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第二章:護衛依頼
第68話:ハグロアからの頼み
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受付嬢との交渉とは違い、二人の交渉は滞りなく進んでいる。
全ての決定権を持っているギルドマスターが交渉の席に着いているのだから当然なのだが、それにしてもヒロさんの言い値でドンドンと買い取り額が決まっていく。
……これは職権乱用にならないのだろうか。
「よっしゃあっ! これで交渉は終わりだな!」
「だいぶ稼がせてもらいましたよ」
「SSSランク素材だけじゃなく、Sランク素材もあったからな! それを全てシュティナーザ支部で買い取れるんだから、ケチってなんていられねえよ!」
ハグロアさんの言葉を聞くと、やはりSランク以上の素材は貴重なんだと改めて理解させられる。
思い返すと、ジーラギ国にいた時もデン以外ではSランク以上の魔獣と戦った記憶は数える程しかない。
そう考えると、ハグロアさんの対応は納得できる。
「買い取り額は私のギルドカードにお願いします」
「了解だ! まあ、これだけの金額をすぐに準備するのも難しいからなぁ」
「どれだけの金額になったんですか?」
興味本位で聞いてみたのだが、後から聞かなければよかったと思ってしまった。
「トータルで、ウラナワ村の二十年分の資金になりましたね」
「……はい!? に、二十年分!!」
「色を付けてもらいましたからね」
い、いやいや! 当初の話ではSSSランク素材で十年、他の素材で三年くらいの資金になるって話だったよな?
「……だ、大丈夫なんですか、ハグロアさん?」
「大丈夫だ! ……まあ、これから経理担当に怒鳴られに行くがな!」
それ大丈夫じゃないよな!?
「SSSランク素材が手に入ったんだ、問題はない! それよりもだ、レインズ!」
「は、はい!」
「話が二つある!」
「……俺にですか?」
「そうだ!」
無駄に元気な人だが、これが素なのだろう。疲れるが、気にしていたら身が持たない気がする。
「まず俺の事はギルマスと呼べ!」
「……え?」
「さん付けなんざあ、俺には似合わん! それと敬語もだ!」
レミーも似たような事を言っていたし、冒険者の多くはそういう性格の持ち主なんだろう。
「わかりま……いや、わかった」
「二つ目だが! ……シュティナーザ周辺でAランク魔獣が目撃されているのは聞いているか?」
突然の真顔に俺は背筋を伸ばして聞き入る。
「……いいえ、聞いていません。もしかして、レミーがここにいるのも?」
「そうだよ。Aランク魔獣の噂を聞きつけて急いできたんだ」
「俺としてはありがたい誤算続きだ。レミーにもお願いするつもりだったが、SSSランク魔獣を討伐できるレインズがいるなら、協力して討伐をお願いしたい」
俺としては強い魔獣と戦えるだけでもありがたいのだが、今回は事情が異なる。
「……申し訳ないが、すぐには受けられないな」
「何! ど、どうしてだ!」
「俺は冒険者ではない。だから、まずは本職である冒険者たちが依頼に挑むべきだ。冒険者ではない俺が仕事を奪うわけにはいかないからな」
「それは……うむ、確かに正論だな」
ギルマスを務めているのだから、その自分が冒険者の仕事を奪わせるわけにはいかないと思い直してくれたようだ。
「……ならば、レインズ。冒険者に登録する気はないか?」
「口を挟んで申し訳ないが、ハグロア。レインズ君が登録するならFランクからだ。それだと、Aランク魔獣討伐の依頼は受けられませんよ?」
「ぐぬっ! そ、そうだった!」
ルシウスさんの時と同じやり取りに俺は苦笑してしまう。
だが、冒険者たちの手に負えないとなれば話は別だ。
「ヒロさん。シュティナーザにはどれくらい滞在する予定ですか?」
「一週間を目処にしていますね」
「であれば、今日を含めて五日以内で解決の目処が立たなければ、微力ながら俺も力を貸します」
「おぉっ! そうか!」
「微力って……レインズ、あんたねぇ」
「なんだ、レミー?」
「SSSランク魔獣を討伐したあんたが微力なわけがないだろう。っていうか、あたいの仕事も無くなりそうだね」
「だから、それまでに解決してくれよ」
軽口のつもりだったが、レミーは殊の外重く受け止めたようだ。
「……まあ、Aランクがあたいしかいない以上、あたいがやるしかないんだけどね」
「レミーって、Aランクだったのか?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
聞いてないぞ。
だが、レミーがAランクであれば他の冒険者と協力しての解決の目が出てくる。
戦いたい気持ちがないわけではないが、仕事を奪わずに済むなら問題はないだろう。
「そういえば、ここにはキラー系スキル持ちはいないんですか?」
「何いっ!? キ、キラー系スキルだと! レインズ、まさかお前、キラー系のスキル持ちなのか!!」
大柄なギルマスが身を乗り出してきたので、もの凄い迫力だ。
俺は僅かに体を引きながら、引きつった笑みを浮かべて答える。
「……あ、あぁ。魔獣キラーというスキルを持っている」
「魔獣キラー! それは、全ての魔獣に有効なキラー系スキルという事か!」
「……おそらく。今のところ、対象外の魔獣は見た事がないな」
「なんと! ……レインズ、ぜひとも冒険者ギルドに登録してくれ! 俺の全ての権限を使って、ランクを優遇してやるぞ!」
「え、遠慮しておきます! 先に失礼します、ヒロさん!」
「何故だ! 待て、レインズ! レインズウウウウゥゥッ!」
これは面倒だと思い、俺はヒロさんに断りを入れてさっさと部屋を後にした。
全ての決定権を持っているギルドマスターが交渉の席に着いているのだから当然なのだが、それにしてもヒロさんの言い値でドンドンと買い取り額が決まっていく。
……これは職権乱用にならないのだろうか。
「よっしゃあっ! これで交渉は終わりだな!」
「だいぶ稼がせてもらいましたよ」
「SSSランク素材だけじゃなく、Sランク素材もあったからな! それを全てシュティナーザ支部で買い取れるんだから、ケチってなんていられねえよ!」
ハグロアさんの言葉を聞くと、やはりSランク以上の素材は貴重なんだと改めて理解させられる。
思い返すと、ジーラギ国にいた時もデン以外ではSランク以上の魔獣と戦った記憶は数える程しかない。
そう考えると、ハグロアさんの対応は納得できる。
「買い取り額は私のギルドカードにお願いします」
「了解だ! まあ、これだけの金額をすぐに準備するのも難しいからなぁ」
「どれだけの金額になったんですか?」
興味本位で聞いてみたのだが、後から聞かなければよかったと思ってしまった。
「トータルで、ウラナワ村の二十年分の資金になりましたね」
「……はい!? に、二十年分!!」
「色を付けてもらいましたからね」
い、いやいや! 当初の話ではSSSランク素材で十年、他の素材で三年くらいの資金になるって話だったよな?
