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魔法学園
早速の果たし状
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翌日は朝から騒々しいFクラスになっていた。
アルは教室に入るなり、ゾランから模擬戦を申し込まれたのだ。
「……すまん、いったいどういう状況でこうなっているんだ?」
アルは説明をゾランではなく教壇に立っていたペリナに求めた。
「学園長に相談したところ、今日一日だったら第五魔道場を自由に使っていいと許可が下りたのよ。そして、明日以降はダンジョンに潜ることも許可されたわ」
「いや、ダンジョンはやり過ぎではないですか? 魔獣が生息している場所に生徒をなんの守りもなく──」
「ははっ! 怖いのか、インチキ野郎! 七階層まで行けたというなら、ダンジョンなんて怖くもなんともないはずだろう!」
「そうだそうだ!」
「インチキがバレるのが怖いんだろう!」
ゾランの言葉に合わせて取り巻きが騒ぎ立てている。
さすがに自己防衛がなっていないと言わざるを得ない状況に溜息をつきたくなったのだが、この場面でそうしてしまうと違う意味で捉えられてしまうと思い自重する。
その代わり、アルはゾランからの模擬戦を受けることにした。
「……分かった、その模擬戦を受ければいいんだろう」
「当然だ! 貴様など、このザーラッド家の俺様が叩き潰してやる!」
「それで、勝敗はどのように付けるんだ?」
模擬戦をやるならルールを決めているだろうと聞いてみたのだが、何故だかゾランは腕組みをしたまま言葉に詰まってしまう。
「……おい。勝敗は、ルールはどうなっているんだ?」
「……そうだなぁ……うーん……」
「いや、決めてなかったのかよ!」
これにはアルも呆れるしかなかった。
教室に入るなり模擬戦を申し込んできたのだから、当然ルールも決まっていると思うのが普通である。
この状況に後ろから見ていたペリナも頭を抱えている姿がアルからは見えており、仕方なく助け舟を出すことにしたようだ。
「それでは、こういうのはどうかしら。ルールは至極単純に、相手が行動不能になるか負けを認めること。反則行為としては、即死レベルの魔法を使わないこと。Fクラスでそんな強力な魔法を使える人はいないと思うけど、念のためにこのルールもつけておくわ」
「そ、それでいこう!」
「でしたらスプラウスト先生、一つ質問があります」
「なんですか、アル君?」
「攻撃の方法は魔法だけですか?」
「「……はい?」」
アルの質問にはペリナだけではなくゾランも驚きの声を漏らしていた。
「……いえ、結構です。失礼しました」
そして、二人の反応を見たアルは質問を取り下げて魔法で勝負することを決めた。
(当然だが、やっぱり剣術とか武術は想定されていないようだな)
ここで剣術を見せてしまうと、さらに批判が大きくなるだろう。
これがアルだけの都合であれば気にならないのだが、リリーナやクルル、そしてエルクたちの学園生活にも影響が出ることを考えると、この世界における正当な方法で勝利することが必要になってくる。
「審判は私がやってあげるわ」
「授業はいいんですか? 座学はやるって言ってましたけど」
「この模擬戦だけよ。それ以降は教室に戻ってくるし……他の生徒も興味津々みたいだしね」
言われて生徒たちの方へ視線を向けると、全員が移動する準備を終えてこちらを見ている。
リリーナたちだけは心配そうに見ていたのだが、アルは苦笑を返すにとどめた。
「叩き潰してやるからな!」
「そうか。まあ、良い試合にしようじゃないか」
「き、貴様! さっさと行くぞ!」
ゾランは大股で歩き出し、それに追従して取り巻きも教室を後にした。
その姿を見送ると、他の生徒たちもゾロゾロと移動を開始する。
リリーナたちはこちらに来たそうにしていたのだが、手を振ることで来なくていいことを示すとそのまま出ていった。
「……これでよかったのかしら?」
「えぇ、ありがとうございます、スプラウスト先生」
「私は学園長に相談して、第五魔道場を確保しただけだから構わないんだけどねー。……それと、本当に勝てるの?」
ペリナの心配そうな声に、アルは意外感を覚えていた。
「スプラウスト先生からそんな言葉が飛び出すとは思いませんでしたよ」
「あら失礼ね。これでも生徒のことを心配しているんだからねー」
「ということは、ゾランの属性レベルはFクラスでも高い方ってことですか」
「……あまり塩を送るような真似はしたくないけど、そういうことよ。クルルさんと同等、といえば分かるかしら」
クルルの属性でレベルが一番高いのは火属性のレベル3。
ということは、ゾランにもレベル3の属性があるということだとアルは理解した。
「まあ、なんとかしてみせますよ」
「本当にお願いよ」
「……何かあるんですか?」
あまりに真剣な表情でお願いされたため、アルは首を傾げながら聞いてみた。
「……学園長が、アル君に何かあったらただじゃおかないって、脅してきたのよ! だから、絶対に勝ってちょうだいよね! それも一切の怪我もなく、快勝だからね!」
そう言い残してペリナも第五魔道場へと行ってしまう。
