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魔法競技会
報告と予想外の反応
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三人で観光を楽しんだ後、宿屋に戻るとすぐにペリナへと報告に向かう。
宿屋に到着してからはずっと溜息をついていたクルルだったが、報告を終えた後のペリナの反応は意外なものだった。
「……はぁ。まーた、カーザリア魔法学園かぁ」
「「「……また?」」」
揃った声を漏らすと、ペリナが事情を説明してくれた。
「どうやら、ユージュラッド魔法学園はカーザリア魔法学園から、良く思われていないみたいなのよ」
「何かあったんですか?」
「直接的にはなーんにも。ただ、スタンピード騒動が問題になっているみたいよ」
スタンピードは本来、発見次第王都へ連絡を入れるべき事案である。
一都市だけで鎮圧できるものではないはずなのだが、ユージュラッドは都市の戦力だけでスタンピードを鎮圧し、Sランク相当の魔獣を討伐したと聞いている。
無事でよかったと喜ぶところなのだが、多くの魔法師はこのように考えていた。
──手柄を奪われた。
スタンピードの鎮圧、さらにSランク相当の魔獣を討伐したとなれば、貴族階級を大きく上げることができる。
実際にノワール家は望んではいなかったものの、下級貴族から中級貴族に上がっており、事実を知らないカーザリアの貴族たちはノワール家を羨み、妬んだ。
そして、今回の魔法競技会である。
カーザリア魔法学園の生徒たちは、ユージュラッド魔法学園の代表を圧倒的に潰し、事実を捻じ曲げてでも成果を与えてはならないと考えていた。
「今の話を聞くと、被害に遭っていたのは俺たちだけじゃないってことですか?」
「えぇ、そうよ。フレイアさんとラーミアさんたちも絡まれたみたい。だけど、フォルト君が一緒にいたから大事にはならなかったけどね」
「そうですか。……ガルボ兄上もいたんですよね?」
「そうなのよ。都市内にいたとはいえ、ノワール家というだけで絡まれる可能性もあったから、フォルト君には頭が上がらないわよ」
ハッシュバーグ家は王都に類する貴族であり、上級貴族でもある。
相手がラクスフォード家であれば階級も近いため分からないが、それ以外であれば大いに顔の利く人物だった。
「シエラとジャミール先輩は大丈夫だったんですか?」
「二人はすぐに宿屋に戻ってきてたから、絡まれていないみたいよ。……っていうか、アル君たちと一緒に出て行ったわよね?」
当然の疑問に苦笑を返し、残る二名の代表者についても聞いてみた。
「貴族派の二人はどうだったんですか?」
「絡まれたみたいよ」
「……それで?」
「えっ? それだけよ?」
「「雑過ぎませんか!?」」
ペリナの当然と言った感じの答えに、リリーナとクルルが驚きの声をあげた。
「正直に言うと、絡まれていたけど、何もなかったのよ」
「問題にならなかったってことですか?」
「……これは私の勝手な推測だけど、貴族派の生徒はカーザリア魔法学園の生徒に、情報を流しているんじゃないかって思っているわ」
「まさか……対立しているとはいえ、学園の成績にも関係する魔法競技会で、不利な立場になろうとしますかね?」
アルはあり得ないと思っていたが、ペリナはそうは考えていない。
そして、それはリリーナも同じだった。
「あり得ると思いますよ、アル様」
「ノワール家やエルドア家が珍しいだけで、ほとんどの貴族は階級を上げようと必死になるものなの。おそらく、王都の貴族家から、今後は便宜を図るとかなんとか言われているんじゃないかしらね」
「うげー。やっぱり、貴族って面倒なのねー」
「それを貴族の前で言えるんだから、クルルは大物だよな」
「だから、ちゃんと人は選んでいるっての」
笑いながらそう口にしたクルルに、少しずつ場の空気が緩んでいく。
面倒な話ばかりで疲れていたところだったからか、全員が安堵の息をついていた。
「まあ、みんなが気にすることじゃないけど、外に出たら絡まれる可能性があるってことだけは、頭に入れておいてね」
「そうか……うーん、困ったなぁ」
「どうしたのですか?」
「行ってみたいところがあったの?」
アルの呟きにリリーナとクルルが疑問を口にする。
「ラジェットさんの鍛冶屋で見た剣がなぁ」
「そういえば、シエラと何か見てたわね。あれが欲しいの?」
「あぁ。ただ、30万ゼルドするんだ」
「さ、30万ゼルド!? ……アル君、お金持ちなのねぇ」
呆れた声を漏らしているペリナに、アルは誤解だと訂正する。
「お金は持ってませんよ。だけど、王都の冒険者ギルドで依頼を受ければ、稼げないかなと思っていただけです」
王都で冒険者として活動すると聞いた三人は、顔を見合わせると大きな溜息をついた。
「アル様、それはさすがに無茶ではありませんか?」
「魔法競技会、それも両方に参加するのよ?」
「怪我でもされたら、私がアミルダ先輩に怒られるんですからね!」
「……ダメ?」
「「「ダメです!!」」」
