門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第46話:治療院での一幕

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「リムル!」
「あっ! レインズさんにデン!」

 呼び掛けに応えてくれたリムルが手を振り返し、最後の一枚を干し終わるとやや駆け足でこちらに来てくれた。

「こちらに用事ですか?」
「あぁ。みんなの様子を見に来たんだ」
「そういう事ですか。でしたら、こちらにどうぞ」

 そう口にして治療院の中へ案内してくれたのだが、そこは意外にも賑やかに皆が話し込んでいた。

「おう! 昨日ぶりだな、レインズ!」
「師匠! お疲れ様です!」
「魔獣討伐、本当にありがとう」

 ギレイン親子に声を掛けられ、俺はそちらに移動する。

「お疲れ様。とは言っても、ギースたちの方が疲れたんじゃないか? 慣れない相手だっただろう」
「いやいや、Bランク以上の魔獣の群れに、SSSランクを相手にしたお前が言うセリフじゃねえだろう」
「師匠って、規格外だと思っていたけど、本当に規格外なんだな!」
「レインズさんがいなかったらって考えるだけでゾッとするわね」

 俺も疲れはしたものの、自警団よりはマシだと思っている。
 傷の程度も俺の方が軽傷だったし、魔獣キラーのスキルがあったからだいぶ楽だったしな。

「あら、英雄様が来ていたんですね」
「誰がそんな出まかせを言っていたんですか、エミリー先生」

 リムルが声を掛けていたようで、奥の方から一緒に出てきてくれた。

「自警団だけじゃなく、村のみんなもそう言っていますよ」
「俺はただ、自分の仕事をしただけなんですけどね」
「全く。謙虚がここまでいっちまうと、ちょっとだけ自慢に聞こえてくるぜ」
「自慢なわけがないだろう。何度も言っているが、俺は故郷を追い出された身の上だぞ?」
「わかってるよ! ったく、冗談が通じねえなぁ」

 何故かため息をつかれてしまい、他の人からは苦笑が漏れる。……理解できん。
 というわけで、ここは一つ意趣返しをしてやろうか。

「そうそう、ギレイン」
「なんだ?」
「デンがギレインの事を鍛えてやるって言ってたから、傷が治ったら訓練な」
「んなあっ!? お、俺かあっ!」
「当然であろう。お主は曲がりなりにも自警団隊長だからな。それ相応の実力をつけてもらわなければならん」
「いや、んなこと言われてもなぁ」

 頭を掻きながら困り顔を浮かべているギレイン。
 しかし、ここには俺を慕ってくれている味方がいるので援護射撃が飛んでくる。

「マジですか師匠! いいじゃないか、親父! 俺は師匠に、親父はデンに訓練をつけてもらえれば、絶対に強くなれるって!」
「ギース、お前なぁ」
「あら? だったら、私も交ぜてもらってもいいかしら?」

 さらなる援護射撃はメリースさんからだ。

「私も自警団としてのプライドがあるもの。夫や子供が強くなっていくのを、ただ黙って見ているなんてできないわ」
「ふむ。であれば、我がギレインとメリースを鍛えてやろう。……ギレイン、逃げるでないぞ?」
「安心してちょうだい、デン。引きずってでも連れてくるから」
「……お、お前たちなぁ」

 急ではあるものの、ここに新たな師弟関係が結ばれた。……人間と魔獣だけどな。

「そうそう、リムルちゃん。ここはもう大丈夫だから、レインズさんとゆっくりしてきたらどうかしら?」
「えっ! ……で、でも」
「いいじゃないのよ! いってらっしゃい!」

 ……ん? 今の話の流れから、どうしてそうなるんだ?

「我はここでギレインとメリースと、訓練について話をしておく」
「俺も聞きたいです!」
「……まあ、そういうこった。行ってこいよ、レインズ」
「……? あ、あぁ、わかった」

 まあ、治療院に残っていたのはギレイン親子だけだったようだし、傷も問題なさそうだからいいのかな。
 しかし、デンまで残るなんて言い出したが……何かあるのだろうか。

「い、行きましょうか、レインズさん!」
「そうだな。散歩するにはちょうどいい天気だしな」

 剣が仕上がるまでは特にやる事もないし、俺もウラナワ村で特別な場所を見つけておきたい。
 治療院の入口で一度エミリー先生に頭を下げ、俺はリムルと一緒に外に出た。

「どこに行きましょうか?」
「そうだなぁ……それじゃあ、前に足を運んだリムルお気に入りの丘に行って、風に当たってゆっくりして、その後は散歩をしてみようか」
「はい! ……うふふ」
「どうした? 何かおかしい事でもあったのか?」

 とても機嫌が良さそうにしているリムルを見て、俺は何となく聞いてみる。

「違いますよ。ただ、ちょっと嬉しくって」
「そうか……それならよかった」

 魔獣の進化、それもSSSランクが生まれたにもかかわらず、ウラナワ村に大きな被害は出ていない。
 普通であれば考えられない戦果である。
 ……本当に、タイミングよく移住する事ができてよかった。こうして、リムルの笑顔を守る事ができたんだからな。

「……鈍感なんですね」
「ん? 唐突に酷い言われようだな」
「なんでもありませんよー! ……そんなところも……ですし」
「すまん、聞こえなかったんだが?」
「聞こえなくていいんですー!」

 ……いったい何なんだってんだ。
 だがまあ、変わらず笑顔のままなんだから、いいって事なのかな。
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