最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎

文字の大きさ
253 / 361
魔法競技会

ユージュラッド貴族

しおりを挟む
 アルたちが学園生活を謳歌している中、貴族たちは新たな立ち位置を巡り論争を繰り返していた。
 その理由は、スタンピードによってやむなく取り潰しになってしまった上級、中級貴族が多数存在しているからだ。
 大将首だったフェルモニア討伐に出向いたフットザール家や、それに付き従った貴族たちは全滅。唯一、フットザール家の当主だったジルストスの胴体だけが見つかった。
 そのため、ユージュラッドの貴族たちが我先にと自らの価値を誇張しながら雄弁に語り始めている。
 その相手が誰なのかというと──

「……下がれ」
「で、ですが、ランドルフ様!」
「聞こえなかったのか? 私は下がれと言ったんだ」

 ユージュラッドの中級貴族当主は、ギロリと睨まれたことで言葉を飲み込み、すごすごと部屋を後にした。
 ランドルフと呼ばれた人物がいるのは、ハッシュバーグ家の別宅である。
 ユージュラッドの現状について報告を受けた王様の命によりランドルフは足を運んでいたのだが、滞在するに見合う伝手がユージュラッド魔法学園に入学していたハッシュバーグ家の次男しかいなかった。

「これで終わりか?」
「はい、ランドルフ様」
「ふぅ。迷惑を掛けるな、セドル殿」
「いえいえ、ハッシュバーグ家の別宅に殿下をお泊めできて、光栄にございます」

 連日にわたり貴族からの挨拶と無駄な雄弁を聞かされていた殿下──ランドルフ・カーザリアは、シャツのボタンを一つ外して背もたれに深く体を預ける。
 話し掛けられたセドル・ハッシュバーグは、別宅の執事としてランドルフの世話をしていた。
 本来ならばランドルフ専属の執事が同行する予定だったのだが、急ぎの案件ということもあり、護衛騎士を伴い先んじてユージュラッドに来てしまっていた。
 そこをカバーしているのが、セドルなのである。

「フォルト殿も、今回のスタンピード騒動ではご活躍されたと聞いているよ?」
「はい。私共も、大変嬉しく思っております。良い学友とも巡り会えたようですし、ユージュラッド魔法学園に無理を言って入学したのも、良いご判断だったと今では思っております」
「学友か。……私も、久しぶりにキリアンに会いたいな」

 そして、ランドルフはキリアンと同じ職場で働いている。
 殿下ではあるものの、王族でも一度は必ず現場を経験するべき、というのがカーザリア王族には語り継がれていた。

「ランドルフ様は確か、第一魔法師隊に所属されておりましたね」
「あぁ。優秀な魔法師が集まると聞いていたんだが、私とまともにやり合えるのは、キリアンしかいなかったんだ」

 肩を竦めながらそう口にしたランドルフ。
 セドルも笑みを浮かべながら、冷めてしまった紅茶を下げて新しいカップをテーブルに置く。

「しかし、全く活躍していない貴族ばかり顔を見せに来て、どうして活躍した者たちが現れないんだろうね?」
「貴族ではありますが、権力には興味がないのでございましょう」
「それは、ハッシュバーグ家も同じなのかい?」
「ご当主様なら、大笑いしながら頷くでしょう」
「……だろうな」

 ハッシュバーグ家当主のことを思い出したのか、ランドルフは苦笑を浮かべながら紅茶を口に運ぶ。

「……仕方がない。あちらから来ないのであれば、こちらから伺うとするか」
「あちらも忙しいのでしょう。それに、今は他の貴族が押し寄せてくると分かっておりますから、明日にでも足を運ぶのではございませんか?」
「かもしれんが、あいつらの性格だと、私が戻るギリギリになってしか顔を出さない可能性もある。こちらから行って、驚かせてやろうじゃないか!」
「さようでございますか。でしたら、馬車のご用意をさせていただきます」
「あぁ。助かるよ、セドル殿」

 頭を下げて部屋を後にしたセドル。
 護衛騎士にも一旦部屋を出るように指示を出すと、ランドルフは一人になった部屋の中で大きく息を吐き出した。

「……キリアンにも会いたいが、もう一人、会いたい人物がいるんだよねぇ」

 キリアンがポロリと口にしてしまった弟の存在。
 全属性持ちでありながら、そのレベルは全て1。
 普通なら落ち込んでしまうところだが、キリアンの話では努力を重ね、一年次最初のパーティ訓練で階層攻略の記録を更新したのだとか。

「キリアンが王族の私に嘘をつくはずはないが、やはりこの目で見るまでは信じられないからね」

 先ほどまでの疲れた表情はどこへやら、ランドルフは鋭い視線で窓の外を見つめる。

「見極めさせてもらうよ──アル・ノワール」

 しばらくして、セドルから馬車の用意ができたと報告が入ると、ランドルフのノワール家へと向かったのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...