門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

文字の大きさ
23 / 107
第一章:不当解雇

第21話:よろず屋のヒロ

しおりを挟む
 ――……ぅぅん、ふわああああぁぁ。

「……久しぶりに、ゆっくり寝られたなぁ」

 野営だったり、船の上だったり、なかなか大変な日々だったからなぁ。
 これからはゆっくりと過ごすことができるはずだ。

「っと、村長たちに挨拶に行かないとな」

 このまま寝ていたい気持ちもあったが、まずは村の事を知る必要がある。
 それから、ここでできる仕事を探さなければならない。
 魔獣狩りがメインになるだろうけど、それだけでは有事の時以外は仕事がないからな。
 客間から廊下に出ると、ちょうどその先でレジーナさんを見つけた。

「おはようございます、レジーナさん」
「おやおや、お早い事で。おはようございます、レインズさん」
「村を見て回ろうと思っているのですが、出歩いても――」

 そこまで口にしたところで、屋敷の外から声が聞こえてきた。

「村長! レジーナさん! おはようございまーす!」
「この声は、リムルさんですね。……せっかくですから、リムルさんに案内してもらったらどうですか?」
「リムルにですか?」

 ……まあ、村を知っている人がいてくれると、ありがたいか。

「わかりました。頼んでみます」
「うふふ。頼まなくても大丈夫だと思いますよ」
「……? では、先に失礼します」

 頼まなくてもって、どういう事だろう。
 そんな事を考えながら屋敷の玄関に移動すると――

「おはようございます、レインズさん! 村をご案内しますので、一緒に行きましょう!」

 ……なるほど、こういう事か。
 確かにこれなら、俺が頼まなくてもいいな。

「それじゃあ、お願いするよ」
「はい!」
「おやおや、もう行くのですかな?」

 元気いっぱいなリムルに苦笑していると、村長が微笑みながら顔を出してきた。

「おはようございます、村長。少し、リムルと村を見て回りたいと思います」
「わかりました。では、ご飯はいかがしましょうか? レインズ殿は朝もまだ――」
「あの! 私、弁当を作ってきたので、これを食べましょう!」
「……弁当? だが、いいのか?」
「はい!」

 ふむ、ならば飯の心配はないか。

「ということなので、そのまま向かいたいと思います」
「では、気をつけていってきてくださいね」

 ニコリと微笑んだ村長に見送られて、俺とリムルは屋敷を後にした。

 最初に向かった先は、様々な商品が所狭しと並べられている建物。……商店、なのだろうか。
 だが、並んでいる商品に統一性はなく、なんでも屋なのかもしれない。

「ヒーロさーん!」
「失礼します」

 店に入ると、奥のカウンターでお茶を飲んでいる初老の男性が顔を上げた。

「おや? リムル君ではないですか。それと……」
「レインズと言います」
「あぁ、移住者の方だね。すまないね、私は足が悪くて、宴には参加していなかったんだよ」

 カウンターに手をついて立ち上がった店主は、ニコリと微笑んで自己紹介をしてくれた。

「私は店主のヒロと言います」
「こちらは、なんでも屋ですか?」
「みたいなものだね。ここではよろず屋と言わせてもらっているけどね。みんなのいらなくなった物を買い取ったり、修理して売ったりしているんだよ」
「それが、これですか」

 明らかに使えないだろう壊れたコップに、腕の取れた人形に、何に使うか全くわからない道具。
 これらを買い取っているというのだから、まさによろず屋なのだろう。

「私は珍しい物が好きでね。自分でも時折、都市に行っているんだよ」
「その足でですか? 難儀でしょう」
「たまにやってくる行商人の馬車に乗せてもらうんですよ。帰りは冒険者ギルドに依頼を出してね」

 よろず屋なんてものを営んでいる人なんて、そんなものだろう。
 だが、ウラナワ村のような田舎の村で経営は成り立つのだろうか。

「あくまでも趣味ですからね」
「顔に出ていましたか?」
「60歳手前になると、わずかな表情からも読み取れてしまうんですよ。私の本業は魔獣の皮素材の加工ですからね」

 なるほど、それなら儲かりそうだ。
 魔獣素材を加工できれば、それだけで生活ができるとジーラギ国では言われている。
 それだけ、魔獣素材を使った装備は強力な品になるという事だ。

「凄いですねぇ。……なのに、よろず屋を?」
「趣味ですからね」
「あー……そうでしたね」
「レインズ君も、何か珍しい物……そうですねえ、魔獣の素材などでもいいですから、お持ちください。皮加工であれば、お力になれると思いますよ」
「その時は、よろしくお願いします」

 魔獣狩りは俺の得意とするところだ。
 ヒロさんの腕がどの程度なのかはわからないが、魔獣素材を加工できる時点で相当な凄腕だろう。
 田舎の村で十分な装備を揃えられるとなれば、ありがたい事である。

「……デンの体毛でも、なかなかの装備を作れるんじゃあ――」
『それは許さんぞ! 我の体毛はそんな事に使わせんぞ!』
「ん? 今、声がしませんでしたか?」

 宴に不参加という事は、デンの存在を知らないのだろう。
 ……まあ、近いうちに教える機会はあるだろうから、今はそのままでいいか。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...