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少し早い夏休み
魔法装具師④
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アルが所望しているのは剣の形をした魔法装具なのだが、剣としての機能がより重要となってくる。
ということで、自分が一番使いやすいサイズを伝えるためにソードゼロを取り出してベルに手渡した。
「貴族が剣術かぁ……ラミアンに聞いていたけど、本当に変な子だね、アルっちは」
「冒険者と生きるなら絶対に必要な技術ですからね。それと、最初からアルっちと呼んでますけど変えてくれませんか?」
「なんで? 可愛いじゃない」
「恥ずかしいんですけど」
「あはは。それじゃあ、他に要望はあるかな、アルっち?」
「……もういいです」
頑固者は頑固者を理解しているのか、アルは早々と呼び方を変えてもらうことを諦めて要望を伝えることにした。
「母上からは氷岩石があればデーモンナイトの剛角を使って剣としても使える魔法装具を作れると伺ってますが間違いありませんか?」
「間違いないわ。ただし、剣の部分は私の門外漢だから知り合いの鍛冶師にお願いしることになるけど」
「作業が分かれるんですか?」
魔法装具の作り方を知らないアルとしては全ての作業をベルが一人で行うと思っていたので驚いた。
「最終的な掛け合わせは私がやるんだけど、より万全を期すためにね。最良な分量が分かったらその分の剣を鍛冶師に作ってもらって、私が掛け合わせるのよ」
「鍛冶師ってことは、鉱石の氷岩石で剣を打つってことですよね? その、大丈夫なんですか?」
氷岩石は常温に一分以上放置すると融ける性質を持つ特別な鉱石だ。
そんな鉱石を火にくべたりしたら一瞬にして融けてしまいそうだと心配になったのあが、そこにも特別な技術が必要になるのだと教えてくれた。
「一般的に知られているところで言うと、氷岩石は確かに一分以上放置すると融けてしまうけど、一気に融点まで持っていくことができれば鉱石として加工することも可能なのよ」
「そうなんですか?」
「うん。まあ、特別な素材は特別な加工方法があるってことかしらね」
アルが剣術に詳しいように、魔法装具師や鍛冶師にはそれぞれの世界でしか知りえないことを知っている。
当然だと納得したアルは詮索を止めることにし、剣がしっかり出来上がるなら要望はないと口にする。
それとは別に出来上がりがいつ頃になるのかを聞いてみた。
「鍛冶師の都合もあるからどうかしら……もしかしたら今月末くらい、夏休み終了に間に合うかどうかってところかしら」
「急がなくて大丈夫ですよ。学園では使えませんし」
「まあ、そうでしょうね。あれ? でも、オールブラックは使っているのよね?」
「あはは、実は使うような場面になかなか遭遇しなくて使ってなかったんですよね」
「へぇー、優秀なのね」
「いやいや、俺はFクラスですから」
「Fクラスの学生が魔法装具を二本持ちだなんて、聞く人間が聞いたら嫌味に聞こえるかもしれないわね」
呆れながらそう口にしたベルだったが、アルとしては自分のことなので心配の種ではある。
事実、アルがオールブラックを持っていることは学生にも知られているのだが、最初の頃はゾランを中心に嫌味を言われたものだ。
まあ、その時点でアミルダから雷を落とされた後だったのでこそこそ言われた程度なのだが。
「なんにせよ、オールブラックも含めて新しい魔法装具も使われてなんぼだから、なるべく使ってあげてよね」
「分かりました。そうそう、オールブラックのオプションについてなんですが……」
「そうだったわね。オプションの追加はすぐに済むから終わらせちゃいますか」
そう口にしたベルは作業台の引き出しから長方形の形をした半透明な青色の素材を取り出した。
「リーンさん、それが何なのか聞いてもいいですか?」
「これ? これはスライムクッションっていう素材よ。衝撃吸収に優秀な素材で、私が開発したものよ」
「えっ!」
「うふふ、少しは尊敬してくれたかしらん?」
