門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第11話:船上の戦い

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 船員も避難し、甲板にいるのは俺とレミーさんの二人だけ。
 鳴き声のした方へ視線を向けると、そこには空を舞う魔獣の群れが確認できた。

「ちいっ! まさか、水棲の魔獣じゃなくて、鳥の魔獣かよ!」
「レミーさん。ジーラギ国にはいない魔獣です。特徴を教えてくれますか?」

 複数の小型魔獣の後方に、やや大きめの、中型魔獣の姿が見える。

「あいつらはバブルスワロウ! 一匹のボスが群れを率いて商船を襲い、あたいたちをエサとして喰らっていく魔獣だよ!」
「それじゃあ、ボスを仕留めれば終わりですね」
「……そう簡単にいかないのが、鳥の魔獣の面倒なところだよ」

 確かに、ジーラギ国でも鳥の魔獣には苦労した記憶がある。
 制空権を握られて、上空から加速して攻撃しては、即座に飛び上がりこちらの間合いから離れていく。
 ランクCの魔獣ですらそうなのだから、もし実力がそれよりも上であれば面倒なのは必至だろう。

「……まあ、物は試しだな」

 何もせずに面倒だと決めつけるのは嫌なので、俺は初手で群れのボスを狙う事にする。
 上手くいけば運が良く、ダメだったとしても小型の方をいくらか仕留められれば御の字だろう。

「……あんた、何をする気だい?」
「一発、かましてやるんですよ!」

 俺は剣の柄に手を伸ばして腰を落とし、バブルスワロウに対して半身の体勢を取る。
 そして、魔獣キラーとは別の、もう一つのスキルを発動させた。

「バードスラッシュ!」

 鞘から抜き放たれた刀身を白い光が覆っており、その光が三日月の刃を形成して放たれる。
 放たれた刃はぐんぐんと風を切って進み、バブルスワロウの群れを切り裂き、後方に控えていたボスへと迫る。

『ギャギャッ!?』
「真っ二つだ」

 この距離から攻撃があるとは思っていなかったのか、バブルスワロウのボスは驚きの鳴き声を漏らし、空中で左右に両断される。
 統率者を失った小型のバブルスワロウは、空中をあちらこちらに飛び回るだけで船を襲おうとはしていない。
 だが、前線に飛び出していた小型は魔獣の本能だろう、甲板にいる俺たちめがけて急降下してきた。

「烏合の衆だな」
「なら、残りはあたいに任せてもらえるかねえ!」

 良いところを持っていかれたからか、レミーは巨大な槍を頭上で回転させながら、迫ってくる小型目がけて穂先を振るう。
 そのまま両断、かと思ったのだが、穂先に触れた小型はその身を粉砕させており、その膂力に驚きを覚える。
 だが、確かに穂先が小型を捉えているのに、どうして両断ではなく粉砕なのかと、戦闘中ではあるもののジッと観察してしまう。

「……これも、スキル効果だろうなぁ」
「気づいたかい? あたいのスキルはヘビーランスってやつで、槍での攻撃時に重量が追加されるのさ!」

 なるほど。だから両断ではなく、触れた時点で過度な重量が加わっての粉砕になるわけか。

「恐ろしいスキルだな」
「あんたの魔獣キラーには及ばないよ! それに、バードスラッシュ、飛ぶ斬撃まで……まさか、こんなところでダブルスキル持ちに会えるとは思わなかったよ!」

 レミーが口にした通り、Wスキル持ちは貴重な存在である。
 通常、スキルは一人に一つと言われているが、俺のように二つのスキルを与えられる者もいたりする。
 それだけで貴重な存在なのだが、俺は本当に生まれる国を間違えたようだ。
 魔獣キラーに加えてのWスキルは、侮蔑をさらに加速させてしまった。

『――卑怯者は離れたところから魔獣を狩るのか!』
『――どれだけ怠け者なのか!』
『――貴様なんぞ、働けるだけありがたいと思え!』

 ……あぁ、思い出しただけでもげんなりしてきたぞ。

「おい! ボスを片付けたが、まだ小型は多いんだぞ!」
「あ、あぁ、すまない!」

 おっと。嫌な過去に気持ちを向けている暇はなかったか。
 まあ、そんな過去を思い出したくはないので構わないか。

「デン! ……っと、リムルさんのところに行ってるんだったか」

 仕方ない、ここは二人で烏合の衆を片付けるかな。
 そんな事を考えていると、船室へ通じるドアが乱暴に開かれて、中からガイウスさんが姿を見せた。

「おぉい! もっと先からでっかい魔獣が来てるぞ! 今度は水棲の魔獣だあ!」
「ちいっ! 次から次へと!」
「任せろ!」

 俺は素早く剣を振り抜き小型を両断しつつ、ガイウスさんの足元を素早く駆け抜けてきた影に声を掛けた。

「今度こそ頼むぞ――デン!」
「心得たぞ、レインズよ!」
「うおあっ!? こ、今度は何なのよ! こんな魔獣、知らないわよ!」
「ど、どこから入り込んだんだあっ!?」

 しまった、説明してなかったか。

「こいつは俺の従魔だ! デン、いけるか?」
「容易いな。感じられる気配からだと、ランクDくらいかのう」

 ……なんだ、そんなもんか。
 となると、バブルスワロウはランクEくらいかもな。

「……ん? 全く、つまらん」
「どうしたんだ?」

 俺の問いに対しての答えは、後方から聞こえてきた。

「……魔獣が、逃げていったのか?」

 おぉ、どうやらガイウスさんは遠見のスキルを持っているみたいだ。
 そして、デンが姿を露わにしたおかげか小型も逃げ出すか、そのまま気を失ってしまったので対処が楽になったがな。
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