111 / 361
魔法学園
ダンジョン・一三階層
しおりを挟む
火山のダンジョンに変わりはない。だが、その空気感は肌を指すようにピリピリとした緊張を孕んでいる。
足を踏み入れただけで理解した。この階層には、何かがいると。
「……アル君、危険だと判断したら、即座に戻るのよ」
「それはスプラウスト先生にも言えることですよね」
「私が逃げる時間を稼ぐと言っているの。この階層は、何かがおかしいわ」
ペリナも同様に何かを感じ取っているのだと理解したアルは、改めて周囲に視線を向ける。
一二階層と同様に魔獣の姿はなく、頻繁に遭遇していた特殊個体ですら姿を現さない。
この異常事態を巻き起こした犯人がこの階層にいるとなれば、そいつを倒さなければダンジョンの特殊個体を倒したところで減少するどころか増え続けるだろう。
「……奥、何かいます」
そんな中、アルが何かの気配を感じ取り足を止めると、ペリナも息を呑みゆっくりと横に並び同じ方向を見る。
するとそこには逃げ遅れたのだろうか、魔獣を喰らう一際大きな魔獣の姿を確認することができた。
頭は蜥蜴のように縦長、二足歩行で立ち両手で魔獣の死骸をしっかりと握り喰らっている。
体長は二メートルほど、細身のように見えるがその実は鋼のような筋肉でその身を覆っていた。
「……ソ、ソウルイーター。何故このダンジョンにそんな魔獣が?」
「スプラウスト先生は知っているんですか?」
ソウルイーターは通称──同族喰いと呼ばれている魔獣。
魔獣が魔獣を食べることはよくあることだが、積極的にそうしている魔獣はそう多くない。
魔獣が喰らうのは人間であり動物だ。本当に飢餓に苦しむ状況となれば致し方なく同族を喰らうことがある。
ただし、ダンジョンに生息する魔獣は地上の魔獣とは異なりダンジョン内に浮遊している魔力を体内に取り込むことで飢餓を凌いでいる。
だが、ソウルイーターは飢餓に苦しむ状況でなくとも積極的に同族を喰らい自己満足感を満たす数少ない魔獣だ。
生息地域も少なく、ダンジョンではほとんど目撃例のない魔獣でもあり、ペリナが驚くのも無理はなかった。
「ただ同族を喰らうだけなら問題はないんだけど、ソウルイーターの特徴はそれだけではないのよ」
「というと?」
「あいつは──周囲の魔獣にも同様の飢餓感を与えて同族を喰らわせてしまう。そして、同族を喰らった魔獣から特異個体が生まれてしまうのよ」
特殊個体が生まれる方法には諸説あるが、最有力とされているのが同族を喰らいその力を体内に蓄えることで進化するというものだ。
見た目は進化前とほとんど変わらず、それでいて巨大化し身体能力も格段に上昇することからそのように考えられている。
しかし、その考えだと一つの疑問が生まれてしまう。
「もしそうだとしたら、目の前のソウルイーターも特殊個体ということになりませんか? それも、相当前から」
ソウルイーターは同族を喰らう。それも、自己満足感を得るために積極的に。
他の魔獣を喰らうことで力を体内に蓄えるのであれば、多くの魔獣を喰らえばそれだけ力を蓄え強くなるということだ。
目の前の個体がどのようにして学園のダンジョンに現れたのかは分からないが、現れてから今日までずっと魔獣を喰らい続けていたのであれば、その強さは今まで戦ってきた特殊個体の比ではないかもしれない。
「ソウルイーターは強い。それはアル君が懸念する通りに魔獣を喰らっているからだと言われているわ。それに、ここに来るまでの間に相当な数の特殊個体がいたことを考えると、その特殊個体ですら喰らっている可能性もある」
「つまり、ソウルイーターの中でもずば抜けて強い個体かもしれないってことですか」
「……そうなるわね」
相手が強敵だと理解したアルは、頭の中で今取れる最前の初手を考えていた。
ソウルイーターは食事に夢中でこちらには気付いていなかった。ならば確実に当てることのできる最大の攻撃を初手からぶつけるべきだと判断する。
「……スプラウスト先生。ソウルイーターに気づかれることなく、あいつの周囲を土の壁で固めることはできますか?」
「できるわ」
一切の迷いなく、ペリナは即座に答えて見せた。
「分かりました。でしたら、俺の合図で頭上だけを開けた土の壁をお願いします」
「アル君はどうするの?」
「俺に放てる最速最強の魔法を叩き込むだけです」
「……勝算は?」
「分かりません。俺はソウルイーターと戦うのは初めてですから。ですが、これで決めきれなくても真っ向から戦えばいいだけの話ですよ」
「……全く、さすがは学園長が認めた生徒だわ。それじゃあ、私はアル君の魔法の威力が漏れないように全力で土の壁を作らせてもらいますよ」
「頼りにしてます、スプラウスト先生」
「それはこっちのセリフよ」
お互いに大きく頷き合うと、視線をソウルイーターへと向けた。
もうすぐ食事を終えて動き出すだろう。その前に初手をぶつけて仕留める、あるいは相応のダメージを与えなければならない。チャンスを一度切り。
アルは右手を上げたまましばらく動きを止め──そして振り下ろした。
