332 / 361
魔法競技会
パーティ部門・決勝戦⑩
しおりを挟む
多くの者が倒れた。
残されたのはすでに魔法を放つ事のできないリリーナと、相対しているアルとミラージュにより七人に分裂しているシンである。
全てに実体があり、アルは全てのシンに対して意識を向けている。
「シルフブレイド!」
常に七人と戦う事はいくらアルでも精神の消耗が激しくなる。まずは数を減らす事を意識して風の刃を限界まで顕現させると、三人のシンへと殺到させた。
「「「「構わないよ」」」」
シンも狙われた三人を見捨てて残る四人でアルの首を狙う。
シルフブレイドが三人のシンを消滅させるのと、四人のシンがアルの左腕を切り裂いたのはほぼ同時であった。
「ぐあっ!」
「「「「ふふふ。痛いだろう? でも、これは試合後も治らないからね?」」」」
「……痛いが、これくらいならどうという事もない!」
「「「「くっ! まだそれほどに――うあっ!?」」」」
同年代の学生という立場の者であれば、傷を負い痛みがあれば多少なり動きが鈍るものだろう。それをシンも期待していた。
だが、アルは普段と変わらずに両手でアルディソードを握り、鋭い一振りで四人目のシンを切り裂いた。
「「「アル、あなたという人は!」」」
「この程度で驚かれても困るんだがな――ファイアボルト!」
至近距離から放たれた最速の一撃は、さらにもう一人のシンを貫き消滅させる。
残りが二人となった時、シンはミラージュの発動を解除してその身を晒した。
「どうした? 諦めたのか?」
「まさか。でも……うん、そうだな。やっぱり、君は殺しておくべきだと判断したよ」
「最初からそのつもりなんだろう?」
「もちろんさ。でもね――確実な方法でと思ったんだ」
「確実な方法だと? ……貴様、させるか!」
「もう遅いよ」
シンの選択した確実な方法、それは――倒れているユージュラッド魔法学園の生徒を人質にする事だった。
デスポイドの刃が一番近くで倒れていたジャミールの首筋に当てられる。
シンの行動により会場からはざわめきが広がっていく。
倒れている相手に剣を向けても意味がなく、仮に致命傷を与えたとしても自動治癒により回復する。そのはずなのだ。
だが、シンの言葉が本当ならばデスポイドで首を落とされれば治癒される事なくそのまま命を落とすことになる。
ここでアルが虚言だと決めつけてシンを攻撃する事は簡単だが、もし本当であれば自身の行動でジャミールを殺した事になってしまう。
「……くそっ!」
現状、アルが取れる選択肢は動かないという一択しか存在しなかった。
「利口だね」
「黙れ! ……一つだけ教えてくれ。お前が口にしている革命ってのは何なんだ?」
「時間稼ぎのつもりかい?」
「違う。このままだとどうせ殺されるんだ。なら、疑問を残したまま死にたくはないからな」
「……まあいいよ、教えてあげる」
デスポイドは今なおジャミールに向けられているが、シンはニヤリと笑い答えを口にした。
「俺たちは魔法国家カーザリアを攻め滅ぼすために調査をしに来た、他国の間者さ」
「やはりそうか」
「なんだ、気づいていたのかい?」
「何となくな。というか、そんな剣を用意している時点でおかしな話だからな。陛下を狙ってか、もしくは別の目的があるだろうとは思っていた。……だが、おかしな点もある」
「なんだい?」
「どうしてこうも目立つ事をしている? お前の腕なら秘密裏に有力者を殺す事もできたんじゃないか?」
疑問は尽きない。
他国の間者であればバレないようにするのが普通である。だがシンはわざわざ魔法競技会という人の目が集まる大会に参加し、そして王族の目まであるところで倒れているジャミールに剣を向けている。
これではまるで自分を疑ってくださいと言っているようなものだ。
「どうだろうね。俺は使い捨ての駒みたいなものだから、俺にできる最善で有力な敵国の駒を減らすよう考えただけさ」
「それが魔法競技会だったとでも?」
「その通り。勝ち上がって来た者は将来有望な人間って事になるだろう? 個人部門での出場も考えたけど、パーティ部門なら複数の人間を殺す事ができるからね」
「……矛盾が過ぎるぞ」
「それはアルが決める事じゃないよ。話はこれでおしまいかな? そうそう――そこの女も動くんじゃないぞ?」
隠す必要がないと判断したのか、シンは密かに魔法を構築しようとしていたリリーナに向けて強烈な殺気を放つ。
「――!?」
「うん、いい子だ。君もアルの後に殺してあげるから、そのつもりでね」
「……もういいだろう」
「そうだね。もういい――」
「サモン」
『グルアアアアッ!』
「なに!?」
突如として漆黒の獣が顕現するとシンへと襲い掛かった。