「……だ、大丈夫なんですか、ハグロアさん?」
「大丈夫だ! ……まあ、これから経理担当に怒鳴られに行くがな!」
それ大丈夫じゃないよな!?
「SSSランク素材が手に入ったんだ、問題はない! それよりもだ、レインズ!」
「は、はい!」
「話が二つある!」
「……俺にですか?」
「そうだ!」
無駄に元気な人だが、これが素なのだろう。疲れるが、気にしていたら身が持たない気がする。
「まず俺の事はギルマスと呼べ!」
「……え?」
「さん付けなんざあ、俺には似合わん! それと敬語もだ!」
レミーも似たような事を言っていたし、冒険者の多くはそういう性格の持ち主なんだろう。
「わかりま……いや、わかった」
「二つ目だが! ……シュティナーザ周辺でAランク魔獣が目撃されているのは聞いているか?」
突然の真顔に俺は背筋を伸ばして聞き入る。
「……いいえ、聞いていません。もしかして、レミーがここにいるのも?」
「そうだよ。Aランク魔獣の噂を聞きつけて急いできたんだ」
「俺としてはありがたい誤算続きだ。レミーにもお願いするつもりだったが、SSSランク魔獣を討伐できるレインズがいるなら、協力して討伐をお願いしたい」
俺としては強い魔獣と戦えるだけでもありがたいのだが、今回は事情が異なる。
「……申し訳ないが、すぐには受けられないな」
「何! ど、どうしてだ!」
「俺は冒険者ではない。だから、まずは本職である冒険者たちが依頼に挑むべきだ。冒険者ではない俺が仕事を奪うわけにはいかないからな」
「それは……うむ、確かに正論だな」
ギルマスを務めているのだから、その自分が冒険者の仕事を奪わせるわけにはいかないと思い直してくれたようだ。
「……ならば、レインズ。冒険者に登録する気はないか?」
「口を挟んで申し訳ないが、ハグロア。レインズ君が登録するならFランクからだ。それだと、Aランク魔獣討伐の依頼は受けられませんよ?」
「ぐぬっ! そ、そうだった!」
ルシウスさんの時と同じやり取りに俺は苦笑してしまう。
だが、冒険者たちの手に負えないとなれば話は別だ。
「ヒロさん。シュティナーザにはどれくらい滞在する予定ですか?」
「一週間を目処にしていますね」
「であれば、今日を含めて五日以内で解決の目処が立たなければ、微力ながら俺も力を貸します」
「おぉっ! そうか!」
「微力って……レインズ、あんたねぇ」
「なんだ、レミー?」
「SSSランク魔獣を討伐したあんたが微力なわけがないだろう。っていうか、あたいの仕事も無くなりそうだね」
「だから、それまでに解決してくれよ」
軽口のつもりだったが、レミーは殊の外重く受け止めたようだ。
「……まあ、Aランクがあたいしかいない以上、あたいがやるしかないんだけどね」
「レミーって、Aランクだったのか?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
聞いてないぞ。
だが、レミーがAランクであれば他の冒険者と協力しての解決の目が出てくる。
戦いたい気持ちがないわけではないが、仕事を奪わずに済むなら問題はないだろう。
「そういえば、ここにはキラー系スキル持ちはいないんですか?」
「何いっ!? キ、キラー系スキルだと! レインズ、まさかお前、キラー系のスキル持ちなのか!!」
大柄なギルマスが身を乗り出してきたので、もの凄い迫力だ。
俺は僅かに体を引きながら、引きつった笑みを浮かべて答える。
「……あ、あぁ。魔獣キラーというスキルを持っている」
「魔獣キラー! それは、全ての魔獣に有効なキラー系スキルという事か!」
「……おそらく。今のところ、対象外の魔獣は見た事がないな」
「なんと! ……レインズ、ぜひとも冒険者ギルドに登録してくれ! 俺の全ての権限を使って、ランクを優遇してやるぞ!」
「え、遠慮しておきます! 先に失礼します、ヒロさん!」
「何故だ! 待て、レインズ! レインズウウウウゥゥッ!」
これは面倒だと思い、俺はヒロさんに断りを入れてさっさと部屋を後にした。
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