異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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チュートリアル

初めてのガチャ

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 目を覚ましためぐるが見たのは、鏡に映る自分の姿だった。
 死んだ時の大学生姿ではなく、幼少期の自分の姿になっている。
 あまり思い出が少ない幼少期の姿で転生されたのがたまたまなのか、神様の気遣いなのか、それは聞いて見ないと分からないが、廻は神様の気遣いなのだろうと考えることにした。

 廻は母子家庭で育った。
 生まれて間も無くの頃に両親が離婚、子供ながらに母の大変さを理解していた廻は聞き分けの良い子に育った。
 母からも、親戚からも、学校の先生からも言うことを聞く良い子として認知されていたが、廻は周囲の子供達を羨ましく思っていた。
 自由に甘え、自由に友達を作り、自由に遊ぶ。
 そんな子供らしいことをしてこなかった廻にとって、幼少期の思い出はほとんど残っていなかった。

 中学生になると、母が再婚したこともあり生活も幼少期と比べると明らかに豊かになった。
 友達もできて遊びに行くことも増えたのだが、聞き分けの良い子として育った癖が抜けることはなくやりたいことをやる、ということはなかった。
 周囲の意見を聞きながら多数派の意見に乗っかって学校生活を過ごしてきた。そのせいもあり親友と呼べる友達はおらず、高校生活も同じ様に過ぎていった。

 心機一転できたのは大学生になってからだ。
 きっかけは母と、再婚した父と三人で行った海外旅行だった。
 美しい自然、風景、街並みを目の当たりにして、自分が見ている世界がなんて小さい世界だったのだろうと実感した。
 それからだ、バイトを始めて自分のお金で自由に旅行を始めたのは。
 自分の世界が広がった気がした、心が豊かになった気がした、何かが大きく変わろうとしていた。

 その帰りに飛行機事故に遭ってしまったのだから元も子もないのだが、それでも少ないながらも日本以外の国を自分の目で見れたことは良かったと思っている。
 神様は適正があると言っていた。それは色々な国を見てきた自分だからなのかもしれないと、幼少期の姿で召喚されたのはその頃に楽しめなかった自由を謳歌しろと言っているのだと思うことにした。

「……でも、いったい何をしたらいいのかしら?」

 周囲は先程の真っ白とは真逆、真っ暗な世界。鏡だけが不思議と明確に見えている。
 何も分からず呟いたその直後、目の前に三枚の白いチケットが光を伴い現れた。
 恐る恐る手に取りよく見てみると、中央に『ノーマル』と書かれている。

「神様が言ってた、一日三回引けるっていうガチャのチケットかな?」
「──その通りにゃ!」
「ひやあっ!」

 突然話しかけられて声を上げてしまった廻。
 また神様が現れたのかと下を向くと、そこには二本足で立つ黒猫が手を振っていた。

「……ね、ねねねね、猫が喋った!」
「猫じゃないにゃ! 僕の名前はニャルバンにゃ!」
「ニャ、ニャルバン?」
「そうにゃ! この世界でメグルをサポートする様に神様から言われているにゃ!」
「は、はぁ」

 廻の腰くらいの高さしかなく、右眼は赤、左眼は青のオッドアイを持つニャルバンは、腰に手を当てて胸を張っている。

「ところで、そのチケットはメグルが言う通りガチャチケットにゃ! チケットを持ちながらオープン、って唱えるとモンスターが召喚されるにゃ!」
「へぇ、そうなんだ」
「やってみるにゃ? やってみるにゃ?」

 首を左右に振りながら可愛らしく問いかけてくるニャルバン。
 廻もやってみないことには分からないと、意を決して一枚のノーマルチケットを手に取った。

「オ、オープン!」

 唱えた直後、ノーマルチケットは端から徐々に光の粒子へと変わり、その粒子が目の前に六芒星の魔法陣を描くとさらなる光を放ち始めた。
 そして──

「きゃぁっ!」
「召喚成功にゃー!」

 弾けた魔法陣が足元に集約する。光がモンスターのシルエット姿に形を変え、その姿を露わにした。

「…………これ、何?」
「モンスターにゃ! 名前はスライムにゃ!」
「あー、えっと、スライムね、うん」

 ぷるんとした水色の液体。その中央には赤く丸い核の様なものがあり、眼はないのだがこちらを見ている様な気がする。
 ゲームはほとんどやらないと言ってもいいが、それでも一度もやったことがないわけではない。
 人並みにスマホで触ったことくらいはあるので知っているが、スライムと言うのは大抵の場合最弱のモンスターではないだろうか。

