異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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レア度4希少種の力

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 アルバス達が降りた時には、すでに近場の探索は終了していた。
 全員が集まったところで一気に前進、ここでもアルバスを先頭にオートやランダムを一蹴しながら進んでいく。
 そして、初めて進出したにもかかわらずアルバス達はあっという間に安全地帯セーフポイントまでやってきた。

「それじゃあ、七名はここで待機だな」
「……ち、チラリと見るのもダメですか?」

 高レアリティのモンスターに興味があるのだろう、カナタがそんなことを口にする。

「……俺達が入ってからすぐの一瞬だけだぞ? その後はすぐに戻れ、それ以上は何が起こっても自分達で処理しろ」
「あっ! それじゃあ僕も!」
「……勝手にしろ」

 立候補したのはカナタとロンド、それにリサエラの前衛三人。
 リサエラの立候補には驚きを見せたアルバスだったが、絶対に自分勝手な行動を取らないと強く約束させていた。
 そして、ボスに挑む総勢一八名の準備が整ったところでアルバスが口を開く。

「てめえら! この先には高レアリティのモンスターがいるはずだ! 全員が倒したいと思うだろう。ドロップアイテムは倒した者が手に入れるルールだからな。だが、一番大事なのは自分の命、そして仲間の命だ! 絶対に仲間を見捨てるな! 生き残る為に逃げるのは恥じゃねえ、次につなげる為の最善策だと考えろ!」

 アルバスの言葉には、その場にいた全員が驚きの表情を浮かべていた。
 冒険者ランキング一位にも輝いたことのある冒険者から、逃げるのは恥ではないという言葉が出てくるとは思っていなかったのだ。

「死んじまったらその時点で終わりだ。ダンジョンで死ぬのは本望っていう奴もいるだろうが、そんなもん俺から見ればクソくらえだ! 生きているからこそ、俺達冒険者は人生を楽しめるんだ! いいか、絶対に死ぬな!」
「「「「おおおおおおおおぉぉっ!」」」」

 安全地帯にこだまする冒険者の声に、新人達は目を見開いて驚いている。
 そんな中、ロンドとカナタはアルバスの鼓舞する姿をその眼に焼き付けていた。

「アルバス様って、やっぱりすごいですね」
「そうだな」

 右手に愛剣を握りしめたアルバスを先頭に、冒険者達は一五階層のボスフロアに足を踏み入れた。

 ※※※※

 廻は両手を胸の前で重ねてモニターを見つめている。
 アルバスだけではない、冒険者全員の無事を祈っていた。

「うーん、メグルは経営者だからダンジョンの応援をするべきなんだけどにゃー」
「そうかもしれないけど、やっぱり誰かが傷つくのを見るのは嫌なのよ」

 首を傾げるニャルバンの発言を一蹴しながらも、廻はモニターから一切視線を外そうとはしない。
 アルバスの言った通り、冒険者の戦いをその眼に焼き付ける為だ。

「私に何ができるかは分からないけど、この戦いを見れば何かが分かるかもしれない。アルバスさん、私はちゃんと見てますからね」

 廻の声が聞こえるはずもないのだが、呟きを落とした直後からランドンと冒険者達の戦いが始まった。

 ※※※※

 冒険者達は高レアリティモンスター──ランドンの姿に度肝を抜かれていた。
 レア度4に進化したランドンは、グランドドラゴンからサウザンドドラゴンとなり、全長は一〇メートルを優に超え、ダンジョンの中でなければ巨大な翼を利用して広大な空を自由に飛び回っていることだろう。
 体皮は漆黒、双眸は深紅、まるで暗闇に憤怒の炎が揺れているかのように冒険者を見下ろしている。
 口を開けば白煙が漏れ出し、体内に宿るブレスがいつ何時吐き出されるのかと警戒を強めてしまう。

「ぼさっとすんじゃねえぞ! 散開!」

 そんな中、ランドンの進化に立ち会っていたアルバスは怒声を響かせて指示を飛ばす。
 その声に反応した冒険者達は左右に駆け出すとランドンを取り囲むようにして武器を構えた。