得意げに話をしながら右手にオールブラック、左手にスライムクッションを持ったベルは目を閉じて意識を集中し始めた。
すると、魔力が白い光となって両手に顕現するとそれぞれを包み込むようにして移動していく。
魔力が完全にオールブラックとスライムクッションに移動したのを見計らい、ベルは両方を目の前で重ね合わせた。
「二つが、くっついた?」
「うふふ、これが素材同士を掛け合わせるということよ」
スライムクッションが形を変えてオールブラックを包み込むと、青色をしてたのが無色となり、そのままオールブラックに吸収されたようにアルには見えた。
しばらくすると魔力が徐々に薄れていき、最後には消えてしまった。
「……よし、これで終わりよ」
「あの、スライムクッションはどこへ消えたんですか? オールブラックに吸収されたように見えたんですが?」
「おぉ、鋭いわね、アルっちは。ご明察、オールブラックに吸収されたのよ」
掛け合わせる場合、主となる素材と副となる素材に分けられる。
副となる素材は主となる素材に吸収され、その性能がそのまま引き継がれる。
今回で言うと主となる素材がオールブラックであり、副となる素材のスライムクッションの性能を引き継いで耐久力が強化されたということだった。
「これも魔力の量を間違えたら素材が弾かれて失敗したり、最悪の場合には両方が壊れたりするから緊張するのよねー」
「こ、壊れるって……」
「だから、魔法装具に関しては信頼できる魔法装具師を見つけたら贔屓にするのが鉄則なのよ」
「あら、アルに自分を売り込んでいるのかしら?」
「えへへ、バレちゃった?」
オールブラックをアルに返しながらベルが舌を出しておどけてみせる。
だが、アルとしては目の前の作業風景を見てベルのことを信頼できると判断していた。
「それじゃあ、魔法装具で何か分からないことがあったら顔を出してもいいですか?」
「構わないわよ。ラミアンの息子さんだし、お安くしちゃうわ」
「ありがとうございます!」
「出来上がったらすぐに連絡するから、楽しみにしておいてちょうだいね!」
ベルに笑顔で見送られながら、アルとラミアンはお店を後にしたのだった。
ということで、自分が一番使いやすいサイズを伝えるためにソードゼロを取り出してベルに手渡した。
「貴族が剣術かぁ……ラミアンに聞いていたけど、本当に変な子だね、アルっちは」
「冒険者と生きるなら絶対に必要な技術ですからね。それと、最初からアルっちと呼んでますけど変えてくれませんか?」
「なんで? 可愛いじゃない」
「恥ずかしいんですけど」
「あはは。それじゃあ、他に要望はあるかな、アルっち?」
「……もういいです」
頑固者は頑固者を理解しているのか、アルは早々と呼び方を変えてもらうことを諦めて要望を伝えることにした。
「母上からは氷岩石があればデーモンナイトの剛角を使って剣としても使える魔法装具を作れると伺ってますが間違いありませんか?」
「間違いないわ。ただし、剣の部分は私の門外漢だから知り合いの鍛冶師にお願いしることになるけど」
「作業が分かれるんですか?」
魔法装具の作り方を知らないアルとしては全ての作業をベルが一人で行うと思っていたので驚いた。
「最終的な掛け合わせは私がやるんだけど、より万全を期すためにね。最良な分量が分かったらその分の剣を鍛冶師に作ってもらって、私が掛け合わせるのよ」
「鍛冶師ってことは、鉱石の氷岩石で剣を打つってことですよね? その、大丈夫なんですか?」
氷岩石は常温に一分以上放置すると融ける性質を持つ特別な鉱石だ。
そんな鉱石を火にくべたりしたら一瞬にして融けてしまいそうだと心配になったのあが、そこにも特別な技術が必要になるのだと教えてくれた。
「一般的に知られているところで言うと、氷岩石は確かに一分以上放置すると融けてしまうけど、一気に融点まで持っていくことができれば鉱石として加工することも可能なのよ」
「そうなんですか?」
「うん。まあ、特別な素材は特別な加工方法があるってことかしらね」
アルが剣術に詳しいように、魔法装具師や鍛冶師にはそれぞれの世界でしか知りえないことを知っている。
当然だと納得したアルは詮索を止めることにし、剣がしっかり出来上がるなら要望はないと口にする。
それとは別に出来上がりがいつ頃になるのかを聞いてみた。
「鍛冶師の都合もあるからどうかしら……もしかしたら今月末くらい、夏休み終了に間に合うかどうかってところかしら」
「急がなくて大丈夫ですよ。学園では使えませんし」
「まあ、そうでしょうね。あれ? でも、オールブラックは使っているのよね?」
「あはは、実は使うような場面になかなか遭遇しなくて使ってなかったんですよね」
「へぇー、優秀なのね」
「いやいや、俺はFクラスですから」
「Fクラスの学生が魔法装具を二本持ちだなんて、聞く人間が聞いたら嫌味に聞こえるかもしれないわね」
呆れながらそう口にしたベルだったが、アルとしては自分のことなので心配の種ではある。
事実、アルがオールブラックを持っていることは学生にも知られているのだが、最初の頃はゾランを中心に嫌味を言われたものだ。
まあ、その時点でアミルダから雷を落とされた後だったのでこそこそ言われた程度なのだが。
「なんにせよ、オールブラックも含めて新しい魔法装具も使われてなんぼだから、なるべく使ってあげてよね」
「分かりました。そうそう、オールブラックのオプションについてなんですが……」
「そうだったわね。オプションの追加はすぐに済むから終わらせちゃいますか」
そう口にしたベルは作業台の引き出しから長方形の形をした半透明な青色の素材を取り出した。
「リーンさん、それが何なのか聞いてもいいですか?」
「これ? これはスライムクッションっていう素材よ。衝撃吸収に優秀な素材で、私が開発したものよ」
「えっ!」
「うふふ、少しは尊敬してくれたかしらん?」
得意げに話をしながら右手にオールブラック、左手にスライムクッションを持ったベルは目を閉じて意識を集中し始めた。
すると、魔力が白い光となって両手に顕現するとそれぞれを包み込むようにして移動していく。
魔力が完全にオールブラックとスライムクッションに移動したのを見計らい、ベルは両方を目の前で重ね合わせた。
「二つが、くっついた?」
「うふふ、これが素材同士を掛け合わせるということよ」
スライムクッションが形を変えてオールブラックを包み込むと、青色をしてたのが無色となり、そのままオールブラックに吸収されたようにアルには見えた。
しばらくすると魔力が徐々に薄れていき、最後には消えてしまった。
「……よし、これで終わりよ」
「あの、スライムクッションはどこへ消えたんですか? オールブラックに吸収されたように見えたんですが?」
「おぉ、鋭いわね、アルっちは。ご明察、オールブラックに吸収されたのよ」
掛け合わせる場合、主となる素材と副となる素材に分けられる。
副となる素材は主となる素材に吸収され、その性能がそのまま引き継がれる。
今回で言うと主となる素材がオールブラックであり、副となる素材のスライムクッションの性能を引き継いで耐久力が強化されたということだった。
「これも魔力の量を間違えたら素材が弾かれて失敗したり、最悪の場合には両方が壊れたりするから緊張するのよねー」
「こ、壊れるって……」
「だから、魔法装具に関しては信頼できる魔法装具師を見つけたら贔屓にするのが鉄則なのよ」
「あら、アルに自分を売り込んでいるのかしら?」
「えへへ、バレちゃった?」
オールブラックをアルに返しながらベルが舌を出しておどけてみせる。
だが、アルとしては目の前の作業風景を見てベルのことを信頼できると判断していた。
「それじゃあ、魔法装具で何か分からないことがあったら顔を出してもいいですか?」
「構わないわよ。ラミアンの息子さんだし、お安くしちゃうわ」
「ありがとうございます!」
「出来上がったらすぐに連絡するから、楽しみにしておいてちょうだいね!」
ベルに笑顔で見送られながら、アルとラミアンはお店を後にしたのだった。
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