門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第36話:リムルの心配と過去

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「それでは、レインズ殿。明日はどうかよろしくお願いいたします」

 その後、渋々といった感じで許可を貰った俺は、明日に備えてゆっくり休ませてもらう事になった。
 デンは影から出てきて自警団と話し合いを続けるのだとか。
 自警団本部を出ると、そこにはもう見慣れてしまった女性と目が合った。

「レインズさん!」
「どうしたんだ、リムル?」

 外はすでに暗く、かがり火で村の中を照らしている。
 女性が一人で出歩くには遅い時間でもあり、俺はどうしてここにいるのか不思議でならなかった。

「その、会議はどうなりましたか?」

 なるほど、会議の内容が気になったのか。

「大丈夫だ、問題はない」
「……本当ですか?」
「あぁ。ウラナワ村の防衛には自警団とデンがついてくれる。俺は人型魔獣を率いているだろうボスを倒しに森の中へ――」
「全然大丈夫じゃないですよ!」

 真正面から特大の大声を張り上げられ、俺は面食らってしまう。

「…………えっと、何がどう大丈夫じゃないんだ? 村長も認めてくれたし、ギレインだって渋々だけど認めてくれたぞ?」
「そういう意味じゃないんですよ! そんな危険なところに一人でなんて……そうだ、デンは連れて行かないんですか?」
「あぁ。ここを守ってもらわないといけないからな」
「そんな……」

 うーん、どうしてここまで心配されるんだろうか。
 確かに自警団の実力からすると強敵になるんだが、俺にとってはたかがBランクやAランク。Sランクとなれば多少手ごたえがあるかなくらいなんだけど。

「……大丈夫。ちゃんと帰ってくるから」
「……私は、レインズさんが心配です」
「ん? 会議の内容が気になっていたんじゃないのか?」
「ち、違いますよ! レインズさんが心配で待っていたんですから! ……はっ!」

 どうやら、俺はリムルに相当心配を掛けさせてしまったみたいだ。
 だが、そこで顔を赤くするのはどうなんだろうか。

「本当に大丈夫だから。言ってなかったが、デンは元々SSSランクの魔獣だったんだぞ? そいつを倒して従魔にしている俺が、BランクやAランクに負けるはずがないさ」
「……嘘です」
「いや、本当だから」
「絶対に嘘です!」

 ……いやいや、マジで本当だからな!

「レインズさんは確かに強いですけど、そんな嘘をつくとは思いませんでした!」
「ちょっと落ち着いてくれ、リムル。デンの話は本当だから、マジだから!」
「SSSランクが伝説の魔獣だって事くらい、私でも知っています! せめてSランクとかにしておけば、私も少し考えてから信じられたんですよ!」

 あまりに強い魔獣というのは、信じてもらえない存在なのか。
 ……ん? ってことは、村長やギレインたちも実は疑っていたのかも?

「と、とにかく! 俺は本当に大丈夫! 魔獣キラーのスキルがあるんだから、マジで信じてくれよ、リムル」
「…………さい」
「ん?」
「絶対に生きて帰ってきてください! 大丈夫だって言って、帰ってこなかった人は大勢いるんですからね!」

 そして、リムルは走り去ってしまった。
 どうしてあそこまで怒り、怒鳴っていたのか。
 俺が困惑したままリムルが消えていった先を見つめていると、声が聞こえたのか村長が自警団本部から出てきてくれた。

「やれやれ、やはりリムルでしたか」
「はい。どうやら俺は、心配されているようです」
「当然ですな。我々でさえ心配しているのですから、リムルならばなおの事」
「どうしてリムルならなおの事なんですか?」

 俺の質問に、村長は浮かなそうな表情を浮かべると、少し間をおいてから口を開いた。

「リムルの両親は、ウラナワ村を守るために魔獣に殺されたのです。その時にも、絶対に戻るから大丈夫だと言って討伐に向かいました。その結果が、死だったのです」

 ……そういう過去があったのか。
 それならば、リムルの反応にも頷ける。

「ですからどうか、レインズ殿は無事に戻ってきてくだされ」
「元々死ぬつもり何てありませんが、なるべく早く戻ってくる必要が出てきましたね」

 さっさとボスを倒して戻ってこれば、その分リムルが心配する時間も少なくできるというものだ。

「……そういえば、村長たちは信じてくれたんですよね?」
「レインズ殿の事ですかな?」
「いえ、デンがSSSランクの魔獣だった事です」
「あぁ、あの話ですか……まあ、程々にという感じですかな」

 ……どうやら、伝説すぎて信じてもらえていなかったようだ。
 デン、お前の存在って、どうなってるんだ?
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