「……こ、これが、高レアリティモンスター!」
「……マジかよ、こんなもん、俺達じゃ相手にならねえよ!」
「……」

 最後にボスフロアに足を踏み入れたロンドとカナタがそんな声を漏らし、リサエラは声も出せない。
 そんな中、ランドンがおもむろに身体をひねり出した。

竜尾りゅうび攻撃来るぞ! 小僧達はさっさと戻れ!」
「「「は、はいっ!」」」

 アルバスの怒声に従い三人はすぐに安全地帯へと戻って行く。
 冒険者達は竜尾が横薙ぎで迫ってくるギリギリを見計らってしゃがみ込み、距離を取り、飛び越えて回避する。
 中には大盾を構えてしのごうとする者もいたのだが、これは大失敗だった。

「ぐああああああああっ!」

 筋骨隆々の冒険者の体はいとも容易く弾き飛ばされて壁に激突。その衝撃で大きなヒビが広がった。

「ばかやろう! ドラゴンの力をいなせると思うな! そんな奴がいたらとっくにランキング一位になってるぞ!」

 近くにいた冒険者が肩を貸して安全地帯へと移動させられる大盾の冒険者。

「怪我をした奴や心の折れた奴はさっさと安全地帯へ避難しろ! 少しでも迷いがあれば一撃で死んじまうからな!」

 指示を飛ばしながらも、アルバスは大剣を握りしめて駆け出した。
 竜尾の一撃が終わり、巨体が態勢を整えようとしている隙を突いての一撃。

「はああああああっ!」

 大きく一歩を踏み出してからの渾身の袈裟斬りは、ランドンの鱗を斬り裂いて僅かながら肉を断つ。鮮血が流れ落ち、地面を朱に染める。
 アルバスに続いて他の前衛もそれぞれの武器をランドンめがけて振り下ろす──だが、アルバスのようにはいかなかった。

「な、なんだこいつの鱗は!」
「硬すぎるだろう!」

 レア度5のモンスター、ボルキュラの牙から作られた大剣だからこそランドンの鱗を斬り裂くことができた。
 他の冒険者が使う武器は最高でもレア度3であり、レア度2の武器にいたってはこちらの刃が欠けてしまっている。
 ランドンにダメージを与えるには、鱗の隙間へ的確に刃を滑り込ませるしか方法がなかった。

「それなら、これでどうだ!」
「魔法放てええええっ!」

 後衛は八名、全員が魔導師であり、自身が持つ最大の魔法をランドンに殺到させた。
 炎蛇が踊り、激流が飲み込み、竜巻が切り裂き、雷撃が撃ち抜く。
 レア度4相手なら間違いなくダメージを計算できるだけの威力を有していた──それでも、ランドンの深紅の双眸は一切の揺らぎを見せていない。

「グルオオオオオオオオオオオオオォォッ!」

 それどころか、攻撃を受けたことを理解して徐々に双眸を血走らせていくと怒りの咆哮。次の瞬間には口内で揺れる深紅の光がボスフロアに冒険者の影を映し出す。

「全員、全力で避けろ──ブレスだ!」

 誰もが息を呑んだ。
 僅かに揺れていた冒険者の影が、膨大な熱量を誇るブレスによってボスフロア全体を真っ赤に染め上げて消えてしまう。
 防御なんて言葉は役に立たず、アルバスが言うように全力で回避するしか逃げ道はない。

「こ、こんなもの、どうやって回避しろって言うんだよ!」
「とりあえず走れ! ブレスの逆方向に全力で!」

 右往左往する冒険者達。
 ブレスも無限に吐き出されるわけではない。逆方向に逃げ続けることができれば回避も事実上可能ではあるのだが、それを全員が実践できるかと言われればそうではなく、そして攻撃手段はブレスだけではない。
 直撃は免れても熱波にやられて肌が爛れる者がいた。
 ブレスに気を取られて竜尾による一撃を受ける者がいた。
 ブレスと竜尾を回避できたとしても、心を折られる者がいた。
 レア度4の希少種、その実力を冒険者達はまざまざと実感させられていた。

