最強英雄の異世界復活譚 ~寿命で一度死にましたが不死鳥の力で若い姿で蘇り、異世界で無双する~

季未

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第七十話

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『鋼の祭典』はつつがなく、そして熱狂的に進行していく。
巨大な斧を振るうドワーフの戦士たちは、岩を砕くような豪快な打撃の応酬を繰り広げた。

「どりゃぁっ!これでもくらえ!」
「面白ぇ!もっと来い!」

次いで魔法使いたちの戦いは、花火のように華やかだった。

「『氷牙光』よ、我が敵を貫け!」
「ふん、そんな小細工、『業火の渦』で焼き尽くしてくれるわ!」

赤く燃え盛る炎球と、青く輝く氷の矢が空中でぶつかり合い、虹色の魔力の光が闘技場を彩る。
凍てつく氷の壁が炎に溶かされ、魔力の光が万華鏡のように乱反射していく。
そして魔導機械兵の戦い──。

「魔導砲、フル充填!照準、ロック!」
「くっ、装甲に亀裂が!しかし、まだだ!」

地響きと共に、巨人たちがぶつかり合う。装甲から漏れる青白い魔力が閃光となって夜空を照らし、魔導砲の轟音が闘技場に響き渡る。
古の神々の戦いを思わせるような、圧倒的な光景だった。

「すげぇ!」
「これが魔導機械兵の力か!」
「いや、ドワーフの戦士たちも負けてねぇぞ!」
「魔法使いの戦いも綺麗だったなぁ!」

民衆は歓声を上げ、酒を掲げ、それぞれの戦いに熱狂していく。
しかし──貴賓席に集う者たちの表情は、決して安らかではなかった。
戦士たちの豪快な戦いに満足げな表情を浮かべる鋼鉄公。

「うむ、これぞ真の戦士の戦いよ」

魔導機械兵の圧倒的な力を誇らしげに見つめる機計公。

「完璧な計算通りの動きだ。これこそが、進化した戦いの形だな」

そして、その二人の間で蠢く様々な思惑が、静かに、しかし確実に交錯していく。
この祭典そのものが、誰かの描いた劇のように──。

「……」

エルフの外交官フェイリオンは鋭い瞳で、ドワーフたちの戦いを一瞬たりとも見逃すまいと凝視していた。
ドワーフという種族には、生来の気質として荒事を好む傾向がある。
魔法、機械、肉体──あらゆる手段を用いて、戦いという一つの営みを芸術にまで高めようとする彼らの執念が見て取れる。

しかし、これはまたとない機会だった。
相手に手の内を見せることなく、帝国の真の実力を探ることができる。
そう考えたフェイリオンは、意図的に沈黙を保ちながら試合を注視していたのだが──。

「わぁ!すごいすごい!」

レフィーラが突如として声を上げる。

「あの魔導機械兵、私たちの国の兵士じゃ勝てないわ!剣も魔法も全然通用しないんじゃない!?」

彼女は無邪気に手を叩きながら、更に声を弾ませる。

「普通の矢なんて全然効かなそう!もしあんなのが大量に押し寄せてきたら、弓兵主体の私たちの軍じゃ太刀打ちできないかも!」

フェイリオンは思わず頭を抱えた。
外交官としての慎重な観察も、横で無邪気にはしゃぐレフィーラの一言で台無しである。
しかし、そんな彼女の天真爛漫な様子に、トルヴィア姫が柔らかな微笑みを浮かべながら声を掛けた。

「レフィーラさん、楽しんでいただけて何よりですわ」

優雅な物腰でレフィーラに声を掛けたトルヴィア姫。
しかし、その瞳の奥には計算が潜んでいた。
森林国の切り札、一騎当千の力を持つと言われる『守護者』。精霊の武器を操る彼女から、何か有益な情報が得られるのではないかと期待して──。

「あ、トルヴィアちゃん!」

しかし、その思惑は一瞬で吹き飛ばされた。

「ト、トルヴィアちゃん……?」

思いもよらない呼び方に、トルヴィア姫の優雅な表情が一瞬で崩れる。
しかしレフィーラは、そんな彼女の困惑にも気付かず、幼なじみかのように肩を寄せてきた。

「ねぇねぇ、あの魔導機械兵はどうやって作ってるの?私も乗りたいから、設計図とか教えて!」
「は、はい!?」

トルヴィアの声が裏返る。
確かに、最近は両国の関係も改善の兆しを見せ、商人たちの往来も増えてきた。
しかし──それでも互いは潜在的な敵性国家である。そんな相手に、帝国の主力兵器の設計図を、この場で、しかも堂々と求めるとは。

