異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

文字の大きさ
177 / 183
過去の精算

ゼウスブレイドのダンジョン攻略⑭

しおりを挟む
「ギリギリ間に合ったみたいだな」
「だけど、レインズとライラがいないわよ?」
「すれ違うこともなかったですよね?」

 安堵するアルバスとは異なり、ジギルとロンドはこの場にいない二人の人物へ思考を巡らせる。

「まあ、いない奴の心配をする必要はないだろう。今はこいつらを安全地帯に──」
『グルオオオオアアアアアアアアッ!!』

 しかし、当然ながらランドンがそれを許すはずがない。
 さらに言えば、一度自らを倒しているアルバスとジギルが目の前にいるのだから怒りに震えるのも納得がいく。
 様子見などする必要もなく、初手からブレスを放出したのだ。

「小僧は小娘を担いで走れ!」
「わ、分かりました!」
「ヴィルさん、クックさん!」
「安心しろ、こいつは──ジギルが倒してくれる」
「ぐぐぐ……ぐぐグ……グルアアアアアアアアッ!!」

 ここにきてジギルが自らのスキルを発動させた。
 スキル名は──狂戦士バーサーカー
 任意で指定した目標を倒すまでの間、自らの理性を引き換えに身体能力を三倍引き上げることができる強力なスキルである。
 ブレスの真横を駆け抜けることで最短距離を進むジギルだが、その肌はブレスに触れていなくても熱波に焼かれて黒く変色していく。
 しかし、狂戦士の効果によって痛覚が麻痺しているジギルにとっては即死の攻撃以外は完全無視を決め込み目標へと迫ってしまう。

「ゴオオオオロオオオオスウウウウウウウウッ!」

 振り抜かれた直剣がランドンの右前脚を抉り鮮血が激しく飛び散ると、真下を潜り抜けて左後ろ足まで斬り裂いてしまう。
 動くランドンの鱗と鱗の隙間に剣を通すのも至難の業なのだが、ジギルはそれをいとも容易く全力で振り抜く中で行ってしまう。
 足の踏ん張りが利かなくなったランドンだが、それでも首をねじりジギルを執拗に狙おうとする。

『グルル、グルオオアアアアッ!』
「ジャマダアアアアアアアアッ!」

 いつもの明るい声が野太く低い声に変わり、どちらがモンスターの咆哮なのか聞き分けることすら困難になっていく。
 お互いに傷を負う中、ここで差が出てきたのは動きの優劣だった。
 痛みを感じるランドンの動きは見た目にも分かるくらいに鈍り、その場からほとんど動こうとはしないのに比べて、痛覚が麻痺しているジギルは肌を焼かれようとも、血を撒き散らせようとも、その体が動く限りは目標を殲滅するために動き続ける。
 どちらがより人間に近いのかと問われれば、ランドンと答える者がほとんどかもしれないが今回は人間離れしたジギルのスキルがレア度4の希少種という強力なモンスターを上回ったのだ。

「シイイイイネエエエエエエエエエエエエッ!!」
『グギャオオオオアアアアアアアアアアアアッ!!』

 首を捻ったタイミングでジギルが肉薄するとカウンターをその首へと滑り込ませる。
 このままでは殺されると直感的に理解したのか、ランドンはブレスを中断して首を予定とは異なる方向へと動かして鱗で防ごうと試みた。
 だが、その動きに合わせるようにジギルの直剣は並みのようにうねり鱗と鱗の隙間を見逃すことはなかった。

 ──ザンッ!

 聞こえてきた切断音を聞いた者は誰もいなかった。
 すでに全員がボスフロアから退避しており、ジギルとランドン──一人と一匹しか残っていなかった。
 短期間のうちに二度も破れるとは思ってもいなかったかもしれない。そもそもモンスターに過去、倒された時の記憶が残るなど聞いたこともない。
 しかし、今回ランドンが見せた行動原理にはリベンジという言葉がしっくりくるほどにジギルへと執着を見せていた。
 アルバスではなく、あの時殺し損ねたジギルへの執着。そして何より、スキルを使わないという手を抜かれたことへの屈辱だ。
 それでもランドンの思いが成就することはなく、ゆっくりと首と首が繋がっていた切断面がずるりとずれてそのまま地面へと落下した。
 大きな音が地面を揺るがすと、先ほどまでとは全く違う静寂がボスフロアを包み込んだ。

「…………はぁ……はぁ、はぁ……ふぅー、終わったー!」

 いつもの明るい声音に戻ったジギルはそう口にするや否や大の字になって倒れてしまった。
 身体能力を向上させるということはつまり、無理やり体を動かしているということ。その疲労や損耗は計り知れない。
 今も横になってはいるが動かなくても体中に激痛が走っていることだろう。

「お疲れさん」
「お疲れー。アルバスー、動けないから抱っこしてー」
「アホか」

 冗談が言えるなら大丈夫だろうと判断したアルバスはジギルの体を起こすと抱っこではなくおんぶでその場から歩き出す。

「……アルバスの背中は、大きいね」
「当り前だろう。身長差がどれだけあると思ってるんだよ」
「……もう! そういう意味じゃないんだってば!」
「あん? ……まあいい。レインズ達は仲間を置いて逃げたんだとよ。戻るだけならスキルなしでもなんとかなるだろうし、俺達は三人を連れて戻るぞ」
「はーい!」

 嘆息するアルバスとは違い、ジギルはその背中で笑みを浮かべながらも力の入らない腕でギュッと掴まるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...