「戦えない奴はさっさと下がれ! 死ぬぞ、邪魔だ!」
「そうは言うがアルバスさんよ! それじゃあほとんどの冒険者が残らねえぞ!」

 アルバスに声を震わせながら返事をしたのはヤダンである。
 冒険者ランキング497位の実力者ではあるが、アルバスを除けばヤダンがここにいる冒険者の中で一番の実力者でもあった。
 そんなヤダンが声を震わせている。ブレスを回避し、竜尾も回避したが、今にも心が折れそうになっている証拠だ。
 アルバスは周囲に視線を向けると、ボスフロアには自身も含めて六名しか残っていない。
 それもヤダン以外の残り四名は怪我をして動けなかったり、心を折られて呆然としている。

「……ちっ! ヤダン、全員を安全地帯に下がらせろ!」
「なあっ! ア、アルバスさんは!」
「俺も全員が下がったらすぐに下がる! それまではこいつを引き付けておく!」
「一人でなんて無茶だ!」
「早くしろ! こいつらを助けられるのはてめえしかいないんだぞ!」

 他の冒険者も近くにいた動けなくなっている冒険者を助けながら安全地帯に下がっていた。それでも人手が足りなかったのだ。
 この場でランドンを相手にして時間を稼げる人物は、アルバス以外にはいなかった。

「……くそったれ! 絶対に死なないでくださいよ!」
「当然だ。死んじまったら小娘にどやされるからな」

 最後には笑みまで浮かべて余裕を見せたアルバスを信じ、ヤダンは近くにいる冒険の下へと駆け出した。

「……さて、ランドンよ。ここからは俺と一対一で勝負といこうぜ」
「……グルルルルゥゥ」
「付き合ってくれるのか? さすがはレア度4の希少種だ。言っていることが分かるみたいだな」

 大剣を右手で肩に担ぎ、隻腕独特の構えでランドンの攻撃に備える。

「グルオオオオオオオオオオオオオォォッ!」

 一方のランドンもアルバスとの一対一を承諾したかのように右腕をアルバスめがけて振り下ろした。
 あくまでもアルバスが生きている間は一対一の勝負である。死んでしまえばヤダンを含めて残る五名の冒険者が次のターゲットになるだろう。
 その事に気づいているアルバスは無理をすることはせずに確実に攻撃を回避する。
 しかし、右腕の一撃はただの振り下ろしではなかった。

「うおっ!」

 地面を大きく揺るがす一撃によって、アルバスは着地と同時にバランスを崩してしまう。
 そこに迫ったのがリーチの長い竜尾による一撃。
 近づきすぎた為に後方へ下がることもできず、地面を削りながら迫る一撃では潜り込むこともできず、バランスを崩している今の状態では太い竜尾を上に回避することもできない。
 ならばどうするか──大剣を地面に突き刺して腹を斜め上に向け、全身で大剣を支えた。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 筋骨隆々の冒険者を一撃で弾き飛ばした竜尾による一撃を、アルバスは磨き抜かれた技術によって力を完璧に受け流すことに成功した。
 ドラゴンの一撃をいなせるからこそ、アルバスはランキング一位になることができたのだ。

「……グルルゥ?」
「はあ! はあ! はあ! はあ!」

 それでも大きく息を吐き出しているアルバス。
 受け流すことはできたものの、体力を一気に削り取られてしまい、これ以上の戦闘継続は不可能になっていた。
 このまま続けてしまえば、アルバスですら殺されかねない。

「──アルバスさん! 全員が避難しましたぜ!」

 そこに聞こえてきたヤダンの声をきっかけに、アルバスはなりふり構わず安全地帯へと駆け出した。
 その表情は元冒険者ランキング1位とは思えない程に必死の形相をしていた。
 全速力で逃げるアルバスの背中に、ランドンが選択した攻撃手段はブレス。
 射程も長く確実な死を届けることができるブレスは、口内から一直線にアルバスの背中へと迫っていく。
 アルバスが先か、ブレスが先か。
 ボスフロアを深紅に染め上げたブレスは、安全地帯に繋がる膜に着弾すると大爆発を巻き起こした。
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