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少し早い夏休み
剣を作るために
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捻れた角と相性の良い鉱石を調べるのに時間は掛からず、三日で結果は判明した。
再びレオンの部屋に呼び出されてそれを教えられたアルは喜んだが、事はそう単純ではなかった。
鉱石に関していえば単に調べただけであり見つかったわけではなく、むしろそれよりも悪い結果かもしれない。
「鉱石が購入できない、ですか?」
どういうことかと聞き返したアルに対してラミアンが説明を始めた。
「特殊な性質を持った鉱石が必要らしいのよ。氷岩石という名前の鉱石なんだけど、一定の温度以下の場所に一分以上放置すると劣化が始まる鉱石なの」
「そんな鉱石、どうやって運ぶんですか?」
「必要になるのは氷岩石を運搬するためだけに特化した専用の箱か、アイテムボックス」
「アイテムボックスなら俺が持ってますけど?」
アルの言葉にラミアンは首を横に振った。
「アイテムボックスはとても高価なものだから、誰かに依頼するにしても預けるなんてしないものなのよ」
「使用者権限が付いているから問題ないんじゃ……って、そうか」
「そう。権限があるから、そのまま預けても氷岩石を入れられない。かといって権限を外してしまうと盗まれる危険性がある」
「うーん、アイテムボックスを持っている人に依頼することはできないんですか?」
「言ったでしょう? アイテムボックスはとても高価もの、冒険者に依頼するにしても相当ランクの高い冒険者しか持ってないでしょうし、そうなると依頼料も高くなってしまうのよ」
当主になるわけでもない三男のために使えるお金などたかが知れている。それも剣を作るという学園とは無関係のものとなればなおさらだ。
「……だったら、俺が採りに行けばいいんじゃないですか?」
そう提案したアルだったが、ラミアンも横で話を聞いていたレオンも大きな溜息をついていた。
「やはり、そうなるか」
「まあ、アルですものね」
「二人とも、なんで溜息を? というか、他に方法はないですよね?」
アルとしては最善の提案をしたつもりだったのだが、他にも方法があるのかと疑問を感じてしまう。
「いや、アルの言う通りだ。しかし、氷岩石は簡単に採りに行けるような場所にはないのだよ」
「極寒の場所とか、標高の高い山の上とかでしょうか?」
「……その両方です」
「……えっ?」
「ユージュラッドよりも北、さらにいえばカーザリアの最北端にそびえる氷雷山の山頂でしか採掘できない特殊な鉱石なのだよ」
氷雷山は足を踏み入れた者を氷付けにして生きたまま殺すと言われており、数ある山々の中でも死の危険が高い山の一つ。
登頂するには寒さ対策だけではなく、山頂に住み着いている魔獣対策として落雷の対策も必要だ。
ここで万全の対策をしたとしても単純に山道を登りきる体力も必要となってくる。
アルの言う通りではあるのだが、事はそう単純ではなかった。
「アルが冒険者になることを許しはしたが、今はまだ私の庇護下にある。わざわざ息子を死の危険が高い場所に向かわせることを許可できるわけがないだろう」
レオンの言うことはもっともである。
しかし、アルとしては最良の剣が手に入る機会をみすみす逃がすわけにはいかなかった。
「ならば、どうしたら向かってもよろしいですか?」
「……向かわないという選択肢はないのか?」
「ありません。魔法剣に耐えることができる剣を手に入れるためなら」
睨み合うアルとレオン。
しばらくそんな時間が続いていたのだが、ピリつく時間を破ったのは──
「はいはい、あなたもアルもそんな怖い顔をしないの」
ラミアンが穏やかな声を響かせながら二人の視線の間に顔を突っ込んできた。
「……ラミアン、お前なぁ」
「どうせ認めるつもりなんだから試すようなことはしないの」
「……えっ?」
「アルもムキになったりしないようにね」
まさかの暴露にレオンは手で顔を覆い、アルは口を開けたまま固まってしまう。
「一応、条件付きだけどね」
「条件?」
「……こちらが用意する護衛と共に向かうこと。そして──本気のチグサから一本取ること。この二つだ」
一つ目の条件は全く問題はない。むしろ、護衛と言うことは冒険者である可能性も高いので色々と情報を得ることができるかもしれない。
そして二つ目の条件は──
「やります! 本気のチグサさんということは、魔法を使ったということですよね!」
「そ、そうだが、何故にそこまで嬉しそうなんだ?」
「ふふふ、チグサさんはずっと魔法を使ってくれませんでしたから、今から楽しみになりましたよ!」
「……そ、そうか」
アルの反応があまりに予想外だったのか、レオンは少しばかり引いている。
その様子を見ていたラミアンはクスクスと笑い声を漏らしていた。
「アルのことを甘く見ていたようですね、あなた」
「……そのようだな」
「何か言いましたか、父上?」
「いや、なんでもない。ただし、条件を達成できなければ氷雷山行きはなしだぞ」