残されたのはすでに魔法を放つ事のできないリリーナと、相対しているアルとミラージュにより七人に分裂しているシンである。
全てに実体があり、アルは全てのシンに対して意識を向けている。
「シルフブレイド!」
常に七人と戦う事はいくらアルでも精神の消耗が激しくなる。まずは数を減らす事を意識して風の刃を限界まで顕現させると、三人のシンへと殺到させた。
「「「「構わないよ」」」」
シンも狙われた三人を見捨てて残る四人でアルの首を狙う。
シルフブレイドが三人のシンを消滅させるのと、四人のシンがアルの左腕を切り裂いたのはほぼ同時であった。
「ぐあっ!」
「「「「ふふふ。痛いだろう? でも、これは試合後も治らないからね?」」」」
「……痛いが、これくらいならどうという事もない!」
「「「「くっ! まだそれほどに――うあっ!?」」」」
同年代の学生という立場の者であれば、傷を負い痛みがあれば多少なり動きが鈍るものだろう。それをシンも期待していた。
だが、アルは普段と変わらずに両手でアルディソードを握り、鋭い一振りで四人目のシンを切り裂いた。
「「「アル、あなたという人は!」」」
「この程度で驚かれても困るんだがな――ファイアボルト!」
至近距離から放たれた最速の一撃は、さらにもう一人のシンを貫き消滅させる。
残りが二人となった時、シンはミラージュの発動を解除してその身を晒した。
「どうした? 諦めたのか?」
「まさか。でも……うん、そうだな。やっぱり、君は殺しておくべきだと判断したよ」
「最初からそのつもりなんだろう?」
「もちろんさ。でもね――確実な方法でと思ったんだ」
「確実な方法だと? ……貴様、させるか!」
「もう遅いよ」
シンの選択した確実な方法、それは――倒れているユージュラッド魔法学園の生徒を人質にする事だった。
デスポイドの刃が一番近くで倒れていたジャミールの首筋に当てられる。
シンの行動により会場からはざわめきが広がっていく。
倒れている相手に剣を向けても意味がなく、仮に致命傷を与えたとしても自動治癒により回復する。そのはずなのだ。
だが、シンの言葉が本当ならばデスポイドで首を落とされれば治癒される事なくそのまま命を落とすことになる。
ここでアルが虚言だと決めつけてシンを攻撃する事は簡単だが、もし本当であれば自身の行動でジャミールを殺した事になってしまう。
「……くそっ!」
現状、アルが取れる選択肢は動かないという一択しか存在しなかった。
「利口だね」
「黙れ! ……一つだけ教えてくれ。お前が口にしている革命ってのは何なんだ?」
「時間稼ぎのつもりかい?」
「違う。このままだとどうせ殺されるんだ。なら、疑問を残したまま死にたくはないからな」
「……まあいいよ、教えてあげる」
デスポイドは今なおジャミールに向けられているが、シンはニヤリと笑い答えを口にした。
「俺たちは魔法国家カーザリアを攻め滅ぼすために調査をしに来た、他国の間者さ」
「やはりそうか」
「なんだ、気づいていたのかい?」
「何となくな。というか、そんな剣を用意している時点でおかしな話だからな。陛下を狙ってか、もしくは別の目的があるだろうとは思っていた。……だが、おかしな点もある」
「なんだい?」
「どうしてこうも目立つ事をしている? お前の腕なら秘密裏に有力者を殺す事もできたんじゃないか?」
疑問は尽きない。
他国の間者であればバレないようにするのが普通である。だがシンはわざわざ魔法競技会という人の目が集まる大会に参加し、そして王族の目まであるところで倒れているジャミールに剣を向けている。
これではまるで自分を疑ってくださいと言っているようなものだ。
「どうだろうね。俺は使い捨ての駒みたいなものだから、俺にできる最善で有力な敵国の駒を減らすよう考えただけさ」
「それが魔法競技会だったとでも?」
「その通り。勝ち上がって来た者は将来有望な人間って事になるだろう? 個人部門での出場も考えたけど、パーティ部門なら複数の人間を殺す事ができるからね」
「……矛盾が過ぎるぞ」
「それはアルが決める事じゃないよ。話はこれでおしまいかな? そうそう――そこの女も動くんじゃないぞ?」
隠す必要がないと判断したのか、シンは密かに魔法を構築しようとしていたリリーナに向けて強烈な殺気を放つ。
「――!?」
「うん、いい子だ。君もアルの後に殺してあげるから、そのつもりでね」
「……もういいだろう」
「そうだね。もういい――」
「サモン」
『グルアアアアッ!』
「なに!?」
突如として漆黒の獣が顕現するとシンへと襲い掛かった。
0
あなたにおすすめの小説
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる