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魔法競技会
進化する魔獣⑨
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三人からの言葉にどう返事をするべきか悩んでしまうものの、これで本当に負けるわけにはいかなくなった。
「……俺は逃げろと言ったんだが?」
「あら? 私にはキリアン様とジャミールを連れて助けに来いって聞こえたけど?」
「まあ、ピンチに駆けつけたんだから大目に見てよね~」
「そういう事だよ、アル」
「兄上まで……でも、助かりました」
苦笑しながらそう口にしたアルだったが、そこへキリアンがさらに声を掛けた。
「アル……君、自分を犠牲にしてもいいとか思ってたんじゃない?」
「うっ!?」
「やっぱりね。だからレイリアさんに援軍をお願いしたんだろう? 最低でも時間稼ぎができればとか思ってた?」
「……」
「あいにくだけど、僕たちはそんな事を了承できるような器を持ち合わせていないんでね」
ポンと肩を叩かれると、アルは顔を上げてキリアンを見る。
「一緒に背負わせてもらうよ」
「そういう事」
「やれる事はやらせてよね~」
「……ありがとう」
『別れの挨拶は終わったか?』
ここまで手を出さずにいたデヴォルガンデだが、何もしていなかったわけではない。
人型の闇の眷族を召喚し続けており、今ではその数を五十匹以上にまで増やしている。
「……この程度の数なら、僕たちに任せておいて」
「さっきも言ったけど、アルはデヴォルガンデを倒してちょうだい」
「それに、まだまだ援軍は来るからね~」
「え?」
デヴォルガンデにばかり意識を集中していたからか、アルはこの場に近づいてくる大量の気配に気づいていなかった。
そして――魔法の雨がデヴォルガンデや闇の眷族目掛けて降り注いだ。
「アルさん!」
「リルレイさん!」
「アル!」
「レイリアもか! それに……彼らは?」
駆けつけたのはギルドマスターのリルレイ、そして援軍を呼びに行ったレイリア。そして、カーザリアに滞在していた多くの冒険者たちだった。
先ほどの魔法の雨も彼女たちが放った先手必勝の攻撃だったのだ。
「話は聞きました。まさか、堕神デヴォルガンデがこの地に現れるなんて」
「リルレイさんなら倒せますか?」
「……正直、確率としては一割あるかどうかでしょうね。先ほどの魔法である程度ダメージがあればいいのですが」
『――くくくく。この程度で我にダメージだと?』
リルレイの希望を耳にしたのか、砂煙の中からデヴォルガンデの声が聞こえてきた。
ただ声を耳にしただけだ。それにもかかわらずこの場に駆け付けたほとんどの冒険者の足が竦み、体が動かなくなる。
そして、その姿が露わになると耐えていた数少ない冒険者まで動けなくなってしまう。
『ふはははは! 笑止! 笑止、笑止! 我が眷族にすら傷は付いておらんぞ!』
「……こ……これは、マズいですね」
「闇の眷族は任せました!」
「ア、アルさん!」
『良い判断だ! 貴様は我と楽しもうぞ!』
「楽しめるなんて思うなよ! 全力で斬り捨ててやるさ!」
デヴォルガンデが口にした通り、闇の眷族は数を減らす事もなく傷すらも負っていない。
混戦の中で戦うと被害が大きくなると判断したアルは、デヴォルガンデを挑発しながら駆け出してアルディソードを振るう。
そして、デヴォルガンデもその他大勢を相手にするつもりはなく、あえて挑発に乗って動き出した。
「我々は闇の眷族を討つ! 僕の魔法の範囲に固まってくれ! ライトサークル!」
状況をいち早く把握したキリアンが声を張り上げると、闇属性の力を減退させるライトサークルを発動させた。
最初にシエラとジャミールが闇の眷族を斬る事ができたのも、ライトサークルによる効果が大きかったのだ。
「冒険者は最低でも三人一組で行動しなさい! 単独で倒そうなんて考えないように!」
そして、キリアンの号令に合わせてリルレイも声を張り上げる。
動けなくなっていた冒険者たちもデヴォルガンデが離れた事で威圧から解放されていた。
リルレイの指示に即座に動き出した冒険者たちは隣り合った者に声を掛けてリンジのパーティを組み、闇の眷族に当たっていく。
「カーザリアを守り抜き、そして生き残るわよ!」
「「「「おおおおおおぉぉぉぉっ!」」」」
冒険者たちの雄叫びがこだました森の中で、大規模な戦闘が開始された。