「ニャルバン、スライムって強いの?」
「レア度は1、弱いモンスターにゃ!」
「……えっと、ノーマルチケットのガチャって、本当にノーマルってこと?」
「その通りにゃ! ノーマルガチャではレア度が1から3までのモンスターが召喚できるにゃ!」
「一番高いレア度は3なの?」
「違うにゃ。最高は5だにゃ!」
「……えっ、それじゃあ、このチケットじゃあ5は召喚できないの?」
「その通りにゃ!」

 神様は言った。ギフトとして一日三回ノーマルガチャを引けるのだと。しかしノーマルガチャではレア度3までしか召喚できない。
 つまり、このギフト──

「全く役に立たないギフトじゃないのよ!」
「にゃ! そ、そんなことはないのにゃ! モンスターを召喚するのは結構な費用がかかるにゃ! タダで三回も引けるのは破格なのにゃ!」
「だけどノーマルガチャでしょ! スライムばっかり出てきても使えないじゃないの!」
「し、昇華と進化を繰り返せば問題ないのにゃ!」
「……昇華と、進化? 何よそれ」

 ノーマルガチャしか引けないなら全く役に立たないと思う廻なのだが、ニャルバンが言う昇華と進化がダンジョン経営における鍵になるのだろうかと考えた。

「昇華はどのレア度でも5回行うことができるのにゃ。1回行うごとに最大レベルが10上がるにゃ。レア度1の最大レベルが10だから、5回昇華すれば60までレベルを上げられるにゃ」
「レア度5の最大レベルは?」
「50にゃ。5回昇華すればレベル100にゃ」
「やっぱりレア度5が強いじゃないのよ!」
「お、落ち着くにゃ! レア度1でも最終的にはレア度5まで進化させることができるのにゃ!」
「……何よそれ」

 レア度1のモンスターがレア度5になれるなんて聞いたことがない廻は疑いの眼差しを向ける。

「ほ、本当にゃ! 最大まで昇華したモンスターは、一つ上のレア度に進化することができるのにゃ! レベルは1に戻るけど、最終的にはレア度5まで進化できるのにゃ!」
「……分かったわ。それで、昇華と進化はどうしたらできるのよ」

 こういうものには何かしらの条件がある。それくらいの知識はある廻はニャルバンに質問した。

「昇華はまずレベルを最大まで上げたモンスターを用意するにゃ。そのモンスターと同じモンスターを合体させることで昇華するにゃ! 素材にするモンスターはレベルを最大まで上げなくても問題ないにゃ!」
「同じモンスターがいれば昇華は問題ないのね。それじゃあ、進化はどうやるの?」
「進化は昇華を5回行った同じモンスター同士を合体させることでできるにゃ! 二匹のモンスターがいなくなるけど、その代わりに強いモンスターが手に入るので積極的に行うにゃ!」
「ふーん……えっ、それってめちゃくちゃ大変じゃないの? 進化させるには同じモンスターが最低でも十二匹必要ってことよね?」
「そうなるにゃー」
「簡単に言わないでよね!」

 レア度1だけならいつの間にかに集まっているってことはあるかもしれない。だがレア度2や3はそうではないのだ。
 ノーマルガチャの割合がどの程度なのかは分からないが、基本的には低いレア度程出てくる確率は高いだろう。
 さらにレア度を4や5にするならば、その数は計算するのも面倒くさくなってしまうくらいに多い。

「……ギフトチェンジ!」
「で、できないにゃ!」
「こんな使えないギフトでダンジョン経営しろとか無理よ! その前にダンジョン経営の意味も分からないもの、どうしろっていうのよ!」
「そ、それなら次はダンジョンについて説明するにゃ!」
「ちょっと、ギフトの問題も解決してないのよ!」
「チェンジはできないにゃ! ごめんなのにゃ!」

 ニャルバンが泣きそうになりながら謝ってきたので、これ以上我儘を言ってもどうしようもないと悟る。
 大きな溜息を吐き出しながら、廻はダンジョンについての説明を聞くことにした。
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