305 / 361
魔法競技会
パーティ部門・一日目②
しおりを挟む
ユージュラッド魔法学園の一回戦の相手は、王都から北寄りに位置しているリクルッド魔法学園。
去年は二回戦敗退という成績を残しているが、代表者が総入れ替えになっているので実力は未知数である。
「とりあえず、弟君は休んでおきなさい」
「一回戦は私たちが頑張っちゃうからね!」
「先輩たちがそう言うなら、僕も頑張らないといけないかな~」
未知数であるにもかかわらず、四年次のフレイアとラーミア、三年次のジャミールはアルを温存する構えを見せている。
「先輩たちだけにやらせるわけにはいきません!」
「私もいるわけだし、アルは後ろで見ていなさい」
先輩たちの言葉に焚きつけられたリリーナが口を開くと、シエラは強気な言葉から笑みを浮かべる。
昨日一日、宿屋に籠って話し合いを続けていたのだから休息は十分とっている。
「……分かったが、無理はするなよ」
しかし、五人の心遣いを無下にするのも申し訳ないと考えたアルは、素直に頷くことにした。
陣形はシエラとジャミールが前衛、フレイアとラーミアが中衛、リリーナとアルが後衛となる。
個人部門の戦い方からすると当然アルは前衛なのだが、後衛にいることを目にしたリクルッド魔法学園の面々は怒り心頭だ。
「あいつら、俺たちを舐めてやがる!」
「だが、それだけ俺たちにもチャンスが生まれるという事だ」
「こっちのダブルエースで一人ずつ叩き数的優位を確保、アル・ノワールが最後まで出て来なければ、最後は全員で叩き潰す」
「お前たちが最初の一人をどれだけ早く倒せるかに懸かっている、頼むぞ?」
一際ガタイの良い男子生徒が声を掛けたのは、瓜二つの顔立ちに分け目だけが左右逆の男子生徒二人。
「「お任せください、リーダー」」
全く同じタイミングで返事をすると、リーダーと呼ばれた男子生徒はニヤリと笑う。
「この勝負、我々リクルッド魔法学園の勝利だ」
こちらの陣形はリーダーと双子の男子生徒が前衛、残りは後衛の立ち位置にいる。
両学園が立ち位置についたことを確認した審判が右手を上げる。そして──
「一回戦第四試合──開始!」
開始と同時に動いたのはリーダーの男子生徒。
心の属性である土魔法、アーススピアを広範囲に放ち障害物を破壊しながら土の槍が前衛の二人に迫っていく。
中衛に位置するラーミアがアースウォールで正面からの攻撃を防いだものの、左右の地面や障害物はボロボロになっている。
「フレイムランス」
「ヘビーフォール」
直後、双子の魔法が正面のアースウォールを避けるように左右と上から襲い掛かって来た。
弧を描いて左右から迫るフレイムランス。
上から落とされる超質量のヘビーフォール。
軌道、質量、どれを見ても相当量の魔力が注がれており、魔力操作も卓越している。
((先に姿を見せた方から仕留めるぞ!))
双子の思考は全く同じものだった。
シエラか、ジャミールか。
右からか、左からか。
回避するために飛び出したところを追撃する。
──ズバッ!
「「──!?」」
だが、双子の予想とは全く異なる方法で二人は飛び出してきた。
目の前に築かれた、自らを守るためのアースウォールがバラバラと崩れ落ち、正面から突っ込んできたのだ。しかも、二人同時に。
どちらか一方が先に出てきたなら、多少の動揺から立ち直り追撃もできただろう。
左右から同時に飛び出したとしても、状況を見極めての追撃もできただろう。
しかし、全く予想していなかった正面から、全く同時に飛び出した事で二人の思考は追いつかない。
「二人を守れ!」
リーダーが慌てた様子で指示を飛ばすと、後衛の三人が魔法で防御を固めようと試みるが──
「遅いわね」
「まだまだだね~」
魔法が構築されるよりも速く駆け抜け、魔法が間に合ったとしても斬り伏せ、あっという間に双子を間合いに捉えた二人。
「「あ──」」
それ以上の言葉を発する事ができなかった。
双子と同等、もしくはそれ以上に息ピッタリの斬撃が襲い掛かり、そのまま脱落してしまう。
「……か、過去の、産物だと?」
「あなたも凝り固まった思考の持ち主なのね」
「武術と魔法の組み合わせ、面白いと思うんだけどな~」
左右から剣先を向けられたリーダーの男は、拳を握りしめながら震えている。
「ふ、ふざけるなああああっ! 俺は、こんなところで負けられない! アースアーマー!」
土の鎧を身に纏ったリーダーの男は、血走らせた瞳をシエラに向けて襲い掛かる。
だが、その動きが成立する前に視界がぐらりと歪んでいくことに気がついた。
「……ぁ?」
「柔いわね、その土くれは」
シエラのナイフが土の鎧をリーダーの男もろとも切り裂いた。
そのまま脱落したリーダーの男から視線を外して後衛の三人を見つめて一言──
「まだやるかしら?」
鋭い視線と言葉に込められた殺気をぶつけられた三人は、呆気なく降参を告げてユージュラッド魔法学園の勝利が決まった。
「全く、頼もしい仲間だな」
実質、シエラとジャミールとラーミアの三人だけで勝利した試合を眺めていたアルは、自然と笑みを浮かべながらそう呟いたのだった。
