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様々な動き
アルバスとジギル⑤
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目の前に広がる広大なボスフロア。そして、その中央に鎮座するランドンを目の当たりにしてジギルが口笛を鳴らす。
「ヒュー。思っていた以上にヤバそうだわね」
「今から引くか?」
「引かないのが分かってて聞いてるでしょ?」
「……まあな」
アルバスが大剣を、ジギルが直剣を構えると即座に走り出した。先手必勝と言わんばかりに素直な真っ直ぐの前進。
ボスフロアに二人が足を踏み入れた瞬間からランドンはその存在に気づいているのだが、それでも迎撃が間に合わないほどの速度で迫ってきていた。
「オラアッ!」
「はあっ!」
硬い鱗をものともしない二人の斬撃は、鱗を断ち肉を断つ。骨まではいきつかなかったが、それでもイベント時にはあり得なかった展開であり、さらにランドンとしても生まれてから今日まで一度も経験したことのない激痛に驚きを見せている。
ならば好機と二人はさらに苛烈な攻撃を繰り出していく。
アルバスは隻腕とは思えないほどの荒々しさを伴った力強い一撃を。
ジギルは直剣の等級を示す斬れ味に加えて本人の類い稀な動きと技術で鱗だけではなく、その隙間に刃を滑り込ませてより深く斬りつけていく。
このまま押し切れる──はずもなく、ランドンは竜尾の一撃から距離を取ろうと一気に振り抜く。
「アルバス!」
「やってやるよ!」
「グルオオオオォォッ!」
回避行動を取るだろうと予想していたランドンだったが、アルバスがその場で大剣を地面に突き刺したのを見て過去の情景が頭の中に浮かび上がっていた。
一対一の戦いの中、竜尾による攻撃を受け流した冒険者がいたことを思い出していた。
そして、その相手が目の前で自分を睨みつけている冒険者だと認識していた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
アルバスは再び竜尾攻撃に耐えて見せた。
竜尾は大剣に沿って斜め上へ力の方向を変えられ、そして当然ながら実体も打ち上がる。
竜尾による攻撃の心配がなくなったジギルは──否、元よりアルバスが受け流してくれると信じていたからこそ攻撃の手を緩めるようなことはしていなかった。
「さすがアルバス! あんなのは私じゃできないし、元パーティでも無理ね!」
「こっちは死ぬ気でやってんだよ!」
「あはは! それじゃあ、私も死ぬ気で倒しに掛からないといけないわね!」
目の前でアルバスが活躍する姿に興奮しながら、ジギルの動きがさらに加速していく。
直剣はすでに視認できる速度限界を超えており、硬い鱗が紙屑のように細切れにされていく。
肉までしか届いていなかった刀身は、いつの間にか骨まで到達する一撃も出てき始めた。
「グルオオオオォォッ!」
「あはは! さあ、苦痛の声をあげなさい! あんたは初めての敗北を知ることになるのよ!」
「ちいっ! ジギル、一度引け──ブレスが来るぞ!」
ジギルは興奮するあまり前に出過ぎていた。これは竜尾攻撃を警戒するためでもあり、ブレス攻撃をさせないためでもあった。
だが、ランドンはブレス攻撃を決行した──自らの肉体を焼くことを恐れずに。
「ガアアアアアアアアァァッ!」
口内に広がる真っ赤な揺らめき。
触れたものを絶対の死に追いやるランドンのブレスが、自滅覚悟で吐き出された。
「うわっと!」
「早く離れろ!」
「これは、ちょっと、マズいかも!」
油断していたわけではない。むしろ絶対に倒してやるという気合いに満ち溢れていた。
だが、今回はその気合いが前のめりに出過ぎてしまった。
表情は笑みを刻んでいるものの、あきらかに引きつった笑いに変わっているジギル。
流れ出る汗が飛び散り、ブレスに触れるまもなく蒸発して消えてしまう。
すでに肩当てにブレスが擦り灰になっている。もし肉体の一部にでも触れてしまえば命はない。
「アルバス、引きなさい! こいつは、私の予想を超えているわ!」
「ガアアアアアアアアァァッ!」
ついにジギルの表情からは笑みが消え、死を覚悟した悲壮なものへと変わる。
しかし、そうはさせまいとジギルよりも前に出た人影を見つけた時には表情がさらなる移り変わりを見せていた。
「アルバス!」
「これでも、ドラゴンとは何度もやり合ってるんでな! ブレスの対処方法はいくつか知ってるんだよおおおおおおおおっ!」
アルバスが選択した対処方法、それは──ただ力一杯に大剣を振り抜く、だった。
隻腕にアルバスが放てる全力の一撃を乗せて大剣を振り抜く。地面を砕き、突風にも似た風が巻き起こった一撃はジギルも、ランドンですら予想し得なかった現象を目の前に生み出してしまう。
「ウッソおっ! ブレスを、斬ったあっ!?」
「ガアアアアッ!?」
「はっはあっ! 隻腕でもできるもんだなあ!」
その表情に余裕の笑みを浮かべているが、実は死を覚悟した一振りでもあった。
だが、死ねないという思いも胸に秘めていた。
ブレスの前に飛び出した瞬間、アルバスの脳裏には一人の少女の顔が浮かんでいたから。
「俺達は生きて地上に帰らないといけないんだ。だからランドン、申し訳ないが初めての敗北を味わってくれよ?」
「グ、グルルゥゥ……グルオオオオォォッ!」
「全く、規格外もいいところよ。でもまあ、助かったわ」
「これを機に、冷静な攻撃を頼むぜ、現ランキング1位さんよ」
