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魔法競技会

パーティ部門・四日目④

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 ゴッシュから供給されていた魔力が途切れ、二人を覆っていたアースドームが崩壊していく。
 後ろで控えているアルだけではなく、魔法を撃ち合っている全員の視線がそちらに向いた。

「……あちゃー」
「……こりゃダメだ」
「ゴッシュ、お疲れ!」
「いやいや、俺たちもお疲れだから!」
「こうさーん」

 舞い上がった砂煙から現れたのは、二本のナイフを手にして立っているシエラと、崩れた土砂に埋もれたゴッシュの姿だった。
 直後にはゼリンドル魔法学園の全員が両手を上げて降参を宣言し、呆気なく準決勝の勝利が決まってしまう。
 これには観客から大ブーイングが巻き起こったのだが、勝ち目のない試合程実際に舞台に立っている者からすると面白くないものはない。
 ここはさっさと降参して試合を終わらせ、観客に準決勝第二試合を早く楽しんでもらいたいという意味も含まれていた。

「それじゃあ、お疲れさーん」
「楽しかったぜ!」
「それでは、失礼します」
「決勝戦、楽しみしているわ」
「バイバーイ」

 気絶したゴッシュを背負いながら、非常にあっさりと舞台を下りていくゼリンドル魔法学園の面々を見ながら、アルたちは苦笑いを浮かべる事しかできなかった。

 ※※※※

 控え室に戻ったアルたちは、すぐに観客席へと向かい準決勝第二試合を観戦しようと進んでいた。
 だが、観客席につながるドアを開けるとすでに満席となっており、座れる場所がどこにもない。
 これではラグナリオン魔法学園の試合を観戦できないと思っていると、廊下の奥から声が掛けられた。

「アル! フレイア!」
「ガルボ兄上!」

 声を掛けてきたガルボの方へ近づいていくと、階段を示されてそのまま上へと進んでいく。

「兄上? ここから上は貴族専用の席では?」
「あぁ。本来であれば平民が一緒だと入れないんだが、今回は準決勝まで勝ち上がった時点で許可が下りているらしいぞ」
「へぇー、そんな事もあるのねー」
「キリアン兄上は準決勝で敗退していたけど、一試合目で敗退して観戦する元気もなかったから利用していなかったんだと。それに、ユージュラッド魔法学園は優勝からずいぶん遠ざかっているからな。父上に教えてもらうまでは、俺も知らなかった」

 アルたちを三階へ連れてくるようガルボに伝えたのもレオンだった。

「……ちなみに、ユージュラッド魔法学園が一番最近で優勝したのって、いつなんですか?」
「……父上の代で、その時が最後らしい」

 だから知っていたのかと納得し、その時のパーティにはラミアンはもちろん、もしかするとアミルダもいたんじゃないかとアルは考えてしまう。

「その時のパーティって、母上やヴォレスト先生もいたんですかね?」
「それは分らん。だが、全員がレベル5を持っていたと聞いたことがある」
「全員がレベル5!?」

 レオン、ラミアン、アミルダだけではなく、残り三人も全員がレベル5持ち。
 それで負けるなどあり得ないと思ってしまうアルだった。

「父上の代では、天才がまとまって生まれてきていたんですね」
「……アル、お前も一種の天才だからな?」
「違うわよ、ガルボ」
「アル君は天才じゃなくて、規格外じゃないのかな?」

 どちらも違うと否定したかったが、規格外に関しては何度も言われてきた言葉なので天才だけは強く否定したいと思ってしまう。
 だが、そんな否定を口にするよりも前に案内された部屋に到着し、中に入るとノワール家だけではなく、代表者の家の者が一堂に会していた。

「ははは。こうやって見ると、何だか爽快ですね」
「わ、私もこのような光景は初めて見ました」

 アルとリリーナが驚きの声を漏らしている一方で、フレイアやジャミールは慣れた様子で他家の当主に挨拶を交わしている。
 慌てて二人に習おうと歩き出したのだが、何故か全員から止められてしまった。

「フレイア嬢とジャミール殿も止めなさい」
「今はラグナリオン魔法学園の試合を観察し、明日の決勝に備えるべきでしょう」

 エルドア家の当主であるロズワルド・エルドアと、その妻であるカタリーナ・エルドアだった。
 彼らは舞台が一番見える場所にアルたちを促し、自分たちは後ろの席から見ることにしたのだ。

「そんな! お父様やお母様を差し置いて私が見るだなんて……」
「リリーナ。お前はユージュラッド魔法学園の代表者だ。それを支援するのが、私たちの役目でもあるのだよ」
「その通りですよ。皆様、明日の試合も応援しておりますので、頑張ってくださいませ」

 激励の言葉を掛けられたアルたちは、大きく頷くとともに視線をすぐに舞台の方へと向けたのだった。
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