異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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オレノオキニイリ

師匠と弟子

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 髭面の男性は廻達を──いや、アークスを睨みつけながら口をへの字にしたまま動こうとはしない。
 その人柄を知らない人がその様子を見れば怒っているのだと思うだろうが、アークスは特に気にすることもなく前へと進みカウンターの前に立つ。

「……戻りました、師匠」
「……おう」

 とても簡単なやり取り。
 それでも二人の中ではこれだけで伝わるものがあった。
 苦笑するアークスとは対照的に、口端を軽く上げて笑みを浮かべる髭面の男性。

「……紹介します。俺がお世話になっている都市の経営者のメグルさんと、冒険者のヤニッシュさんです」
「み、三葉廻です!」
「ロンド・ヤニッシュです!」

 強面でもある髭面の男性に緊張してか、二人とも直立不動で自己紹介をする。
 経営者、という言葉に一瞬だけこめかみをピクリとさせたものの髭面の男性はすぐに口を開いた。

「……儂はヴォルグ・ガルウィンじゃ」

 作業着姿がよく似合うがたいが良いヴォルグだが身長は廻よりもやや大きいくらいの小柄である。
 そんなヴォルグだが、二杉への視線だけはやや厳しいものになっていた。

「……あんたは経営者様じゃったな」
「あぁ。今回、弟子のアークスの件で迷惑を掛けてしまいすまなかった」

 経営者からの謝罪。
 廻に対してはこめかみを動かすだけの反応で止めていたが、二杉の行動には目を見開いて驚きを露わにした。

「……わ、儂が謝られる覚えはないぞ?」
「これは俺の自己満足の為の謝罪だから、気にしないでくれ」
「……そうか、分かった」

 自分に害がないと分かれば特に気にすることもないだろう、といった感じでヴォルグはわずかに息を吐き出す。

「それで、今日はどうしたんじゃ? 別の都市で世話になってるなら、ここでまた仕事をするわけじゃないんじゃろう?」
「バタバタで飛び出してしまいましたから、挨拶をと思って。メグルさんのご厚意でついて来てしまいました」
「そんなことか。お前の腕前は一流じゃから、こっちのことを気にする必要はないぞ」
「それでも挨拶はしたかったんですよ」
「……そうか。それなら他の鍛冶師に声を掛けてこい。切磋琢磨していた奴らもいるだろう」

 アークスさんの言葉は嬉しいのだが、ヴォルグさんは他にも挨拶をしてこいと右手を軽く振る。
 顔を逸らしている様子を見て恥ずかしいのだとアークスは理解した。

「……分かりました。またすぐに戻ってきますけど、皆さんはどうしますか?」
「俺は屋敷に戻ろうと思う。俺が残っていたら変に緊張させてしまうからな」
「でしたら私も戻ります。エルーカはどうする?」
「えっと、私は……」
「エルーカさん、よければオレノオキニイリを案内してくれませんか?」

 迷っていたエルーカにロンドが声を掛ける。

「でも、アークスさんは?」
「せっかく友人と顔を合わせるのに、僕がいたら遠慮させてしまいそうで」
「……分かりました。ジーエフでは案内してもらいましたから、私が案内しますね」
「メグルさんはどうしますか?」

 全員の視線が廻に集まった。
 アークスについて行くか、屋敷に戻るか、オレノオキニイリを案内してもらうか。
 廻の返答は、そのどれでもなかった。

「私はヴォルグさんとお話をしていたいと思います」
「なぬっ!」
「そうですか。でしたら師匠、メグルさんをよろしくお願いします」
「いや待てアークス、何故にこのような嬢ちゃんを――」
「それでは行ってきます」
「みんな行ってらっしゃい!」

 困惑するヴォルグを尻目に廻以外の面々は鍛冶屋を後にした。
 残された廻とヴォルグ。

「よろしくお願いします、ヴォルグさん!」
「……お、おぅ」

 何をよろしくなのだろうかと思ったヴォルグだったが口にはしなかった。
 女の子の姿をしているが相手は経営者である。不敬を働くわけにはいかないという気持ちが強く出ており声にもやや力がない。

「あー、私は経営者ですけど特に気にせずに普通に接してくださいね。アークスさんにも他の住人にもそう言ってますから」
「……アークスもメグル様じゃなくてメグルさんと呼んでいたか」
「そうそう! だからヴォルグさんも気安く呼んじゃってください! 呼び捨てでも全然いいので、こんな子供相手に敬語とか疲れるんじゃないですか?」
「……いや、それは遠慮しておこう」
「なんで!?」

 呆れ顔ではっきりと断れてしまい驚く廻だったが、それが当然だろうと溜息をつくヴォルグ。
 だが、廻の態度を見て少しの安堵も見せていた。

「……アークスのこと、ありがとよ」

 アークスがオレノオキニイリを出た時、ヴォルグはとても心配をしていた。
 次の都市で上手くやれるのか、経営者はどういう人なのか、悪い経営者に引っかかっていないのか。そんなことばかりを考えていた。
 出ていった当初は仕事も手に着かず、周囲の仲間から心配の声が何度も掛けられていたくらいだ。

「お礼を言いたいのは私の方です。アークスさんが来てくれて私の都市は人気が出たんですよ。アークスさんの腕を求めてやってくる冒険者までいるくらいなんです」
「そうなのか?」
「そうですよ。私がここに来たのは二杉さんに誘われたからでもありますけど、アークスさんの師匠、ヴォルグさんにお礼を言いたかったからでもあるんです。ヴォルグさん、アークスさんを育ててくれて本当にありがとうございました」

 ニコリと笑い頭を下げた廻。
 驚きのあまり固まってしまったヴォルグだったが、年の功というべきかこれが廻という人間なのだろうとすぐに理解して笑みを浮かべる。

「……儂は儂が弟子にしたいと思ったアークスを育てただけじゃ。お礼を言われる筋合いはないぞ」
「うふふ、照れてるんですか?」
「て、照れてなどおらん!」
「本当ですか? すこーし顔が赤くなってますよ?」
「それはお主が茶化すからじゃろう!」
「えー、私のせいですか?」
「お主! ……はぁ、もういいわい」

 経営者としては変わり者だが、人としてはとても付き合いやすい相手だとヴォルグは廻を評価した。
 だからこそ、心の底からアークスのことを任せられると信じることができた。

「……まあ、変わり者過ぎるのも問題か」
「んっ? 何か言いましたか?」
「いや、なんでもない。それで、話が終わりならお主もどこかを見てきたらいい」
「えっ? 行きませんよ?」
「……そうなのか?」
「そうですよ。一人で出歩いて迷子になるのも嫌ですし、ここでお話してますよ」
「……そうか」

 頭を抱えそうになったヴォルグだが、仕事の邪魔にならなければいいかと考えなおし何も言わなかった。
 結局、廻はアークスが戻ってくるまでヴォルグの作品を見て回りながら質問を口にし、それに答えるという構図がずっと続くのだった。
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