「はい!」
楽しみが増えたアルは、翌日からより一層気を引き締めて鍛練に励むのだった。
再びレオンの部屋に呼び出されてそれを教えられたアルは喜んだが、事はそう単純ではなかった。
鉱石に関していえば単に調べただけであり見つかったわけではなく、むしろそれよりも悪い結果かもしれない。
「鉱石が購入できない、ですか?」
どういうことかと聞き返したアルに対してラミアンが説明を始めた。
「特殊な性質を持った鉱石が必要らしいのよ。氷岩石という名前の鉱石なんだけど、一定の温度以下の場所に一分以上放置すると劣化が始まる鉱石なの」
「そんな鉱石、どうやって運ぶんですか?」
「必要になるのは氷岩石を運搬するためだけに特化した専用の箱か、アイテムボックス」
「アイテムボックスなら俺が持ってますけど?」
アルの言葉にラミアンは首を横に振った。
「アイテムボックスはとても高価なものだから、誰かに依頼するにしても預けるなんてしないものなのよ」
「使用者権限が付いているから問題ないんじゃ……って、そうか」
「そう。権限があるから、そのまま預けても氷岩石を入れられない。かといって権限を外してしまうと盗まれる危険性がある」
「うーん、アイテムボックスを持っている人に依頼することはできないんですか?」
「言ったでしょう? アイテムボックスはとても高価もの、冒険者に依頼するにしても相当ランクの高い冒険者しか持ってないでしょうし、そうなると依頼料も高くなってしまうのよ」
当主になるわけでもない三男のために使えるお金などたかが知れている。それも剣を作るという学園とは無関係のものとなればなおさらだ。
「……だったら、俺が採りに行けばいいんじゃないですか?」
そう提案したアルだったが、ラミアンも横で話を聞いていたレオンも大きな溜息をついていた。
「やはり、そうなるか」
「まあ、アルですものね」
「二人とも、なんで溜息を? というか、他に方法はないですよね?」
アルとしては最善の提案をしたつもりだったのだが、他にも方法があるのかと疑問を感じてしまう。
「いや、アルの言う通りだ。しかし、氷岩石は簡単に採りに行けるような場所にはないのだよ」
「極寒の場所とか、標高の高い山の上とかでしょうか?」
「……その両方です」
「……えっ?」
「ユージュラッドよりも北、さらにいえばカーザリアの最北端にそびえる氷雷山の山頂でしか採掘できない特殊な鉱石なのだよ」
氷雷山は足を踏み入れた者を氷付けにして生きたまま殺すと言われており、数ある山々の中でも死の危険が高い山の一つ。
登頂するには寒さ対策だけではなく、山頂に住み着いている魔獣対策として落雷の対策も必要だ。
ここで万全の対策をしたとしても単純に山道を登りきる体力も必要となってくる。
アルの言う通りではあるのだが、事はそう単純ではなかった。
「アルが冒険者になることを許しはしたが、今はまだ私の庇護下にある。わざわざ息子を死の危険が高い場所に向かわせることを許可できるわけがないだろう」
レオンの言うことはもっともである。
しかし、アルとしては最良の剣が手に入る機会をみすみす逃がすわけにはいかなかった。
「ならば、どうしたら向かってもよろしいですか?」
「……向かわないという選択肢はないのか?」
「ありません。魔法剣に耐えることができる剣を手に入れるためなら」
睨み合うアルとレオン。
しばらくそんな時間が続いていたのだが、ピリつく時間を破ったのは──
「はいはい、あなたもアルもそんな怖い顔をしないの」
ラミアンが穏やかな声を響かせながら二人の視線の間に顔を突っ込んできた。
「……ラミアン、お前なぁ」
「どうせ認めるつもりなんだから試すようなことはしないの」
「……えっ?」
「アルもムキになったりしないようにね」
まさかの暴露にレオンは手で顔を覆い、アルは口を開けたまま固まってしまう。
「一応、条件付きだけどね」
「条件?」
「……こちらが用意する護衛と共に向かうこと。そして──本気のチグサから一本取ること。この二つだ」
一つ目の条件は全く問題はない。むしろ、護衛と言うことは冒険者である可能性も高いので色々と情報を得ることができるかもしれない。
そして二つ目の条件は──
「やります! 本気のチグサさんということは、魔法を使ったということですよね!」
「そ、そうだが、何故にそこまで嬉しそうなんだ?」
「ふふふ、チグサさんはずっと魔法を使ってくれませんでしたから、今から楽しみになりましたよ!」
「……そ、そうか」
アルの反応があまりに予想外だったのか、レオンは少しばかり引いている。
その様子を見ていたラミアンはクスクスと笑い声を漏らしていた。
「アルのことを甘く見ていたようですね、あなた」
「……そのようだな」
「何か言いましたか、父上?」
「いや、なんでもない。ただし、条件を達成できなければ氷雷山行きはなしだぞ」
「はい!」
楽しみが増えたアルは、翌日からより一層気を引き締めて鍛練に励むのだった。
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