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第38話:レミティアの事情
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その後、リディアが馬車馬のように動き続け、廃屋に警ら隊が到着すると、襲撃者を根こそぎ捕らえてくれた。
モノクルの男だけは警戒が必要だと念を押し、俺たちはその場を警ら隊に任せてあとにした。
「しかし、あいつらはいったいなんだったんだ? 物取りにしては物騒だったし、やっぱりレミティアを追い掛けてきた追手ってことなのか?」
歩きながらレミティアたちに問い掛けるも、彼女たちからの返事はない。
ただ、言いたくないわけではなく、俺を巻き込んでしまったことに罪悪感を抱いているように見える。
俺としてはもう心に決めているので、巻き込まれても問題はないのだが、ここはきちんと伝えておくべきだな。
「なあ、レミティア」
「……はい」
「俺は巻き込まれたなんて思っていないぞ?」
「……え?」
俺の口からそんな言葉が飛び出すとは思っていなかったのか、レミティアは思わず足を止め、驚きの声をあげた。
「そもそも、俺が自分の意思でレミティアたちを助けたんだから、当然だろう?」
「と、当然ではありません! アリウスは私のせいで、殺されかけたんですよ!」
「それじゃあ、殺されないようにもっと強くならないとな! もちろん、レミティアのことも守れるように」
そう口にした俺は、満面の笑みをレミティアに向けた。
「……ありがとう、ございます」
レミティアの涙声を聞いた俺は、前を向いてゆっくりと歩き出す。
彼女の泣き顔は見たくなかったからだ。
どうせ見るなら、涙よりも笑顔がいい。
涙を見るにしても、辛い涙よりも嬉し涙の方がいい。
今はまだ、辛さと嬉しさが入り混じっているかもしれない。
だから、俺は前を向く。
強くならないといけないな。
俺自身のためにも、レミティアのためにも。
宿までの道のりは思いのほか長かったが、俺たちは腹ごしらえを終えると、こちらの部屋に集まることにした。
集まった理由はもちろん、レミティアの事情について聞くためだ。
今回の襲撃も、その事情がかかわっているんだろうことは想像できるものの、レミティアたちの様子を見るとそれだけではない気がする。
「……まずはアリウス。助けていただき、誠にありがとうございました」
椅子に座っていたレミティアは立ち上がり、頭を下げてお礼を口にした。
「気にするなって。俺は俺にできることをしただけだしな」
「……その優しさに、私は助けられたのですね」
「優しいのか、俺?」
「うふふ。ものすごくお人好しな、優しい人だと思います」
ずっと緊張した表情を浮かべていたレミティアに笑顔が浮かぶ。
「……それでは、アリウス。まずは簡潔に私がここにいる理由をお伝えいたします」
「ここにいる理由って、戦場から、王都から逃げて来たんじゃないのか?」
「それはそうですし、聖女というのも本当です。ですが……」
そこまで口にしたレミティアは一度言葉を切るが、意を決したように、まっすぐ俺の方を向いた。
「……私を追い掛けている者、追手の黒幕が問題なのです」
「黒幕だって?」
「はい。その黒幕なのですが……バズズ」
「はっ。こちらです、アリウス殿」
レミティアがそこまで口にすると、バズズに声を掛けた。
するとバズズは魔法を使っていた黒ずくめから手に入れた短剣を取り出し、アリウスに手渡す。
「短剣ですよね? ……ん? この意匠、どこかで見たことがあるような?」
「見たことがあるのは当然です。ガゼルヴィードの家の者として暮らしていたのであれば、屋敷でも目にしていたと思います」
ガゼルヴィードの屋敷で? ……でも、ガゼルヴィードの衣装はこの形ではない。
でも、ガゼルヴィードの意匠と同じくらい、よく目にしていた気がする。
「……え? 嘘だろ、これってまさか!」
「その通りです。私へ追手を差し向けているのは――この国の王族なのです」
……これはまた、どでかい相手が出てきたものだな。
モノクルの男だけは警戒が必要だと念を押し、俺たちはその場を警ら隊に任せてあとにした。
「しかし、あいつらはいったいなんだったんだ? 物取りにしては物騒だったし、やっぱりレミティアを追い掛けてきた追手ってことなのか?」
歩きながらレミティアたちに問い掛けるも、彼女たちからの返事はない。
ただ、言いたくないわけではなく、俺を巻き込んでしまったことに罪悪感を抱いているように見える。
俺としてはもう心に決めているので、巻き込まれても問題はないのだが、ここはきちんと伝えておくべきだな。
「なあ、レミティア」
「……はい」
「俺は巻き込まれたなんて思っていないぞ?」
「……え?」
俺の口からそんな言葉が飛び出すとは思っていなかったのか、レミティアは思わず足を止め、驚きの声をあげた。
「そもそも、俺が自分の意思でレミティアたちを助けたんだから、当然だろう?」
「と、当然ではありません! アリウスは私のせいで、殺されかけたんですよ!」
「それじゃあ、殺されないようにもっと強くならないとな! もちろん、レミティアのことも守れるように」
そう口にした俺は、満面の笑みをレミティアに向けた。
「……ありがとう、ございます」
レミティアの涙声を聞いた俺は、前を向いてゆっくりと歩き出す。
彼女の泣き顔は見たくなかったからだ。
どうせ見るなら、涙よりも笑顔がいい。
涙を見るにしても、辛い涙よりも嬉し涙の方がいい。
今はまだ、辛さと嬉しさが入り混じっているかもしれない。
だから、俺は前を向く。
強くならないといけないな。
俺自身のためにも、レミティアのためにも。
宿までの道のりは思いのほか長かったが、俺たちは腹ごしらえを終えると、こちらの部屋に集まることにした。
集まった理由はもちろん、レミティアの事情について聞くためだ。
今回の襲撃も、その事情がかかわっているんだろうことは想像できるものの、レミティアたちの様子を見るとそれだけではない気がする。
「……まずはアリウス。助けていただき、誠にありがとうございました」
椅子に座っていたレミティアは立ち上がり、頭を下げてお礼を口にした。
「気にするなって。俺は俺にできることをしただけだしな」
「……その優しさに、私は助けられたのですね」
「優しいのか、俺?」
「うふふ。ものすごくお人好しな、優しい人だと思います」
ずっと緊張した表情を浮かべていたレミティアに笑顔が浮かぶ。
「……それでは、アリウス。まずは簡潔に私がここにいる理由をお伝えいたします」
「ここにいる理由って、戦場から、王都から逃げて来たんじゃないのか?」
「それはそうですし、聖女というのも本当です。ですが……」
そこまで口にしたレミティアは一度言葉を切るが、意を決したように、まっすぐ俺の方を向いた。
「……私を追い掛けている者、追手の黒幕が問題なのです」
「黒幕だって?」
「はい。その黒幕なのですが……バズズ」
「はっ。こちらです、アリウス殿」
レミティアがそこまで口にすると、バズズに声を掛けた。
するとバズズは魔法を使っていた黒ずくめから手に入れた短剣を取り出し、アリウスに手渡す。
「短剣ですよね? ……ん? この意匠、どこかで見たことがあるような?」
「見たことがあるのは当然です。ガゼルヴィードの家の者として暮らしていたのであれば、屋敷でも目にしていたと思います」
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「その通りです。私へ追手を差し向けているのは――この国の王族なのです」
……これはまた、どでかい相手が出てきたものだな。
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