「当然! 私だってまだ死にたくないもんね!」
こうして、ランドン戦の第二ラウンドが開始された。
「ヒュー。思っていた以上にヤバそうだわね」
「今から引くか?」
「引かないのが分かってて聞いてるでしょ?」
「……まあな」
アルバスが大剣を、ジギルが直剣を構えると即座に走り出した。先手必勝と言わんばかりに素直な真っ直ぐの前進。
ボスフロアに二人が足を踏み入れた瞬間からランドンはその存在に気づいているのだが、それでも迎撃が間に合わないほどの速度で迫ってきていた。
「オラアッ!」
「はあっ!」
硬い鱗をものともしない二人の斬撃は、鱗を断ち肉を断つ。骨まではいきつかなかったが、それでもイベント時にはあり得なかった展開であり、さらにランドンとしても生まれてから今日まで一度も経験したことのない激痛に驚きを見せている。
ならば好機と二人はさらに苛烈な攻撃を繰り出していく。
アルバスは隻腕とは思えないほどの荒々しさを伴った力強い一撃を。
ジギルは直剣の等級を示す斬れ味に加えて本人の類い稀な動きと技術で鱗だけではなく、その隙間に刃を滑り込ませてより深く斬りつけていく。
このまま押し切れる──はずもなく、ランドンは竜尾の一撃から距離を取ろうと一気に振り抜く。
「アルバス!」
「やってやるよ!」
「グルオオオオォォッ!」
回避行動を取るだろうと予想していたランドンだったが、アルバスがその場で大剣を地面に突き刺したのを見て過去の情景が頭の中に浮かび上がっていた。
一対一の戦いの中、竜尾による攻撃を受け流した冒険者がいたことを思い出していた。
そして、その相手が目の前で自分を睨みつけている冒険者だと認識していた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
アルバスは再び竜尾攻撃に耐えて見せた。
竜尾は大剣に沿って斜め上へ力の方向を変えられ、そして当然ながら実体も打ち上がる。
竜尾による攻撃の心配がなくなったジギルは──否、元よりアルバスが受け流してくれると信じていたからこそ攻撃の手を緩めるようなことはしていなかった。
「さすがアルバス! あんなのは私じゃできないし、元パーティでも無理ね!」
「こっちは死ぬ気でやってんだよ!」
「あはは! それじゃあ、私も死ぬ気で倒しに掛からないといけないわね!」
目の前でアルバスが活躍する姿に興奮しながら、ジギルの動きがさらに加速していく。
直剣はすでに視認できる速度限界を超えており、硬い鱗が紙屑のように細切れにされていく。
肉までしか届いていなかった刀身は、いつの間にか骨まで到達する一撃も出てき始めた。
「グルオオオオォォッ!」
「あはは! さあ、苦痛の声をあげなさい! あんたは初めての敗北を知ることになるのよ!」
「ちいっ! ジギル、一度引け──ブレスが来るぞ!」
ジギルは興奮するあまり前に出過ぎていた。これは竜尾攻撃を警戒するためでもあり、ブレス攻撃をさせないためでもあった。
だが、ランドンはブレス攻撃を決行した──自らの肉体を焼くことを恐れずに。
「ガアアアアアアアアァァッ!」
口内に広がる真っ赤な揺らめき。
触れたものを絶対の死に追いやるランドンのブレスが、自滅覚悟で吐き出された。
「うわっと!」
「早く離れろ!」
「これは、ちょっと、マズいかも!」
油断していたわけではない。むしろ絶対に倒してやるという気合いに満ち溢れていた。
だが、今回はその気合いが前のめりに出過ぎてしまった。
表情は笑みを刻んでいるものの、あきらかに引きつった笑いに変わっているジギル。
流れ出る汗が飛び散り、ブレスに触れるまもなく蒸発して消えてしまう。
すでに肩当てにブレスが擦り灰になっている。もし肉体の一部にでも触れてしまえば命はない。
「アルバス、引きなさい! こいつは、私の予想を超えているわ!」
「ガアアアアアアアアァァッ!」
ついにジギルの表情からは笑みが消え、死を覚悟した悲壮なものへと変わる。
しかし、そうはさせまいとジギルよりも前に出た人影を見つけた時には表情がさらなる移り変わりを見せていた。
「アルバス!」
「これでも、ドラゴンとは何度もやり合ってるんでな! ブレスの対処方法はいくつか知ってるんだよおおおおおおおおっ!」
アルバスが選択した対処方法、それは──ただ力一杯に大剣を振り抜く、だった。
隻腕にアルバスが放てる全力の一撃を乗せて大剣を振り抜く。地面を砕き、突風にも似た風が巻き起こった一撃はジギルも、ランドンですら予想し得なかった現象を目の前に生み出してしまう。
「ウッソおっ! ブレスを、斬ったあっ!?」
「ガアアアアッ!?」
「はっはあっ! 隻腕でもできるもんだなあ!」
その表情に余裕の笑みを浮かべているが、実は死を覚悟した一振りでもあった。
だが、死ねないという思いも胸に秘めていた。
ブレスの前に飛び出した瞬間、アルバスの脳裏には一人の少女の顔が浮かんでいたから。
「俺達は生きて地上に帰らないといけないんだ。だからランドン、申し訳ないが初めての敗北を味わってくれよ?」
「グ、グルルゥゥ……グルオオオオォォッ!」
「全く、規格外もいいところよ。でもまあ、助かったわ」
「これを機に、冷静な攻撃を頼むぜ、現ランキング1位さんよ」
「当然! 私だってまだ死にたくないもんね!」
こうして、ランドン戦の第二ラウンドが開始された。
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