「あ、あの……設計図というのは、さすがに……」
「あ、それとそれと!あの斧を振り回してたドワーフの鎧と盾も欲しいな!かっこいいし!」
「ねぇねぇ、魔導機械兵の操縦方法も教えて!私、絶対上手く乗れると思うの!」

トルヴィアの困惑は頂点に達し、彼女の表情は完全に引き攣っていた。
彼女の様子を見て、アドリアンは柔らかな笑みを浮かべる。それはこの世界の濁りを知らない無垢な魂への、羨望にも似た感情だった。

──そんなこんなで。

貴賓席では二人の公爵によるせめぎ合いと、エルフの純真無垢さによる騒動が起きていたが、大会は着実に進行していく。
そして、一際注目を集める試合が始まろうとしていた。

「この試合だけは見逃さない方がいいと思うんだ。きっと、君の目と尻尾が喜ぶ光景が見られるはずだよ」
「む……?」

ザラコスが巨大な尻尾を揺らしながら、闘技場に目を向ける。

「あれは、シュタールユングと……魔導機械兵か」

闘技場に姿を現したのは、先ほどまで華麗な戦いを見せた鋼鉄公の弟子、シュタールユングと、巨大な魔導機械兵。
シュタールユングは腕を組み、その整った顔立ちに皮肉めいた笑みを浮かべながら、魔導機械兵を見上げる。

「ふぅん……」

彼は嘲るように息を吐き、冷ややかな声で言った。

「鍛冶神への捧げ物たる、この神聖なる闘技場に、魂の通わぬ鉄の人形を持ち込むとは。いくら公爵様方の御意向とはいえ、見るに堪えぬものだな」

相対するは、ここまで圧倒的な力でドワーフの戦士たちを打ち砕いてきた魔導機械兵。
その操縦席には、あの可愛らしい少年兵、ガイスト二等兵が収まっている。

「あっ!シュタールユング大佐どの!」

魔導機械兵の中から、少年らしい高い声が響く。
彼は巨大な機体の中から、眼下のシュタールユングを見下ろしながら、真摯な声で叫んだ。

「いくら大佐どのが天才的な武術の使い手だといっても、この魔導機械兵に素手で挑むのは無謀であります!どうか、潔く降伏を!」

その幼い声に、シュタールユングは優雅に前髪をかき上げながら、微笑みを浮かべた。

「ガイスト二等兵……だったかな。坊やが、そんな物騒な玩具で遊んでいては危ないよ。ほら、私がその鉄のガラクタから救い出してあげよう」
「ぼ、僕はもう一人前の兵士でありますっ……!子供じゃない!」

ガイスト二等兵の声が震える。まだ幼さの残る顔を紅潮させながら、彼は精一杯の気迫を込めて叫んだ。
そうして、シュタールユングと魔導機械兵の戦いの幕が切って落とされた。
帝国が誇る『旧武派』の英雄、シュタールユング。その容姿と腕前は帝国民の間でも広く知れ渡っているが、そんな彼が魔導機械兵と対峙する姿に、観客席がざわめき始める。

「おいおい、さすがのシュタールユングも、相手が魔導機械兵じゃ分が悪すぎるんじゃねぇか?」
「生身の戦士が機械兵と戦うだと?狂気の沙汰だ」
「勝てるわけがねぇよ。今までの試合見てただろ?あの化け物みてぇな機械、どんな強い戦士だって木っ端微塵にしちまったじゃねぇか」

そして、開始の合図と共に戦いが始まった。
開始直後、機械兵が信じ難い速度でシュタールユングへと襲い掛かった。
しかし──シュタールユングは、舞うように宙を舞った。巨人の突進が空を切る中、彼は優雅な軌道を描きながら着地する。

「魔導機械というのは、パワーはあるが……その動作は見切りやすい。悲しいかな、それが機械の限界だ」
「くっ……!?」

華麗に舞い踊るシュタールユングを前に、ガイスト二等兵は歯を食いしばる。
魔導機械兵の肩部に搭載された魔導砲が、ゆっくりとその照準を合わせていく。
青白い光が渦を巻くように収束し、そして──。轟音と共に、眩い光を纏った魔導砲撃が放たれた。