三人から止められてしまい、アルは仕方なくその場では頷いて見せた。
(……でも、欲しいんだよなぁ。魔法装具ではない、純粋な剣)
やるなら内緒で、と心の中で考えていたアルなのだった。
宿屋に到着してからはずっと溜息をついていたクルルだったが、報告を終えた後のペリナの反応は意外なものだった。
「……はぁ。まーた、カーザリア魔法学園かぁ」
「「「……また?」」」
揃った声を漏らすと、ペリナが事情を説明してくれた。
「どうやら、ユージュラッド魔法学園はカーザリア魔法学園から、良く思われていないみたいなのよ」
「何かあったんですか?」
「直接的にはなーんにも。ただ、スタンピード騒動が問題になっているみたいよ」
スタンピードは本来、発見次第王都へ連絡を入れるべき事案である。
一都市だけで鎮圧できるものではないはずなのだが、ユージュラッドは都市の戦力だけでスタンピードを鎮圧し、Sランク相当の魔獣を討伐したと聞いている。
無事でよかったと喜ぶところなのだが、多くの魔法師はこのように考えていた。
──手柄を奪われた。
スタンピードの鎮圧、さらにSランク相当の魔獣を討伐したとなれば、貴族階級を大きく上げることができる。
実際にノワール家は望んではいなかったものの、下級貴族から中級貴族に上がっており、事実を知らないカーザリアの貴族たちはノワール家を羨み、妬んだ。
そして、今回の魔法競技会である。
カーザリア魔法学園の生徒たちは、ユージュラッド魔法学園の代表を圧倒的に潰し、事実を捻じ曲げてでも成果を与えてはならないと考えていた。
「今の話を聞くと、被害に遭っていたのは俺たちだけじゃないってことですか?」
「えぇ、そうよ。フレイアさんとラーミアさんたちも絡まれたみたい。だけど、フォルト君が一緒にいたから大事にはならなかったけどね」
「そうですか。……ガルボ兄上もいたんですよね?」
「そうなのよ。都市内にいたとはいえ、ノワール家というだけで絡まれる可能性もあったから、フォルト君には頭が上がらないわよ」
ハッシュバーグ家は王都に類する貴族であり、上級貴族でもある。
相手がラクスフォード家であれば階級も近いため分からないが、それ以外であれば大いに顔の利く人物だった。
「シエラとジャミール先輩は大丈夫だったんですか?」
「二人はすぐに宿屋に戻ってきてたから、絡まれていないみたいよ。……っていうか、アル君たちと一緒に出て行ったわよね?」
当然の疑問に苦笑を返し、残る二名の代表者についても聞いてみた。
「貴族派の二人はどうだったんですか?」
「絡まれたみたいよ」
「……それで?」
「えっ? それだけよ?」
「「雑過ぎませんか!?」」
ペリナの当然と言った感じの答えに、リリーナとクルルが驚きの声をあげた。
「正直に言うと、絡まれていたけど、何もなかったのよ」
「問題にならなかったってことですか?」
「……これは私の勝手な推測だけど、貴族派の生徒はカーザリア魔法学園の生徒に、情報を流しているんじゃないかって思っているわ」
「まさか……対立しているとはいえ、学園の成績にも関係する魔法競技会で、不利な立場になろうとしますかね?」
アルはあり得ないと思っていたが、ペリナはそうは考えていない。
そして、それはリリーナも同じだった。
「あり得ると思いますよ、アル様」
「ノワール家やエルドア家が珍しいだけで、ほとんどの貴族は階級を上げようと必死になるものなの。おそらく、王都の貴族家から、今後は便宜を図るとかなんとか言われているんじゃないかしらね」
「うげー。やっぱり、貴族って面倒なのねー」
「それを貴族の前で言えるんだから、クルルは大物だよな」
「だから、ちゃんと人は選んでいるっての」
笑いながらそう口にしたクルルに、少しずつ場の空気が緩んでいく。
面倒な話ばかりで疲れていたところだったからか、全員が安堵の息をついていた。
「まあ、みんなが気にすることじゃないけど、外に出たら絡まれる可能性があるってことだけは、頭に入れておいてね」
「そうか……うーん、困ったなぁ」
「どうしたのですか?」
「行ってみたいところがあったの?」
アルの呟きにリリーナとクルルが疑問を口にする。
「ラジェットさんの鍛冶屋で見た剣がなぁ」
「そういえば、シエラと何か見てたわね。あれが欲しいの?」
「あぁ。ただ、30万ゼルドするんだ」
「さ、30万ゼルド!? ……アル君、お金持ちなのねぇ」
呆れた声を漏らしているペリナに、アルは誤解だと訂正する。
「お金は持ってませんよ。だけど、王都の冒険者ギルドで依頼を受ければ、稼げないかなと思っていただけです」
王都で冒険者として活動すると聞いた三人は、顔を見合わせると大きな溜息をついた。
「アル様、それはさすがに無茶ではありませんか?」
「魔法競技会、それも両方に参加するのよ?」
「怪我でもされたら、私がアミルダ先輩に怒られるんですからね!」
「……ダメ?」
「「「ダメです!!」」」
三人から止められてしまい、アルは仕方なくその場では頷いて見せた。
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