に振り続けた。

「か、かしこまりましたああああ!」
「分かったならさっさといけ!」
「し、失礼いたしましたああああ!」

 バタバタと足音を鳴らしながら部屋を出ていく男性がいなくなると、部屋の中は一気に静まり返った。

「……絶対に許さんぞ、小娘が。魔導師ギルドに逆らったこと、後悔させてやる!」

 ウェルズは拳を強く握りしめながら、もう一度執務机に叩きつけたのだった。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

44
2023.06.08 44

作者様、"アリシア用の十の件"byシエナ…とは?(15話)←(ヤバい…又徹夜🌃🏢☀️かもw)💧

2023.06.09 渡琉兎

「十」ではなく「柔」でした。。
こちらも修正済み、ご指摘ありがとうございます!

解除
44
2023.06.08 44

主人公親子可愛い💕(萌)ですw
✋質問です。9話「私の鬼」って…"私が鬼"でなくて良いのかな?と…私の鬼…(鬼滅の◯?!)チビッ子の言葉に疎くて……(^^)💧間違えてたらm(__)m💦今の所嫌な所1つもなくサクサク進んでおります。

2023.06.09 渡琉兎

こちら、「私の鬼」でもと思っていましたが、「私が鬼」の方が伝わりやすいと自分でも感じました!ご指摘感謝です!
修正しております!!

解除
44
2023.06.08 44

こんにちは(^ω^)/
小雨降り中で🌂蒸し暑いです。
3話、アリシアの台詞『見回りに送れちゃう』は"遅れる"かと…女子の話を探していたのでアリシアちゃん楽しみです。(^ω^)💕

2023.06.08 渡琉兎

こちらも読んでいただきありがとうございます!
楽しんでいただければと思いますので、何卒よろしくお願いいたします!
あと、誤字の方は修正いたしました!ご指摘ありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

うるせえ私は聖職者だ!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
ふとしたときに自分が聖女に断罪される悪役であると気がついた主人公は、、、

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。 「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」 だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。 濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが… 「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。