去年は二回戦敗退という成績を残しているが、代表者が総入れ替えになっているので実力は未知数である。
「とりあえず、弟君は休んでおきなさい」
「一回戦は私たちが頑張っちゃうからね!」
「先輩たちがそう言うなら、僕も頑張らないといけないかな~」
未知数であるにもかかわらず、四年次のフレイアとラーミア、三年次のジャミールはアルを温存する構えを見せている。
「先輩たちだけにやらせるわけにはいきません!」
「私もいるわけだし、アルは後ろで見ていなさい」
先輩たちの言葉に焚きつけられたリリーナが口を開くと、シエラは強気な言葉から笑みを浮かべる。
昨日一日、宿屋に籠って話し合いを続けていたのだから休息は十分とっている。
「……分かったが、無理はするなよ」
しかし、五人の心遣いを無下にするのも申し訳ないと考えたアルは、素直に頷くことにした。
陣形はシエラとジャミールが前衛、フレイアとラーミアが中衛、リリーナとアルが後衛となる。
個人部門の戦い方からすると当然アルは前衛なのだが、後衛にいることを目にしたリクルッド魔法学園の面々は怒り心頭だ。
「あいつら、俺たちを舐めてやがる!」
「だが、それだけ俺たちにもチャンスが生まれるという事だ」
「こっちのダブルエースで一人ずつ叩き数的優位を確保、アル・ノワールが最後まで出て来なければ、最後は全員で叩き潰す」
「お前たちが最初の一人をどれだけ早く倒せるかに懸かっている、頼むぞ?」
一際ガタイの良い男子生徒が声を掛けたのは、瓜二つの顔立ちに分け目だけが左右逆の男子生徒二人。
「「お任せください、リーダー」」
全く同じタイミングで返事をすると、リーダーと呼ばれた男子生徒はニヤリと笑う。
「この勝負、我々リクルッド魔法学園の勝利だ」
こちらの陣形はリーダーと双子の男子生徒が前衛、残りは後衛の立ち位置にいる。
両学園が立ち位置についたことを確認した審判が右手を上げる。そして──
「一回戦第四試合──開始!」
開始と同時に動いたのはリーダーの男子生徒。
心の属性である土魔法、アーススピアを広範囲に放ち障害物を破壊しながら土の槍が前衛の二人に迫っていく。
中衛に位置するラーミアがアースウォールで正面からの攻撃を防いだものの、左右の地面や障害物はボロボロになっている。
「フレイムランス」
「ヘビーフォール」
直後、双子の魔法が正面のアースウォールを避けるように左右と上から襲い掛かって来た。
弧を描いて左右から迫るフレイムランス。
上から落とされる超質量のヘビーフォール。
軌道、質量、どれを見ても相当量の魔力が注がれており、魔力操作も卓越している。
((先に姿を見せた方から仕留めるぞ!))
双子の思考は全く同じものだった。
シエラか、ジャミールか。
右からか、左からか。
回避するために飛び出したところを追撃する。
──ズバッ!
「「──!?」」
だが、双子の予想とは全く異なる方法で二人は飛び出してきた。
目の前に築かれた、自らを守るためのアースウォールがバラバラと崩れ落ち、正面から突っ込んできたのだ。しかも、二人同時に。
どちらか一方が先に出てきたなら、多少の動揺から立ち直り追撃もできただろう。
左右から同時に飛び出したとしても、状況を見極めての追撃もできただろう。
しかし、全く予想していなかった正面から、全く同時に飛び出した事で二人の思考は追いつかない。
「二人を守れ!」
リーダーが慌てた様子で指示を飛ばすと、後衛の三人が魔法で防御を固めようと試みるが──
「遅いわね」
「まだまだだね~」
魔法が構築されるよりも速く駆け抜け、魔法が間に合ったとしても斬り伏せ、あっという間に双子を間合いに捉えた二人。
「「あ──」」
それ以上の言葉を発する事ができなかった。
双子と同等、もしくはそれ以上に息ピッタリの斬撃が襲い掛かり、そのまま脱落してしまう。
「……か、過去の、産物だと?」
「あなたも凝り固まった思考の持ち主なのね」
「武術と魔法の組み合わせ、面白いと思うんだけどな~」
左右から剣先を向けられたリーダーの男は、拳を握りしめながら震えている。
「ふ、ふざけるなああああっ! 俺は、こんなところで負けられない! アースアーマー!」
土の鎧を身に纏ったリーダーの男は、血走らせた瞳をシエラに向けて襲い掛かる。
だが、その動きが成立する前に視界がぐらりと歪んでいくことに気がついた。
「……ぁ?」
「柔いわね、その土くれは」
シエラのナイフが土の鎧をリーダーの男もろとも切り裂いた。
そのまま脱落したリーダーの男から視線を外して後衛の三人を見つめて一言──
「まだやるかしら?」
鋭い視線と言葉に込められた殺気をぶつけられた三人は、呆気なく降参を告げてユージュラッド魔法学園の勝利が決まった。
「全く、頼もしい仲間だな」
実質、シエラとジャミールとラーミアの三人だけで勝利した試合を眺めていたアルは、自然と笑みを浮かべながらそう呟いたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
350
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる