門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第二章:護衛依頼

第61話:バルスタッド商会

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 シュティナーザの街並みは当然ながらウラナワ村とは違っており、さらに言えば途中で立ち寄って来た宿場町とも全く違う。
 どの建物を取ってみても石造りで頑丈になっており、二階建ての物が多い。
 時折木造の建物を見つけても、それはそれで木造を活かしたオシャレな造りになっている。
 通りも馬車が進んでいても余裕がある広さがあり、すれ違う事も可能だ。

「中は中で、とても素晴らしい造りになっているんですね」
「ふふふ、驚きましたか?」
「凄いですよ、ヒロさん! ジラギースでもここまでの造りではなかったですよ!」
「というか、ジラギースなんて足元にも及ばないんじゃないか?」

 ジーラギ国が劣っているのか、それとも他国が発展しているのか、それともサクラハナ国が異常に発展しているのか。
 それを知る術が俺にはないが、現状ではサクラハナ国が……というか、シュティナーザが素晴らしい発展を遂げている事は理解できた。

「それで、ヒロさん。向かっている先のバルスタッド商会というのは?」

 シュティナーザに入ってからはヒロさんの指示に従って馬車を進めている。
 その中で出てきたバルスタッド商会という名前が気になってしまったのだ。

「門番の彼が言っていたルシウスが興した商会です。その前に話していた準男爵の人物ですね」
「えっ! ……この格好で、貴族の方に会うんですか?」

 俺は自らの姿に目を移す。
 大都市に向かうという事でヒロさんから購入した上質な革製品を身に付けているのだが、それでも貴族に会うには見栄えが劣ってしまう。
 それに、俺だけではなく他の面々も貴族と会うと聞いて不安な表情を浮かべていた。

「ふふふ、大丈夫ですよ。ルシウスは平民からも親しまれている人柄ですからね」
「そうなんですか?」
「はい」

 それ以上は語る事なく、俺たちは顔を見合わせてしまう。
 まあ、ヒロさんが大丈夫と言っているのだからそれ以上は何も言うまい。
 もし問題が起きてしまえば、きっとヒロさんが対処してくれるだろう。
 そんな事を考えながら馬車を進めていると、ヒロさんから声が掛けられた。

「あちらの建物ですね」
「あれですか……え……あれ、ですよね?」

 ヒロさんから示された建物は、広大な敷地に石造りで三階建ての巨大な建物だ。
 あまりの迫力に俺は唖然としてしまったが、危うく通り過ぎてしまいそうになり慌てて馬車を停める。

「す、すみません、ヒロさん!」
「構いませんよ。驚きましたか?」
「……はい。この大きさはさすがに予想外でしたね」

 エリカたちに至っては声すら出てないし。
 これ、マジで衣装とか大丈夫だろうか。不安になってきたぞ。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用ですか?」

 扉の前に立っていた執事然とした初老の男性が声を掛けてきた。
 俺が答えに窮していると、馬車から顔を出したヒロさんが代わりに答えてくれた。

「ルシウスとの商談で伺いました」
「おぉっ! ヒロ様ではないですか! これは失礼いたしました、どうぞこちらへ。お連れの方々もどうぞ。馬車はわたくしが見ておきますので」
「という事ですので、皆さんも一緒に行きましょう」
「え? でも、いいんですか?」

 うろたえる俺たちを見て、男性は笑みを浮かべながら頷いてくれた。

「問題ございません。ヒロ様の同行者を丁重におもてなしするのが、主のご指示ですから」
「……ヒロさんって、どれだけ凄い人なんですか?」
「いやいや、私はごく普通のよろず屋の店主ですよ」
「……革製品の作成者ですよね?」
「ふむ。でしたら、ただの作成者ですよ」
「……はぁ」

 これ以上は何を聞いても答えてくれないと理解し、俺は諦めてヒロさんと共に建物に入ることにした。

「……エリカ、バージル、ギース。どうしたんだ?」
「えっと、そのー」
「私たちは遠慮しておこうかなって」

 エリカもバージルも貴族に会うのが怖いようだ。ギースに至っては声が出ないのかもの凄い形相で何度も頷いている。

「お前ら、俺を生贄にするつもりか?」
「レインズはヒロさんの護衛だから、仕方ないと思います!」
「エリカも護衛だろう?」
「わ、私はバージルさんの護衛ですから!」
「そ、そうよね! エリカちゃんは私の護衛よね!」
「……わかったよ。それじゃあギースは――」

 …………はぁ。無言でさらに凄い勢いで首を横に振られると、無理強いはできないじゃないか。

「行きましょうか、レインズ君」
「……そうですね。それじゃあ、馬車と彼女たちをよろしくお願いします」
「かしこまりました」

 俺は男性にエリカたちの事もお願いしてヒロさんを馬車から降ろすと、付き従う形で建物に入っていった。
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