そして、この場へ向かうもう一つの影がさらなる状況の変化を巻き起こす事を、今はまだ誰も知らなかった。
「……俺は逃げろと言ったんだが?」
「あら? 私にはキリアン様とジャミールを連れて助けに来いって聞こえたけど?」
「まあ、ピンチに駆けつけたんだから大目に見てよね~」
「そういう事だよ、アル」
「兄上まで……でも、助かりました」
苦笑しながらそう口にしたアルだったが、そこへキリアンがさらに声を掛けた。
「アル……君、自分を犠牲にしてもいいとか思ってたんじゃない?」
「うっ!?」
「やっぱりね。だからレイリアさんに援軍をお願いしたんだろう? 最低でも時間稼ぎができればとか思ってた?」
「……」
「あいにくだけど、僕たちはそんな事を了承できるような器を持ち合わせていないんでね」
ポンと肩を叩かれると、アルは顔を上げてキリアンを見る。
「一緒に背負わせてもらうよ」
「そういう事」
「やれる事はやらせてよね~」
「……ありがとう」
『別れの挨拶は終わったか?』
ここまで手を出さずにいたデヴォルガンデだが、何もしていなかったわけではない。
人型の闇の眷族を召喚し続けており、今ではその数を五十匹以上にまで増やしている。
「……この程度の数なら、僕たちに任せておいて」
「さっきも言ったけど、アルはデヴォルガンデを倒してちょうだい」
「それに、まだまだ援軍は来るからね~」
「え?」
デヴォルガンデにばかり意識を集中していたからか、アルはこの場に近づいてくる大量の気配に気づいていなかった。
そして――魔法の雨がデヴォルガンデや闇の眷族目掛けて降り注いだ。
「アルさん!」
「リルレイさん!」
「アル!」
「レイリアもか! それに……彼らは?」
駆けつけたのはギルドマスターのリルレイ、そして援軍を呼びに行ったレイリア。そして、カーザリアに滞在していた多くの冒険者たちだった。
先ほどの魔法の雨も彼女たちが放った先手必勝の攻撃だったのだ。
「話は聞きました。まさか、堕神デヴォルガンデがこの地に現れるなんて」
「リルレイさんなら倒せますか?」
「……正直、確率としては一割あるかどうかでしょうね。先ほどの魔法である程度ダメージがあればいいのですが」
『――くくくく。この程度で我にダメージだと?』
リルレイの希望を耳にしたのか、砂煙の中からデヴォルガンデの声が聞こえてきた。
ただ声を耳にしただけだ。それにもかかわらずこの場に駆け付けたほとんどの冒険者の足が竦み、体が動かなくなる。
そして、その姿が露わになると耐えていた数少ない冒険者まで動けなくなってしまう。
『ふはははは! 笑止! 笑止、笑止! 我が眷族にすら傷は付いておらんぞ!』
「……こ……これは、マズいですね」
「闇の眷族は任せました!」
「ア、アルさん!」
『良い判断だ! 貴様は我と楽しもうぞ!』
「楽しめるなんて思うなよ! 全力で斬り捨ててやるさ!」
デヴォルガンデが口にした通り、闇の眷族は数を減らす事もなく傷すらも負っていない。
混戦の中で戦うと被害が大きくなると判断したアルは、デヴォルガンデを挑発しながら駆け出してアルディソードを振るう。
そして、デヴォルガンデもその他大勢を相手にするつもりはなく、あえて挑発に乗って動き出した。
「我々は闇の眷族を討つ! 僕の魔法の範囲に固まってくれ! ライトサークル!」
状況をいち早く把握したキリアンが声を張り上げると、闇属性の力を減退させるライトサークルを発動させた。
最初にシエラとジャミールが闇の眷族を斬る事ができたのも、ライトサークルによる効果が大きかったのだ。
「冒険者は最低でも三人一組で行動しなさい! 単独で倒そうなんて考えないように!」
そして、キリアンの号令に合わせてリルレイも声を張り上げる。
動けなくなっていた冒険者たちもデヴォルガンデが離れた事で威圧から解放されていた。
リルレイの指示に即座に動き出した冒険者たちは隣り合った者に声を掛けてリンジのパーティを組み、闇の眷族に当たっていく。
「カーザリアを守り抜き、そして生き残るわよ!」
「「「「おおおおおおぉぉぉぉっ!」」」」
冒険者たちの雄叫びがこだました森の中で、大規模な戦闘が開始された。
そして、この場へ向かうもう一つの影がさらなる状況の変化を巻き起こす事を、今はまだ誰も知らなかった。
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