最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎

文字の大きさ
25 / 361
最強剣士

初めての授業

しおりを挟む
 駆け込んできたのは眼鏡を掛け、無駄に主張している胸が男子生徒の視線を奪っている女性教師。

「み、皆さん、遅くなりました~! ……あれ、どうしたんですか?」

 何があったのかを全く理解していない女性教師は頭を抱えているアルと、口を開けたまま固まっている他の生徒を見て首を傾げている。

「……あの~? 皆さ~ん?」
「えっと、その、どこから説明したらいいでしょうか」

 前に出ていたアルが説明するしかないだろうと思い先ほどまでのやり取りを一から説明したのだが、女性教師の表情はとぼけた様子から徐々に青くなっていき、最終的には顎がガクガクと震え出してしまった。

「えっ、ちょっと、なんでそんなことになってるんですか!?」
「それは俺たちが聞きたいのですが……その、あなたがFクラスの担任教師でいいんですか?」
「あっ! はい、そうですよ! 私はFクラスの担任教師でペリナ・スプラウストです! よろしくね~!」

 話題を変えると気持ちが切り替わったのか明るく自己紹介をしてくれた。
 すぐに切り替わるものなのかと内心で呆れながらも、アルは席に戻ろうとしたのだが──

「あっ! あなたは確か……アル・ノワール君ですね」
「はい、そうですが?」
「……うん、あなた、Fクラスの学級長ね」
「……はい?」
「それじゃあ授業を始めますよ~」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってください、スプラウスト先生!」
「何かしら?」

 さも当然という感じで話を進めようとしたペリナだったが、さすがにアルは口を挟んだ。

「い、いきなり学級長はないと思います! ちゃんと立候補や多数決を取ってですねえ──」
「問題ないと思いまーす!」
「アル・ノワールで問題ありませーん!」
「面倒事を引き受けてくれるならなあ」
「先生ナイスだわー」
「……ということで、授業を始めますよ~」
「……マジかよ、おい」

 これ以上何かを言えばまた問題になってしまうと判断したアルは、溜息をつきながら席に戻った。
 その途中ではニヤニヤと笑っている生徒もいたが何も言わない。
 席に着くと、唯一心配そうにやり取りを見ていたリリーナが声を掛けてきた。

「あの、アル様、大丈夫なのですか?」
「まあ、やるしかありませんね」
「私にできることがあれば言ってくださいね?」
「ありがとうございます、リリーナ様」

 お礼の言葉に優しく笑ってくれたリリーナを見て、知り合いになれて本当に良かったと心の底から思っていたアルだった。

 初日の授業が始まると、すでにエミリアから教えられている内容の復習のようなものだった。
 他の生徒も家庭教師や自習をしてきたのだろう、全員がつまらなそうに講義を聞いている。
 本来ならこのまま講義が終わるはずなのだが、ペリナから驚きの内容が口にされた。

「皆さんもこれくらいの内容は話に聞いているでしょう。ということで、魔道場で実戦をしてみましょうか」

 この発言にはアルを含めた全員が唖然としていた。

「あの、スプラウスト先生?」
「どうしましたか、リリーナさん」

 誰も質問をしないこともあり、今回はリリーナが手を上げて発言をする。

「初日は講義のみと伺っていますが?」
「それは誰から聞いたのですか?」
「兄上や姉上たちからです」
「そうですか。ですが、それは過去の授業ですね。今年からは新しい学園長の意思の下、より実戦を重視した授業内容に変更されているんです」

 笑みを浮かべながら淡々と説明していくペリナに対してリリーナは気後れしている。

「……実戦を重視した授業と言いましたが、具体的にはどのようなことをするのですか?」

 助け舟を出したのはやはりアルだった。

「具体的にと言われてもねぇ……魔法でドンパチ?」
「抽象的過ぎますって!」

 とぼけたような発言にさすがのアルも声を大きくしてしまったが、他の生徒は面白そうだと立ち上がり始めていた。

「魔法でドンパチだってよ」
「そんなこと家でもできなかったぜ?」
「しかも実戦ってことは対人戦か?」
「いやー、こわーい! きゃははー!」

 そして周囲の声は大きくなり、ペリナが第五魔道場へ移動するようにと伝えると一斉に移動を開始した。

「これ、本当に大丈夫なのか? リリーナ様はどう思いますか?」
「……正直に申し上げますと、危ないと思います」
「ですよねぇ」

 魔法操作に自信があるからこそ全員が異を唱えることもなく移動したのだろうが、寸止めや威力の調整などができるかどうかはまた別の話だ。
 人に撃ったことがないということは、人に対しての調整も学んでいない可能性も高く、最悪の場合だと怪我人が出てもおかしくはない。

「スプラウスト先生! いきなりの実戦なんて、中止すべきです!」
「うふふ~。でも、アル君とリリーナさん以外はやる気満々のようですよ? それと、実戦の相手は私なので安心してくれて構いませんから」

 生徒を追い掛けるようにペリナも教室を後にする。
 アルは歯噛みしながらもこの場に残り続けるわけにもいかず、心配そうなリリーナと共に第五魔道場へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥風 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

処理中です...