「はぁっ!!」

シュタールユングの雄叫びが響く中、彼の全身から風を纏ったような闘気が漲り始めた。
そして、その瞬間──彼の足が虚空を蹴り上げる。

──加護『風の申し子』

風に愛され、圧倒的な速度と、風を実体化させて足場とする稀有な能力。
それこそが、シュタールユングの真の力だった。

「あ、あれは!」
「シュタールユングの風の加護!?」

観客席から驚嘆の声が上がる中、シュタールユングは迫り来る魔導砲撃を翻すように身を捻る。
風と一体となったかのような動きで、彼は青白い光線を華麗に躱していく。
続けざまに放たれる第二、第三の魔導砲撃も、彼にとってはスロー再生のように見えているのか──優雅な舞のように、全てを難なく回避していった。

「し、しかし幾ら攻撃を躱したところで、この装甲には傷一つ付かないのであります!」

焦りを募らせながらも、ガイスト二等兵は自身の魔導機械兵の装甲の堅固さに賭ける。
しかし──。

「ふむ、確かにその装甲は頑丈そうだ」

風を纏いながら、シュタールユングは魔導機械兵の周囲を舞い始める。
獲物を狙う鷹のように、彼は巨大な機体の周りを旋回していく。

「だが、どんな堅固な機械にも『弱点』というものがある」

その言葉と共に、シュタールユングの動きが加速する。
風を巻き起こしながら描く円が、徐々に魔導機械兵を包み込んでいく。

「な、何を……!?」

ガイスト二等兵が困惑する中、魔導機械兵の周囲で渦を巻く風が、次第に巨大な竜巻となっていった。
魔導機械兵の足元が、徐々に地面から浮き上がり始める。

「魔導機械兵の最大の弱点──それは重量だ」

シュタールユングは風の力で巨大な機体を宙に浮かせながら、優雅に言い放つ。

「重ければ重いほど、バランスを崩した時の制御は難しくなる。そして──」

彼は風を纏った蹴りを放ち、宙に浮いた魔導機械兵の関節を次々と的確に穿っていった。
巨大な機体が、操り人形のように宙で踊らされる。

「はっ!」

最後の一撃。
シュタールユングは竜巻の頂点まで跳躍し、風を纏った両足で魔導機械兵の中枢部を正確に捉えた。

「あ、あっ!?制御が効きません!シャヘライトの出力が……!うぎゃあ!?」

そして最後に、シュタールユングは優雅に宙を舞いながら、トドメとばかりに魔導機械兵の頭部に向かって蹴りを放った。

「これで、おしまいだ」

華麗な飛び蹴りが魔導機械兵を直撃し、巨大な鋼鉄の要塞が砂袋のように闘技場に転がっていく。
その瞬間、緊急脱出装置が作動した。

「ポン!」という音と共にハッチから放り出されたガイスト二等兵の小さな体は、シュタールユングの腕の中へと収まった。

「きゅう……」

目を回して気を失う少年を、シュタールユングは微笑みながら地面に寝かせる。
そして、両手を大きく広げ、力強い声で宣言する。

「我が帝国の民よ!これこそが生身のドワーフの底力!魂を込めた鍛錬の果てにあるのは、このような奇跡だ。魔導機械兵すら凌駕する──それが我々、生身の戦士の可能性なのだ!」

その瞬間、会場が今までにない熱気に包まれた。
三階層分もの空間を震わせんばかりの歓声が轟き渡り、その熱狂は止まることを知らない。
鋼鉄公アイゼンは、我が事のように身を震わせながら、シュタールユングの勝利を見つめていた。

「なんと美しい勝利だ……これこそが魂の輝き。生命の灯火が放つ光明」

そして、陶酔するような声で続けた。

「ただ与えられただけの力では、決して到達できぬ高みがある。己の血と汗で掴み取った力こそが、真に美しいのだ」

しかし、その言葉を聞いたベレヒナグルは冷ややかな声で言った。

「『加護』というのも、天から与えられた力ではなかったかね?一体何が違うというのか、私には理解に苦しむが」

留まるところを知らない二人の公爵の見えない攻防に、アドリアンは意味ありげな苦笑を浮かべる。
ザラコスは眉を顰め、皇帝ゼルーダルは、その巨体を僅かに前かがめながら深いため息をついている。
そんな中、ベレヒナグルが意図的にカンッ!という大きな音を立てて機械仕掛けの杖を地面に叩きつけた。

「ご老体の愛弟子が、たかが旧式の機体を操る少年兵相手に、ここまで本気になっているのは見苦しい限りだが──そろそろ私の方でも、本物の革新の力をお見せしようか」

その瞬間だった。闘技場の入り口から巨大な影が姿を現した。
今までの魔導機械兵とは一線を画した姿に、静まり返る会場。
その反応を愉しむかのように、ベレヒナグルのモノクルの奥の瞳が不敵な輝きを放つ。
──勝利を確信したかのように。
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