門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

文字の大きさ
91 / 107
第二章:護衛依頼

第84話:打ち鳴らされる警鐘

しおりを挟む
 翌日、俺は予定通りにヒロさんに同行して様々な店を訪れていた。
 大きな商会を始めとして、中小の革製品専門のお店や雑貨屋といったところまで顔を出していたヒロさんを見ていると、本当に顔が広いのだと思い知らされる。
 たまに休憩を挟んで外のベンチに腰掛けていると、通りすがりの人から声を掛けられる事まであるのだから驚きだ。

「ヒロさんって、本当に凄い人なんですね」
「ふふふ。そうでもありませんが、シュティナーザではといったところですかね」

 目的の場所はあらかた回れたのか、最後に残していたバルスタッド商会へと足を進める。
 ルシウスさんは今回も笑顔で迎え入れてくれたのだが、この人は貴族であり大商会の商会長のはず。昨日も宿にわざわざ顔を出していたらしいのだが……暇なのだろうか。

「そうそう、レインズさん冒険者ギルドへの登録はしたのですか?」
「はい。成り行きですが、登録する事ができました」
「それは良い話を伺いました! でしたら、私からの指名依頼でも――」
「ルシウス。最初に言いましたが、レインズ君はFランクですからね? ギルドが受けてくれませんよ」
「うぅぅ、そうなんですよねぇ。なんとかなりませんかねぇ」
「いや、俺に言われましても」

 身分証の代わりに登録したと言っても過言ではないので、俺にはどうする事もできない。
 何か抜け道があれば別だが、大体の場合はそういった方法は違反ギリギリだったりするので遠慮願いたいものだ。
 俺がそんな事を考えていると――

 ――カンカンカンカンッ! カンカンカンカンッ!

 シュティナーザに来てから初めて聞く激しい鐘の音を耳にした。

「ヒロさん、この音はなんですか?」

 俺がそう口にしながら視線を向けると、何やら険しい表情を浮かべて窓の外を見つめている。それはルシウスさんも同じだった。

「……どうしたんですか?」
「この鐘の音は、物見台に設置されているものです」
「物見台? ……え、という事はもしかして?」
「えぇ。警鐘が鳴らされました。シュティナーザに何かしらの危険が迫っているという事です」

 俺は立ち上がると警鐘が聞こえる方角の窓へ近づいていく。

「……警鐘は西の方から聞こえてきますね」
「ふむ……西の森で異変が起きていると考えるべきでしょうか」
「そういえば、ハグロアがAランク魔獣がうろついているとも言っていましたね」
「その魔獣がシュティナーザに近づいてきているのか?」

 魔獣は人を食らう事も多いが、それは外で遭遇した時がほとんどだ。わざわざ人の多いところに向かってくるなんて自殺行為を行う事はほとんどないと言っていいだろう。
 例外があるとするならば、縄張り争いに負けて仕方なく出てきてしまったか、あるいは人を殺せるだけの力を持つ上位ランクの個体が現れた時くらいだ。

「……ヒロさん。冒険者ギルドに行ってみてもいいですか?」
「構いませんよ。私はここで待機している事にしましょう」
「ヒロ様の護衛はお任せください。当商会が責任を持ってお守りいたします」
「ありがとうございます」

 俺が部屋から出て行こうとすると、突然ヒロさんに呼び止められた。

「あぁ、レインズ君。せっかくですからこれを持っていってください」
「これは……魔法袋ですか?」
「えぇ。ハグロアの事ですから、きっとレインズ君の力を借りたいと口にするでしょう。どうせなら、倒した魔獣を回収してきてください」

 ニヤリと笑うヒロさんに、俺は苦笑しながら魔法袋を受け取った。

「分かりました。それでは、行ってきます」

 今度こそバルスタッド商会を飛び出した俺は、急ぎ冒険者ギルドへと向かった。
 Aランク魔獣も心配だが、俺が一番心配しているのはエリカとギース、そして同行しているレミーの事だった。
 もし三人が西の森にいたならば、考えられる行動が一つだけある。
 危険を知らせるためにレミーが足止めを行うという事。そして、無駄に正義感が強いエリカの事だからレミーと一緒にその場に残るだろう。
 Aランク冒険者のレミーがいるのだから、あわよくばCランク以上の実力を持つエリカと一緒に倒してしまう事も考えられるが、戦闘スタイルにも相性というものがある。
 レミーのスキルもエリカのスキルも近接戦闘には強力な威力を発揮するが、相手が遠距離からの攻撃を得意とする魔獣ならどうだろうか。さらに言えば、鳥型の魔獣で空から攻撃されればどうなるか。
 ……考えたくないが、最悪の結果だって考えられるのだ。

「頼む、西の森にだけはいないでくれよ!」

 街の中を全力で駆け抜けた俺は、ようやく冒険者ギルドに到着した。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...