足を踏み入れただけで理解した。この階層には、何かがいると。
「……アル君、危険だと判断したら、即座に戻るのよ」
「それはスプラウスト先生にも言えることですよね」
「私が逃げる時間を稼ぐと言っているの。この階層は、何かがおかしいわ」
ペリナも同様に何かを感じ取っているのだと理解したアルは、改めて周囲に視線を向ける。
一二階層と同様に魔獣の姿はなく、頻繁に遭遇していた特殊個体ですら姿を現さない。
この異常事態を巻き起こした犯人がこの階層にいるとなれば、そいつを倒さなければダンジョンの特殊個体を倒したところで減少するどころか増え続けるだろう。
「……奥、何かいます」
そんな中、アルが何かの気配を感じ取り足を止めると、ペリナも息を呑みゆっくりと横に並び同じ方向を見る。
するとそこには逃げ遅れたのだろうか、魔獣を喰らう一際大きな魔獣の姿を確認することができた。
頭は蜥蜴のように縦長、二足歩行で立ち両手で魔獣の死骸をしっかりと握り喰らっている。
体長は二メートルほど、細身のように見えるがその実は鋼のような筋肉でその身を覆っていた。
「……ソ、ソウルイーター。何故このダンジョンにそんな魔獣が?」
「スプラウスト先生は知っているんですか?」
ソウルイーターは通称──同族喰いと呼ばれている魔獣。
魔獣が魔獣を食べることはよくあることだが、積極的にそうしている魔獣はそう多くない。
魔獣が喰らうのは人間であり動物だ。本当に飢餓に苦しむ状況となれば致し方なく同族を喰らうことがある。
ただし、ダンジョンに生息する魔獣は地上の魔獣とは異なりダンジョン内に浮遊している魔力を体内に取り込むことで飢餓を凌いでいる。
だが、ソウルイーターは飢餓に苦しむ状況でなくとも積極的に同族を喰らい自己満足感を満たす数少ない魔獣だ。
生息地域も少なく、ダンジョンではほとんど目撃例のない魔獣でもあり、ペリナが驚くのも無理はなかった。
「ただ同族を喰らうだけなら問題はないんだけど、ソウルイーターの特徴はそれだけではないのよ」
「というと?」
「あいつは──周囲の魔獣にも同様の飢餓感を与えて同族を喰らわせてしまう。そして、同族を喰らった魔獣から特異個体が生まれてしまうのよ」
特殊個体が生まれる方法には諸説あるが、最有力とされているのが同族を喰らいその力を体内に蓄えることで進化するというものだ。
見た目は進化前とほとんど変わらず、それでいて巨大化し身体能力も格段に上昇することからそのように考えられている。
しかし、その考えだと一つの疑問が生まれてしまう。
「もしそうだとしたら、目の前のソウルイーターも特殊個体ということになりませんか? それも、相当前から」
ソウルイーターは同族を喰らう。それも、自己満足感を得るために積極的に。
他の魔獣を喰らうことで力を体内に蓄えるのであれば、多くの魔獣を喰らえばそれだけ力を蓄え強くなるということだ。
目の前の個体がどのようにして学園のダンジョンに現れたのかは分からないが、現れてから今日までずっと魔獣を喰らい続けていたのであれば、その強さは今まで戦ってきた特殊個体の比ではないかもしれない。
「ソウルイーターは強い。それはアル君が懸念する通りに魔獣を喰らっているからだと言われているわ。それに、ここに来るまでの間に相当な数の特殊個体がいたことを考えると、その特殊個体ですら喰らっている可能性もある」
「つまり、ソウルイーターの中でもずば抜けて強い個体かもしれないってことですか」
「……そうなるわね」
相手が強敵だと理解したアルは、頭の中で今取れる最前の初手を考えていた。
ソウルイーターは食事に夢中でこちらには気付いていなかった。ならば確実に当てることのできる最大の攻撃を初手からぶつけるべきだと判断する。
「……スプラウスト先生。ソウルイーターに気づかれることなく、あいつの周囲を土の壁で固めることはできますか?」
「できるわ」
一切の迷いなく、ペリナは即座に答えて見せた。
「分かりました。でしたら、俺の合図で頭上だけを開けた土の壁をお願いします」
「アル君はどうするの?」
「俺に放てる最速最強の魔法を叩き込むだけです」
「……勝算は?」
「分かりません。俺はソウルイーターと戦うのは初めてですから。ですが、これで決めきれなくても真っ向から戦えばいいだけの話ですよ」
「……全く、さすがは学園長が認めた生徒だわ。それじゃあ、私はアル君の魔法の威力が漏れないように全力で土の壁を作らせてもらいますよ」
「頼りにしてます、スプラウスト先生」
「それはこっちのセリフよ」
お互いに大きく頷き合うと、視線をソウルイーターへと向けた。
もうすぐ食事を終えて動き出すだろう。その前に初手をぶつけて仕留める、あるいは相応のダメージを与えなければならない。チャンスを一度切り。
アルは右手を上げたまましばらく動きを止め──そして振り下ろした。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる