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代表選考会
キリアンの提案
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帰宅した屋敷ではキリアンが胸を撫で下ろしていた。
レオンとラミアンが今日の内にアミルダに話を持っていき、その時に今回のトーナメント戦について聞いたのだ。
「スプラウスト先生には強制参加だと言われましたけど、勝ち抜けるかは分かりませんからね?」
「分かっているよ。でも、アルなら問題ないだろう。エミリア先生にも聞いたけど、僕よりも優秀だと聞いているよ」
「まさか、レベル4を持つキリアン兄上よりも優秀なわけがありませんよ」
「だったらレベル3を持つ俺よりも優秀な理由を説明してくれるか?」
「ガ、ガルボ兄上……」
男兄弟が楽しそうに話をしている光景を見ていたアンナはニコニコと笑っており、レオンとラミアンも嬉しそうな笑みを浮かべている。
こうして楽しそうに話をしている姿を見たことがなかったのだから仕方ないだろう。
「本当に、ガルボが素直になってくれて本当によかったわ」
「そうだな。ガルボ、これからは自分だけで抱え込むようなことはするんじゃないぞ」
「はい、父上」
恥ずかしそうにしているガルボに今度はアルが茶化そうかと思ったのだが、そこへアンナが口を開いた。
「アルお兄様! そのトーナメント戦というのは学生以外でも見ることができるんですか?」
「いや、どうだろう。大々的に行われる魔法競技会とは違うから無理じゃないのか?」
「そ、そうですか……」
俯いてしまったアンナに首を傾げていると、落ち込んでしまった理由をラミアンが口にした。
「アンナはねアルの勇姿を見たかったのよね」
「……はい」
「勇姿ってわけじゃないけど、代表になれれば魔法競技会で見れるだろう?」
「そうですけど、私はアルお兄様の素晴らしい姿をもっとたくさん見たいのです! 本気を出した模擬戦だって、夏休みの一回だけだったじゃないですか!」
「いや、そうずっと本気で戦えるわけもないしなぁ」
これは明日にでもペリナに確認する必要があるかと思っていたアルだが、そこへキリアンから予想外の提案が口にされた。
「それなら、僕と模擬戦をしてみないか、アル?」
「キリアン兄上とですか?」
「あぁ。僕はアルの模擬戦を一度も見たことがないし、さらに言えばアルが凄いって話しか聞いていないんだ。そんなアルの凄さを僕も体感したいんだよ」
「あら、それなら私も見てみたいわ」
「私も見たい」
「母上に父上まで……」
アンナとガルボは言わずもがな、その表情から模擬戦を期待しているのが見て取れた。
ここまで期待されて断るわけにもいかないと察したアルはキリアンへ視線を向ける。
「……分かりました。キリアン兄上、胸をお借りしたいと思います」
「あはは、胸を借りるのは僕かもしれないけどね」
そして、明日の午前中に模擬戦を行うことが決まった。
※※※※
食事を終えて部屋に戻ってきたアルは一人になるとキリアンとの模擬戦にワクワクしている自分に気づいていた。
「そういえば、キリアン兄上が魔法を使っているところを見たことがないかも」
キリアンは学園の課題を家に持ち込むようなことはしなかった。全てを授業時間で終わらせて家ではいつも家族の時間を過ごしていた。
それだけ優秀ということでもあるが、そのせいもありアルのように自主練習で魔法を使うこともなかった。
実際には部屋の中で練習をしていたキリアンだったが、誰かに見られるような場所では一切行っていなかったのだが。
「……ヤバい、考えただけでも楽しくなってきたな」
皆の前では仕方なくといった感じで模擬戦を受けたのだが、考えれば考えるほどに楽しくなってくる。
氷雷山でも思ったことだが、自分は根っからの戦闘好きなのだと改めて実感していた。
「そうだ! 明日の模擬戦に向けて、ヴァリアンテ様に祈りを捧げておこう!」
アルは机に置いているヴァリアンテの神像に手を合わせると祈りをささげる。
「……明日の模擬戦が、最高に楽しい時間になりますように」
勝てるように、または成長できるようにではなく、楽しい時間になるようにと願うアル。
その祈りが通じたのかどうかは分からないが、キリアンとの模擬戦はアルの願いを叶えるに足るものになるのだった。
レオンとラミアンが今日の内にアミルダに話を持っていき、その時に今回のトーナメント戦について聞いたのだ。
「スプラウスト先生には強制参加だと言われましたけど、勝ち抜けるかは分かりませんからね?」
「分かっているよ。でも、アルなら問題ないだろう。エミリア先生にも聞いたけど、僕よりも優秀だと聞いているよ」
「まさか、レベル4を持つキリアン兄上よりも優秀なわけがありませんよ」
「だったらレベル3を持つ俺よりも優秀な理由を説明してくれるか?」
「ガ、ガルボ兄上……」
男兄弟が楽しそうに話をしている光景を見ていたアンナはニコニコと笑っており、レオンとラミアンも嬉しそうな笑みを浮かべている。
こうして楽しそうに話をしている姿を見たことがなかったのだから仕方ないだろう。
「本当に、ガルボが素直になってくれて本当によかったわ」
「そうだな。ガルボ、これからは自分だけで抱え込むようなことはするんじゃないぞ」
「はい、父上」
恥ずかしそうにしているガルボに今度はアルが茶化そうかと思ったのだが、そこへアンナが口を開いた。
「アルお兄様! そのトーナメント戦というのは学生以外でも見ることができるんですか?」
「いや、どうだろう。大々的に行われる魔法競技会とは違うから無理じゃないのか?」
「そ、そうですか……」
俯いてしまったアンナに首を傾げていると、落ち込んでしまった理由をラミアンが口にした。
「アンナはねアルの勇姿を見たかったのよね」
「……はい」
「勇姿ってわけじゃないけど、代表になれれば魔法競技会で見れるだろう?」
「そうですけど、私はアルお兄様の素晴らしい姿をもっとたくさん見たいのです! 本気を出した模擬戦だって、夏休みの一回だけだったじゃないですか!」
「いや、そうずっと本気で戦えるわけもないしなぁ」
これは明日にでもペリナに確認する必要があるかと思っていたアルだが、そこへキリアンから予想外の提案が口にされた。
「それなら、僕と模擬戦をしてみないか、アル?」
「キリアン兄上とですか?」
「あぁ。僕はアルの模擬戦を一度も見たことがないし、さらに言えばアルが凄いって話しか聞いていないんだ。そんなアルの凄さを僕も体感したいんだよ」
「あら、それなら私も見てみたいわ」
「私も見たい」
「母上に父上まで……」
アンナとガルボは言わずもがな、その表情から模擬戦を期待しているのが見て取れた。
ここまで期待されて断るわけにもいかないと察したアルはキリアンへ視線を向ける。
「……分かりました。キリアン兄上、胸をお借りしたいと思います」
「あはは、胸を借りるのは僕かもしれないけどね」
そして、明日の午前中に模擬戦を行うことが決まった。
※※※※
食事を終えて部屋に戻ってきたアルは一人になるとキリアンとの模擬戦にワクワクしている自分に気づいていた。
「そういえば、キリアン兄上が魔法を使っているところを見たことがないかも」
キリアンは学園の課題を家に持ち込むようなことはしなかった。全てを授業時間で終わらせて家ではいつも家族の時間を過ごしていた。
それだけ優秀ということでもあるが、そのせいもありアルのように自主練習で魔法を使うこともなかった。
実際には部屋の中で練習をしていたキリアンだったが、誰かに見られるような場所では一切行っていなかったのだが。
「……ヤバい、考えただけでも楽しくなってきたな」
皆の前では仕方なくといった感じで模擬戦を受けたのだが、考えれば考えるほどに楽しくなってくる。
氷雷山でも思ったことだが、自分は根っからの戦闘好きなのだと改めて実感していた。
「そうだ! 明日の模擬戦に向けて、ヴァリアンテ様に祈りを捧げておこう!」
アルは机に置いているヴァリアンテの神像に手を合わせると祈りをささげる。
「……明日の模擬戦が、最高に楽しい時間になりますように」
勝てるように、または成長できるようにではなく、楽しい時間になるようにと願うアル。
その祈りが通じたのかどうかは分からないが、キリアンとの模擬戦はアルの願いを叶えるに足るものになるのだった。
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