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第二章:護衛依頼

閑話:リムル視点

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 レインズさんがウラナワ村に移住してきてから三ヶ月が経ちました。
 最初の頃はあまりにも色々な事が起きてしまい、村を出て行くと言わないか心配していましたが、どうやらそれもないみたいで今は安心しています。
 森での事件の後にはエリカさんやガジルさん、レインズさんの祖国であるジーラギ国での同僚と上司であるお二方が移住してきてくれた時は驚きました。
 結果的に私の移住者呼び掛けのおかげで三人もの方が移住してくれたのですから、嬉しい限りです。……まあ、お二方はレインズさんを追い掛けてきただけなんですけどね。

 とはいえ、私もうかうかしていられなくなりました。レインズさんを追い掛けてきたエリカさんが原因です。
 レインズさんの話にもよく名前が出てきたエリカさんですが、見るからにレインズさんに好意を抱いているのです。
 くっ、ライバルはエミリー先生だけだと思っていたのに……いいえ、レベッカさんやバージルさんもそうですけど、一番の強敵がやって来るなんて、さすがに予想外過ぎますよ!

「……私、何もしてないしなぁ」

 思わず口に出てしまいました。
 そう、私は自分の気持ちに気づいてからも、レインズさんにアピールできずにいます。
 以前にはバージルさんが剣を贈った時の反応を見て慌ててしまいましたが、私にはあのような贈り物はできません。
 エリカさんは私の知らないレインズさんを知っているでしょうし、付き合いも長い。それに、隣に立って戦う事もできます。
 私にはそれができない。

「……はぁ。どうしたらいいんだろう」

 最近は、そんな事ばかりを考えています。

 そんなある日、レインズさんがヒロさんとシュティナーザまで向かうと聞きました。
 これはチャンスです。
 私も一緒に行く事ができれば、ヒロさんの用事の空いた時間でレインズさんと街の中を散策できるかもしれません。
 ……い、いわゆる、デートと言うやつです!

「わ、私も連れて行ってください!」

 い、言ってしまいました! ついに言っちゃいました!
 ですが、ヒロさんからの許可が必要だと言われてしまい、私は慌てて後を追い掛けました。
 その途中でバージルさんとすれ違いましたが……ま、まさか!
 一抹の不安を抱えながらよろず屋に到着し、シュティナーザまで同行できないか聞いてみたのですが……。

「ダメです」
「どうしてですか!」
「人が増えれば護衛も増える。増やさなければレインズ君への負担が大きくなってしまいます。正当な理由もなく同行者を増やす事はできません。お気持ちは察しますが、こればっかりはダメですよ」

 ……真っ当な意見です。ぐうの音も出ません。

「バージル君みたいに仕事のためならいいんですがねぇ……」

 ……え? バージル、さん?

「バ、ババババ、バージルさんも同行するんですか!?」
「えぇ。リムル君の前に私のところへ来ましてね。同行したい理由を聞いて、許可を出しました」
「で、でも! それじゃあレインズさんの負担が!」
「ギレイン君が上手く差配してくれるでしょう。まあ、いつもの事ですし」

 ……これは、マズいです! 非常に不味いです!
 剣を贈っているバージルさんとの急接近が考えられます!
 どうしよう……本当に、どうしよう! このままじゃあ、シュティナーザで二人が恋仲となり戻ってくる事だってあるかもしれません!

「ヒロさーん。これを買い取って欲しい……って、リムルさん?」
「……エ、エリカ、さん」
「え? え? どうしたの? ヒロさん、何したの?」
「私ではありませんよ」

 首を傾げているエリカさんは心配そうに私の事を見ています。
 ……待ってください。そうだ、そうですよ。もう、これしかありません!

「エリカさん! ちょっと来てください!」
「え! えぇっ! いや、あの、買取りが――」
「急ぎの用事です!」
「うええぇぇっ!?」

 私はエリカさんの手を取ってよろず屋の外に出ると、レインズさんがシュティナーザへ向かう事になったと説明する。
 その中でバージルさんも同行者にいる事を強調してみた。

「……それは、マズいわね」
「ですよね」

 予想通り、エリカさんも私と同じ反応をしてくれました。

「それでなんですが、レインズさんは護衛をもう一人増やすだろうとヒロさんは予想しています」
「……なるほど、理解したわ、リムルさん」

 目と目が合った私たちは、無言のままに手を取り合いました。

「ここは一時休戦!」
「協力をお願いします!」

 エリカさんが目を光らせていれば、レインズさんがバージルさんと知らないところで恋仲になる事はないはずです。
 ……まあ、エリカさんと恋仲になる可能性は否定できませんが、それでも女性が二人いる方が何かと手は出し辛いでしょう。

「大丈夫よ、リムルさん」
「え?」
「抜け駆けなんてするつもりないからね」
「……エリカさん」
「よーし! そうと決まれば急いで自警団本部に行ってきますね!」

 エリカさんはそう口にすると、駆け足で自警団本部へ向かってしまいました。

 ――そして、無事にエリカさんが護衛になったと聞いた時は胸を撫で下ろし、戻ってきた時には何かお礼をしなければならないと考えていたのでした。
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