残されたアルは、肩を竦めるしかなかった。
アルは教室に入るなり、ゾランから模擬戦を申し込まれたのだ。
「……すまん、いったいどういう状況でこうなっているんだ?」
アルは説明をゾランではなく教壇に立っていたペリナに求めた。
「学園長に相談したところ、今日一日だったら第五魔道場を自由に使っていいと許可が下りたのよ。そして、明日以降はダンジョンに潜ることも許可されたわ」
「いや、ダンジョンはやり過ぎではないですか? 魔獣が生息している場所に生徒をなんの守りもなく──」
「ははっ! 怖いのか、インチキ野郎! 七階層まで行けたというなら、ダンジョンなんて怖くもなんともないはずだろう!」
「そうだそうだ!」
「インチキがバレるのが怖いんだろう!」
ゾランの言葉に合わせて取り巻きが騒ぎ立てている。
さすがに自己防衛がなっていないと言わざるを得ない状況に溜息をつきたくなったのだが、この場面でそうしてしまうと違う意味で捉えられてしまうと思い自重する。
その代わり、アルはゾランからの模擬戦を受けることにした。
「……分かった、その模擬戦を受ければいいんだろう」
「当然だ! 貴様など、このザーラッド家の俺様が叩き潰してやる!」
「それで、勝敗はどのように付けるんだ?」
模擬戦をやるならルールを決めているだろうと聞いてみたのだが、何故だかゾランは腕組みをしたまま言葉に詰まってしまう。
「……おい。勝敗は、ルールはどうなっているんだ?」
「……そうだなぁ……うーん……」
「いや、決めてなかったのかよ!」
これにはアルも呆れるしかなかった。
教室に入るなり模擬戦を申し込んできたのだから、当然ルールも決まっていると思うのが普通である。
この状況に後ろから見ていたペリナも頭を抱えている姿がアルからは見えており、仕方なく助け舟を出すことにしたようだ。
「それでは、こういうのはどうかしら。ルールは至極単純に、相手が行動不能になるか負けを認めること。反則行為としては、即死レベルの魔法を使わないこと。Fクラスでそんな強力な魔法を使える人はいないと思うけど、念のためにこのルールもつけておくわ」
「そ、それでいこう!」
「でしたらスプラウスト先生、一つ質問があります」
「なんですか、アル君?」
「攻撃の方法は魔法だけですか?」
「「……はい?」」
アルの質問にはペリナだけではなくゾランも驚きの声を漏らしていた。
「……いえ、結構です。失礼しました」
そして、二人の反応を見たアルは質問を取り下げて魔法で勝負することを決めた。
(当然だが、やっぱり剣術とか武術は想定されていないようだな)
ここで剣術を見せてしまうと、さらに批判が大きくなるだろう。
これがアルだけの都合であれば気にならないのだが、リリーナやクルル、そしてエルクたちの学園生活にも影響が出ることを考えると、この世界における正当な方法で勝利することが必要になってくる。
「審判は私がやってあげるわ」
「授業はいいんですか? 座学はやるって言ってましたけど」
「この模擬戦だけよ。それ以降は教室に戻ってくるし……他の生徒も興味津々みたいだしね」
言われて生徒たちの方へ視線を向けると、全員が移動する準備を終えてこちらを見ている。
リリーナたちだけは心配そうに見ていたのだが、アルは苦笑を返すにとどめた。
「叩き潰してやるからな!」
「そうか。まあ、良い試合にしようじゃないか」
「き、貴様! さっさと行くぞ!」
ゾランは大股で歩き出し、それに追従して取り巻きも教室を後にした。
その姿を見送ると、他の生徒たちもゾロゾロと移動を開始する。
リリーナたちはこちらに来たそうにしていたのだが、手を振ることで来なくていいことを示すとそのまま出ていった。
「……これでよかったのかしら?」
「えぇ、ありがとうございます、スプラウスト先生」
「私は学園長に相談して、第五魔道場を確保しただけだから構わないんだけどねー。……それと、本当に勝てるの?」
ペリナの心配そうな声に、アルは意外感を覚えていた。
「スプラウスト先生からそんな言葉が飛び出すとは思いませんでしたよ」
「あら失礼ね。これでも生徒のことを心配しているんだからねー」
「ということは、ゾランの属性レベルはFクラスでも高い方ってことですか」
「……あまり塩を送るような真似はしたくないけど、そういうことよ。クルルさんと同等、といえば分かるかしら」
クルルの属性でレベルが一番高いのは火属性のレベル3。
ということは、ゾランにもレベル3の属性があるということだとアルは理解した。
「まあ、なんとかしてみせますよ」
「本当にお願いよ」
「……何かあるんですか?」
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「……学園長が、アル君に何かあったらただじゃおかないって、脅してきたのよ! だから、絶対に勝ってちょうだいよね! それも一切の怪我もなく、快勝だからね!」
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残されたアルは、肩を竦めるしかなかった。
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